ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第400号
G20,G7での開発協力分野の取組
原稿執筆:外務省 国際協力局 開発協力企画室/地球規模課題総括課
G20大阪サミットに向けて,開発分野でSDGs,インフラ,教育について議論
本年6月28日,29日に大阪でG20サミットが開催されます。サミットの本会議に先立ち,分野ごとに作業部会が設置され,実務レベルでさまざまな準備が行われてきました。開発協力の分野では,どのような議論が行われてきたのでしょうか。
G20で開発問題を扱っているのは,開発作業部会(Development Working Group: DWG)です。DWGは,2010年のG20トロント・サミット(カナダ)で立ち上げに合意されて以降,毎年開催されています。日本議長国下では,1月,3月,4月の計3回,東京と千葉でDWGを開催し,各国の開発政策に関する実務者が参加し,主にSDGs,質の高いインフラ,教育の3つのテーマにつき,G20各国共通の見解と目標を取りまとめたメッセージをサミットで首脳から発出すべく,議論を行いました。
2015年の国連サミットにて採択されたSDGsは,「誰一人取り残さない」社会を実現すべく,2030年までに達成すべき目標として,17のゴールと169のターゲットを定めています。今年のDWGでは,9月のSDGサミットを見据え,SDGsの達成に向けてこれまでにG20が行ってきた具体的行動策を取りまとめました。
また,SDGsに含まれているインフラ(ゴール9)や教育(ゴール4)も,今年のDWGで扱われました。
世界には,道路,水,電力といったインフラを整備してほしいとのニーズがたくさんあります。ただ,持続可能な開発という観点からは,どのようなインフラでもよいわけではありません。安全で,災害に強く,それでいて環境に優しいというように,あらゆる面で「質の高い」インフラを整備していくことが重要です。今年は,この「質の高い」インフラをテーマとして取り上げ,開発の観点から重視すべきインフラの「質」とは何か,各国のさまざまな立場や意見を踏まえて,共通点を見つけるべく議論を行いました。
また,人への投資は,あらゆる開発課題の解決に必要です。今年は,中でも教育に焦点を当て,途上国において,紛争や災害などに苦しんでいる子どもたちも含め,誰一人取り残されることなく,より良い未来を築くための変革を生み出す社会を創造するにはどのような教育が必要かについて議論しました。教育における男女格差の文脈で各国のジェンダー観の違いによる対立が先鋭化するなど,容易に議論が進まない局面もありましたが,最終的には,途上国の教育への投資促進に向けた具体的行動策を取りまとめることができました。このほか,過去のG20で開発分野について約束した事項の進捗状況を3年に1度とりまとめる「G20大阪包括的説明責任報告書」も作成しました。
私たちは,大阪サミットをきっかけとして,地域も経済規模も異なるG20各国が足並みを揃えて開発協力の推進に向けた行動をとり,そうした取組が国際社会の安定と繁栄につながるよう,働きかけを続けていきます。
G7開発大臣会合およびG7教育・開発大臣合同会合(7月4,5日)
今年のフランス議長国下のG7では,グローバリゼーションが進む中で「誰一人取り残さない」ための不平等との闘いが全体テーマとなっています。7月4日にはG7開発大臣会合,7月5日にはG7教育・開発大臣合同会合がパリで開催される予定です。
G7開発大臣会合では,G7各国に加え,アフリカ諸国や国際機関も招き,貧困,農村の若者の雇用,紛争,国家機能の脆弱性が大きな課題となっているアフリカの諸地域等への支援のあり方や,持続可能な開発のための新たな資金調達の方法についても話し合われます。G7教育・開発大臣合同会合では,女子教育と職業技術教育訓練について議論されるほか,女子教育をテーマとした国際会議も開催されます。
日本としては,8月の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の開催を前に,G7の場でも,アフリカへの支援に関する議論に積極的に参加していく考えです。また今年は3年に1度G7が開発分野でこれまでに約束してきた支援や取組の進捗状況をまとめる「ビアリッツ包括的説明責任報告書」が作成され,G7各国のホームページ(日本は外務省ウェブサイト)で公表される予定です。
私のODAストーリー
「日本のODA」をきっかけに,日本で勉強したいという思いがかないました!
原稿執筆:山口大学大学院経済研究科1年在籍中
ブッサディ・ガイソンさん(ラオス)
私は山口大学大学院で学ぶ留学生です。先日外務省を会場に行われたODA出前講座に参加させていただきました。学生時代から日本のODAの恩恵を意識しており,将来必ず日本で学びたいと考えておりました。山口大学に受け入れられたこと,そしてODAについての講座に参加できたことを,たいへん幸せに感じます。
私はラオス南部のチャンパサック県の高校で学生生活を送りましたが,この地域では学校の施設が十分でなく,日本のODAの支援を受けて校舎の新築や増設が行われている学校がいくつかありました。私の通っていた学校も,日本のODAで新たな校舎の建設が行われました。
また,私の高校の前を通っていた国道13号線も,日本のODAによって改修・整備されたものでした。私の住む南部地区の県から,首都のビエンチャンを結ぶたいへん便利なこの道路は,650キロメートルもの長さがあります。この道路のおかげで,首都までの交通が改善し,地方からの利便性が圧倒的に良くなりました。さらに,日本のODAによって,チャンパサック県を分断していたメコン河に「ラオス・日本橋」が建設されました。
この橋ができる前,タイへ物資を輸送するためには,メコン河を船かボートで渡り,それからまた車両に乗り換えてタイへ向かうしかありませんでした。けれど,この橋が架けられたおかげで,私の住むチャンパサック県の県庁所在地であるパクセからも,車両によってタイへの直接のアクセスが可能になりました。このように,私はこれまで日本の「ODAの恩恵」を身近に感じることが多く,「将来日本で勉強したい」と強く願っていました。
そして,その願いはかなったのです。
高校を卒業後,私は首都の国立大学に進み,社会人となってから,日本のJICA事業による留学生受入計画に基づく「人材育成奨学計画(JDS)」によって奨学金を受け,山口大学大学院経済学研究科への留学が認められました。
現在,私は「ラオス南部の貧困削減における,マイクロファイナンス(小口・零細事業向け融資)機関の効率性と有効性」について研究しています。山口大学を卒業したら,大学での研究を活かし,帰国してラオス南部に住む人々の生活を向上させたいと考えています。資金調達の方策を整え,人々が貧困から抜け出せるよう,貢献していきたいと考えています。
タイまで直通する架け橋をはじめとする,多くの日本の支援がなければ,現在のラオスの発展はなかったものと思います。整備されていないでこぼこ道をずっと使い続けていたかもしれません。ラオスに対する日本のODAについて,心から感謝しています。
[参考]人材育成奨学計画(JDS)(PDF)
日本政府による無償資金協力の一環として1999年から開始された留学生受入プロジェクト。主に若手行政官を対象とし,各国にて指導者となる人材を育成,各留学生が日本の良き理解者として活躍し,日本との関係強化に貢献することを目的としている。同計画にて,現在13か国(ウズベキスタン,ラオス,ベトナム,カンボジア,バングラデシュ,モンゴル,ミャンマー,フィリピン,キルギス,タジキスタン,スリランカ,ガーナ,ネパール)の若手行政官が学位取得を目指して日本の大学院に留学中。