ODA(政府開発援助)

2022(令和4年)年10月27日発行
令和4年10月27日

南西アジアにおける防災・減災プロジェクト

(ロゴ)日本・南西アジア交流年

南西アジア課インターン生 関本 椎菜

 2022年は日本にとって南西アジア7か国との関係における節目の年であり、外務省では本年を「日本・南西アジア交流年」と認定しています。これまで日本は南西アジア諸国と交流を深める中で様々な支援を行ってきましたが、そのひとつが防災大国としての知見を生かした各国の防災・減災への貢献です。

地震国ネパールや島国モルディブへの支援

(写真1)港の様子 写真提供/JICA

 世界でも有数の地震地帯に位置し、日本と同じ地震国であるネパールでは、首都を擁するカトマンズ盆地でも大地震による災害が度々発生しています。しかし、連邦政府、州政府、地方政府ともに、未だ災害リスク削減事業よりも災害発生後の緊急対応が取り組みの中心となっていることから、現在、カトマンズ盆地強靭化のための防災行政能力強化プロジェクトでは、同地域での災害リスク削減に資する行政能力の強化に寄与しています。

 また、約1,200の島で構成されるモルディブは、首都マレの海抜が1.5メートル程度しかない等、平らな地形のため、かつては浸水の被害を繰り返し受けていました。1987年に発生したサイクロンにより大きな被害を受けた後、日本政府は1987年から数回にわたって護岸堤建設を行いました。その防波堤により2004年のスマトラ沖大地震の際のモルディブ国内における津波の被害は最小限に食い止められました。さらに日本政府はモルディブ津波復興事業を通じて、被害を受けた地域や設備の復興支援を行いました。

インドのヒマラヤ山麓部やスリランカでの山地災害対策

 さらに、南西アジア諸国では山地災害も多発しています。ヒマラヤ山系の急峻な地形を有するインドのウッタラカンド州では、2013年の豪雨により大規模な洪水と土砂崩れが発生し、6,000人もの死者と行方不明者を出しました。ウッタラカンド州山地災害対策プロジェクトでは、治山技術を用いた森林復旧、防災、減災対策に尽力しています。そして、その治山技術や知識・能力をヒマラヤ地域他州へ共有し、より広範囲における山地災害対策の実施体制確立を図っています。

(写真2)崩壊地の様子 本プロジェクトでモデル的に崩壊地の復旧工事を実施するモデルサイト1(Nirgad)(c) JICA/Shingo KITAURA
(写真3)土砂災害の様子 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project by JICA

 急速な開墾・開発と脆弱な地質特性、急峻な地形条件などにより土砂災害被害の深刻なスリランカでは、近年、従来の落石、地すべり、斜面崩壊といった土砂災害だけでなく、高速長距離土砂流動(RRLL)と呼ばれる現象が発生し、予測や早期警戒がより困難になっています。そこで現在は、RRLLの発生・流動過程の評価技術の開発や、リスクコミュニケーション手法・手順の強化を通じて、RRLLの早期警戒能力の強化に尽力しています。

繰り返す災害、事後対策から防災へ

(写真4)被災地の様子 豪雨時の河岸浸食による被災地  (c) OCG Co., Ltd.

 バングラデシュは、標高が低く、雨季には国土の約20パーセントが浸水します。また、ほぼ毎年のサイクロンによる災害が社会・経済の持続的発展を阻害し、世界で最も災害に脆弱な国の一つとされています。同国政府は防災法施行など法体制の整備を行うものの、未だ災害リスク削減が浸透せず、特に地方における防災が不十分です。地方防災計画策定・実施能力強化プロジェクトでは、同国の防災職員の能力向上等を通して地域の災害リスクの効果的な削減に取り組んでいます。

(写真5)署名の様子 パキスタン国家防災庁長官とJICA所長との間で実施競技合意書に署名 photo:JICA

 また、近年、ブータンでも、気候変動の影響を受け、これまでに観測されなかった氷河湖拡大とその決壊による洪水災害をはじめ、フラッシュ・フラッド、サイクロンを含む暴風雨等の水文・気象に関する災害が多発しています。そこで、ティンプー川・パロ川流域における災害事前準備・対応のための気象観測予報・洪水警報能力強化プロジェクトを通じ、リスクアセスメント・予警報の能力向上を図るとともに、行政の災害事前準備や対応能力強化を図っています。

 さらに、2005年の北部大震災を契機に、予防・軽減対応、災害横断的対応に軸を置いた防災体制の強化を開始し、2007年には国家防災庁が設置されたパキスタンでは、防災人材育成計画プロジェクトを行いました。研修体制の確立によって、パキスタン政府の防災人材育成の実施体制の強化を図り、パキスタンにおける防災知識向上に寄与しました。

 今回は減災・防災という視点から南西アジア諸国と日本のこれまでの取り組みについてご紹介しましたが、現在に至るまで、教育やインフラ、保健医療など、さまざまな分野で日本は各国の発展や課題解決を支援してきました。2022年の「日本・南西アジア交流年」を節目に、これからもより一層各国と交流を深めていきます。

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