ODA(政府開発援助)

2021(令和3年)年2月12日発行
令和3年2月12日

日本とインドネシアの協力による
パティンバン新港の開発

(画像1)インドネシア

在インドネシア日本国大使館 経済部 白木 雄志

 インドネシアというと、日本ではバリ島などは知られていても、国全体のイメージはなかなか持ちにくいかもしれませんが、その面積は約190万平方キロメートルと、日本の5倍強に相当し、東西に広く、インドネシアの東端から西端までは約5,000キロメートル、なんと米国の東西海岸がほぼすっぽりと入る距離を有しています。人口は約2.67億人(2019年、インドネシア政府統計)と、中国、インド、米国に次ぐ世界第4位の大国であり、毎年300万人以上増加し続けています。平均年齢は30歳で、若い世代の人口比率が非常に高く、人口ボーナスにも支えられて急成長する新興経済大国といえます。

インドネシア最大級の規模を誇るパティンバン港
日本の支援で短期間で一部開港!

(写真1)パティンバン港の全景 インドネシア最大級の規模を誇るパティンバン港の全景

 島国であるインドネシアで海運は主要な輸送手段ですが、経済成長に伴い国全体の取扱い貨物量が急増しており、今後、港湾の絶対的な容量不足が見込まれます。本稿でご紹介するパティンバン港は、インドネシアの今後の発展に必要な多くの優先課題の実現に貢献する、日・インドネシア協力の象徴的なプロジェクトです。新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが立たない中にあっても、現場関係者の尽力により、港の建設は順調に進んでおり、2017年の円借款貸付契約から約3年で、先行開発工区であるフェーズ1-1(自動車ターミナル、コンテナターミナル、外郭施設・航路浚渫、陸地と港湾をつなぐ連絡橋とアクセス道路等)のうちターミナルの完成率は90%を超え、これまでに自動車ターミナルの一部(約8ヘクタール)が完成したほか、港湾アクセス道路(8.1キロメートル)が完成しました。実用ベースでの本格的な活用はまだ先になりますが、このように先行開発工区の建設が一定程度終了したことから、昨年12月にジョコ大統領の出席(オンライン)の下で暫定的なオープンの記念式典が行われました。

(写真2)暫定的なオープン式典の様子 インドネシア最大級の港湾施設の一部完成を祝い、昨年12月20日、暫定的なオープン式典が開催。インドネシア運輸大臣、西ジャワ州知事、駐インドネシア日本国大使等が式典に参加するとともに、ジョコ大統領もオンラインで参加
(写真3)自動車運搬船に輸出用の完成車を積み込む様子 暫定的なオープンに当たり、自動車運搬船に
輸出用の完成車を積み込む様子

インドネシア発展の重要なカギを握るパティンバン港
その意義とは?

(画像2)パティンバン港周辺地図 パティンバン港周辺地図

 質の高いインフラ整備は、現地人材の育成支援、技術移転の支援の仕組みを強化し、ハードとソフトのパッケージによる海外展開を推進するものです。

 パティンバン新港の建設は、既存港に一極集中している貨物物流の分散を図ることで首都圏全体の物流の効率化を図り、インドネシアの投資環境改善を通した更なる経済成長に寄与します。同港が位置する西ジャワ州は、ジャカルタ首都圏の東部にあり、自動車関連企業を始めとした日系企業が多く集積しており、当地に進出する日系企業の期待も非常に大きいです。日本政府が実施する円借款を通じたパティンバン港のターミナル、連絡橋、アクセス道路などの建設支援は、インドネシアの輸出増進に繋がることが期待されます。

(写真4)日本企業が参加するJVが建設するターミナル1 日本企業が参加するJVが建設するターミナル1
(写真5)日本企業が参加するJVが建設するターミナル2 日本企業が参加するJVが建設するターミナル2
(写真6)日本企業が参加するJVが建設するターミナル3 日本企業が参加するJVが建設するターミナル3

 ハード面の支援に加えて、人材育成への協力、つまりソフト面での支援も重視しています。パティンバン港建設に携わる人々の多くはインドネシア人です。ハード面での建設に関する支援は、日本の持つ先進技術をインドネシアの人々に移転し、人材を育成しながら進められています。

(写真7)協同作業の様子 日本人技術者とインドネシア人技術者による協同作業

パティンバン港開発プロジェクト
今後の見通しについて

 工事の残る先行開発工区(フェーズ1-1)の完工は2021年12月頃を予定しています。さらに建設の次のステップとして、自動車ターミナル・コンテナターミナルの拡張(フェーズ1-2)についても協力に向けた検討が進められています。また、ハードの整備とあわせて、港の運営事業者の選定プロセスも進められています。

 昨年10月の菅総理とジョコ大統領との日・インドネシア首脳会談では、両国間の協力が再び確認されました。日インドネシア企業によるパティンバン港の共同運営は、効率的かつ合理的な港湾運営の実現を通じてインドネシアの発展に大きく貢献し、日本とインドネシアの協力の新たな証となると確信しています。

 パティンバン港の完工・運営開始に向けて、我が国は引き続き協力していきます。

日本とベトナムの協力の象徴
ホーチミン市都市鉄道1号線について

(画像1)ベトナム

在ベトナム日本国大使館 経済班 黒瀨 康夫

 ベトナムの経済成長率はここ20年以上、5%を超えており、近年は7%程度の成長を見せています。成長著しいと言われるASEAN各国がコロナ禍で苦戦し、軒並みマイナス成長となった中、ベトナムはこの状況でも2020年もプラス成長を達成しました。

 経済成長とともに都市も急速に成長しており、ベトナム最大の都市であるホーチミン市は、2009年からの10年間の平均人口増加率は年2.28%で、現在約900万人の人口を抱える都市となっています。その負荷に都市が耐えられなくなっており、交通渋滞、それに起因する大気汚染が極めて深刻です。幹線道路沿いでは、浮遊粒子状物質が環境基準の1.2~2.2倍という数値を記録しています。

日本の優れた技術やノウハウを活用
交通渋滞や大気汚染を解決する都市鉄道プロジェクト

(画像2)ホーチミン市都市鉄道1号線路線予定図 ホーチミン市都市鉄道1号線路線予定図
(資料提供:日本工営株式会社)

 これら交通渋滞と大気汚染という問題に対応し、経済発展および都市環境の改善に寄与するため、2007年より、ホーチミン市都市鉄道事業(ベンタイン~スオイティエン間(1号線))のプロジェクトを、我が国の優れた技術やノウハウを活用し、また、技術移転を通じて我が国の「顔が見える援助」を促進するため、本邦技術活用条件(STEP)を適用し進めています。

(写真1)シールドトンネルの整備状況 オペラハウス駅からバソン駅間の
シールドトンネルの整備状況
(写真2)高架区間の整備状況 高架区間の整備状況

 当該路線は全長19.7キロメートルで、そのうち都心部のベンタイン駅からオペラハウス駅を経由してバソン駅までの2.6キロメートルの区間は地下鉄、残りの17.1キロメートルは高架となります。

 プロジェクトは大きく進捗しています。ベンタイン駅の整備は順調に進んでおり、また、軟弱な地盤の上にフランス統治時代の古い建築が立ち並び、極めて難しい施工条件のオペラハウス駅からバソン駅の工事、あるいは高架区間も、概ね形ができています。

 オペラハウス付近では、トンネルがオペラハウス直下を通過しないよう線形を工夫したり、土の中でトンネルを門型に囲むよう地盤改良をするなど、オペラハウスへの影響を最小化して工事は進められました。また、オペラハウス駅の真横には、フランス植民地時代に当初2階建てで建築された歴史的価値の高いホテルがありますが、現在までに基礎を補強しないまま5階建てに増築されています。このため、駅整備によるホテルへの影響が危惧されましたが、綿密な計算を行い、駅の出入口の位置・形状の設計を修正し、地盤改良をし、ホテルが傾かないようにしながら工事を進めています。

(写真3)カインホイ港に到着した最初の車両の様子 2020年9月末に山口県の笠戸港を出発し、10月にホーチミンのカインホイ港に到着した最初の車両

 また、このプロジェクトの中では、日本製の車両が用いられます。2020年9月末に、最初の3両(1編成)の車両が、山口県の笠戸港を出発し、10月にホーチミンのカインホイ港に到着しました。最終的には51車両(17編成)が日本から到着する予定です。車両定員は1編成(3両)あたり930人で、最高速度は地上で時速110キロメートル、地下で時速80キロメートルとなります。

 2020年10月には、車両の到着式典が開催されましたが、ベトナムの主要なニュース番組や新聞で大きく報道され、現地の関心は非常に高くなっています。

運転手の訓練も開始
設備支援だけでなく技術サポートも同時展開

(写真4)車両 日本とベトナムの友好と協力の象徴と期待される
ホーチミン市都市鉄道事業

 また、都市鉄道本体の整備だけではなく、本事業のコンサルタント業務を通じ、車両を運転する運転手の訓練が2020年7月に開始されました。58名のベトナム人の運転手候補生が、1年以上に及ぶ訓練を受講する予定となっています。さらに、技術協力プロジェクトを通じ組織管理や営業規約の策定など鉄道運営会社の能力強化も支援しており、本プロジェクトは、日本の知見を活かしたハード、ソフト両面での支援が進められているといえます。

 そして、現在、世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大により、大きな影響を受けていますが、ベトナムは世界で最も感染抑制に成功している国の一つです。実は、本プロジェクトも新型コロナウイルスによる影響を受けました。プロジェクトに携わる技術者の入国が困難となっていましたが、事業を進めたいベトナム政府およびホーチミン市の協力もあり、本プロジェクトに携わる技術者を入国させることができました。

 このプロジェクトは、ホーチミン市の渋滞問題や大気汚染の解消に寄与し、そして、新型コロナウイルスからの経済回復をさらに加速させるだけでなく、上記のように、日本とベトナムの友好と協力の象徴となっています。

 このように、急速な経済成長に伴い増大する運輸交通等の経済インフラ需要に対する我が国の支援は、ベトナムの持続的経済成長を下支えし、二国間関係のさらなる強化に繋がるとともに、ASEAN・メコン地域における連結性の向上や経済発展にも資するものであり、「自由で開かれたインド太平洋」の推進にも貢献します。我が国は、引き続き、本プロジェクトを含め、ベトナムにおける幹線交通網及び都市交通網の整備を支援します。

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