ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第450号
日本とアフリカを結ぶチュニジア
TICAD8を契機とした三角協力の推進
在チュニジア大使館 経済・開発協力班 川原 大祐
チュニジアでの開催が予定されているTICAD8(第8回アフリカ開発会議)の開催日が、本年8月27日、28日と発表されました。北は地中海に面し、南はサハラ砂漠を抱える、アフリカの北端の国であるチュニジアは、これまで、アフリカと欧州を結ぶゲートウェイとしての役割を担ってきましたが、TICAD8を契機に、新たに、日本とアフリカを結ぶゲートウェイとしての役割が期待されています。そこで今回は、ODAにより培われてきた日本の技術のアフリカへの普及や日本企業がODAを通じてアフリカに進出する際の足がかりとなるようなチュニジア側の取組を紹介します。
ゲートウェイとしてのチュニジアと三角協力
チュニジアでは2006年から対アフリカ・カイゼンプロジェクト(注)の第1号として、カイゼン普及の技術協力が実施され、多くのカイゼン導入企業やカイゼン指導員が育っています。チュニジア産業省は、このカイゼンの経験を普及させるため、カイゼン生産性センターの設立を計画しています。ここでは、チュニジア企業だけでなく、アフリカ諸国から研修生を受け入れ、チュニジアがアフリカ地域におけるカイゼンの研修・技術支援の拠点となることを目指しています。
(注)カイゼンは日本の多くの生産現場で導入された5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)などの品質や生産性を向上させるための考え方や手法。日本流のカイゼンはJICAの技術協力を通じて広く世界に普及されています。
令和3年度からは、日本とチュニジアを遠隔で結び、医療機材の使用技術を移転する協力がスタートしました。これをきっかけに、今度はチュニジアと他のアフリカ諸国を結び、アフリカ諸国に医療機材の使用技術を指導するプログラムが検討されています。
国際機関が実施したプロジェクトでもチュニジアで優れた事例が生まれています。例えば、UNDPはチュニジアに日本の交番のような「身近な警察」を根付かせる取組を行っています。この取組では、同じ建物内で行われていた行政手続きと司法の機能を分離し、警察署に対する市民のアクセスを改善することを目指しています。TICAD8が、カイゼンや「身近な警察」をチュニジアだけでなく、アフリカ全土に広げるきっかけとなることが期待されます。
日本企業のアフリカ進出の足がかりとなるチュニジア
また、日系企業の投資も進んでいます。チュニジアでは技術協力として、農産物の機能性に着目した研究・商品開発が行われています。この技術協力はバリューチェーンの構築も目的としており、実際に日本企業などの投資により3社のチュニジア企業が誕生しました。日本では消毒液などの製造で知られる(株)サラヤは、オレンジなどの様々な花からオイルなどを抽出するチュニジア企業を設立し、現在、それらを化粧品などに加工したり、オリーブの瓶詰めを行う工場を建設中です。
チュニジアの人材の多くは、高い教育水準もあり、フランス語、英語、アラビア語を自由に操り、高い専門性を持っています。こうした人材を抱えるチュニジア企業はアフリカに広いネットワークを持ち、インフラ分野でも複数のコンサルタント企業が広くアフリカ諸国に展開しています。例えば、STEGインターナショナルは、サウジアラビア、リビア、タンザニア及びセネガルに拠点があり、アフリカ各地での配電網や変電所の整備を行っています。TICAD8の開催を控え、チュニジア企業における日本との連携の機運も高まっています。チュニジア側の関心は、自分たちの強みを生かしながら、日本企業と連携してアフリカ諸国に進出することです。チュニジア企業と日本企業で構成されるチュニジア日本商工会議所はインフラ、再生可能エネルギー、農業などの様々な分野別会合を開催し、日本企業からアフリカ進出の経験が、チュニジア企業からは自分たちの強みが共有されています。TICAD8を好機に両者が手を結び、アフリカ諸国に進出する日が待ち望まれています。
「2021年版開発協力白書」公表について
外務省 国際協力局 開発協力企画室
外務省では、毎年、日本の開発分野での取組や開発協力の実績などをまとめた開発協力白書を発行しており、この度「2021年版開発協力白書 日本の国際協力」を公表しました。
冒頭第I部の「特集」として新型コロナ対策支援について紹介し、COVAXワクチン・サミットや東京栄養サミットの開催、ワクチンの供与やコールド・チェーンの整備などについて掲載しています。
政策研究大学院大学の田中明彦学長や世界の現場で活躍する国際機関日本人職員の方々からの寄稿、一般の方が撮影した写真の特集、SNSを利用して公募したコラムなども掲載しています。
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