ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第419号
「手を洗いましょう!」を学ぶ,パキスタンの女子生徒たち

在パキスタン日本国大使館 経済・開発班 土屋泰司

パキスタン公立女子小学校の手洗い場
「ハーイ」と手を挙げているのではありません。手洗いの大切さを表現するパフォーマンスを披露している生徒さんたちです。このパキスタンの女子小学校では,歌を通して清潔な環境の大切さを学んだり,誰が一番上手に手を洗えるか「手洗いコンテスト」を実施したり,子どもでも体感的に衛生の大切さについて学べるよう工夫されています。
このプロジェクトを進めているのが,日本の国際NGO「難民を助ける会(AAR Japan)」の皆さん。学校向けの支援というと校舎の建設や机,椅子などの学用品の支援を思い浮かべがちですが,このプロジェクトでは,衛生的なトイレや手洗い場,安全な飲料水を提供し,生徒の皆さんに快適な学習環境を整備するほか,「トイレの後は手を洗う」「教室は自分たちの手できれいにする」など,快適な学習環境を自ら維持するための衛生教育を行っています。
このプロジェクトで日本政府は「日本NGO連携無償資金協力」として,AAR Japanを通じ,およそ3年間にわたって合計約1億5,400万円の資金提供を行いました。ハイバル・パフトフゥハー州ハリプール郡では,この学校を含め,全部で14の公立女子小学校やアフガニスタン難民が通う小学校で同様のプロジェクトが進められており,3,000人を超える女子生徒や,その後に続く新入生たちが快適な学習環境で学ぶことができるようになります。
パキスタンでは,地域的,経済的理由により,教育の機会に接することができない子どもたちも多く,日本政府は,以前からパキスタンの教育支援に力を入れています。この支援によって,より多くの生徒たちが快適な学習環境で勉強を続け,パキスタンの発展のための大きな力になることを願っています。 (注:本記事は,2019年5月10日号の再掲載です)
(2020年4月追記)
このプロジェクトでは,最終的に,計37校の学校に井戸やトイレ,手洗い場が整備され,約7,500人の生徒,新入生たちが快適な学習環境で学ぶことができるようになりました。その後の調査によれば,(1)トイレの後は手を洗うと答えた生徒は以前の69%から100%に,(2)汚れていなくても手は洗うべきと答えた生徒は以前の13%から100%に,(3)手を洗う時に石けんを使うと答えた生徒は以前の71%から100%にそれぞれ増加しました。
この学校に通うスネリアさん(8歳)は,「以前は,学校のトイレが全部壊れていたので,なるべく水を飲まないようにしたり,トイレに行くのを我慢したりしていました。今では,水もきれいなトイレもあるので,学校にくることが楽しみです」とニッコリ,保護者会長のサイカ・ビビさん(29歳)も,「念願だった衛生施設が学校に整備され,安心して子どもを学校に通わせられるようになりました」と話してくれました。
AAR Japanでは,このほかに,日本NGO連携無償資金協力として,障がいを持つ児童とそうでない児童が学校で共に学ぶことができる“インクルーシブ教育”をパキスタンに根付かせるための支援を行っています。