ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第379号
ODAメールマガジン第379号では,以下3話をお送りいたします。(肩書きは全て当時のものです)
- 第1話:アルジェリア民主人民共和国より【シリーズ「世界を変える日本の技術」第10弾】
「サハラを起点とするソーラーブリーダー研究開発」 - 第2話:ベナン共和国より
「ベナンにおける内水面養殖の取組 人から人へと繋がる技術協力」 - 第3話:大臣官房ODA評価室より
「平成29年度外務省ODA評価(第三者評価)個別報告書の公表」
サハラを起点とするソーラーブリーダー研究開発
原稿執筆:在アルジェリア日本国大使館 関 行規 一等書記官
アルジェリアは広大な領土を持つ国で,その面積は世界第9位,アフリカ大陸ではスーダンの南北分離によって第1位となりました。北部は温暖な地中海性気候ですが,南部には国土の85%を占める広大なサハラ砂漠が広がっています。
アルジェリア南部にある広大なサハラ砂漠はかつて不毛の大地でしたが,現在は天然ガス,原油等の天然資源が豊富に産出され,シェールガスの埋蔵も確認されています。地中海をはさんだ先が欧州という地理的利点を生かし,欧州に向けた主要ガスの輸出国としてその地位を確立しています。
一方で,経済全体や国家財政は,石油や天然ガスなどに高く依存しているため,油価の乱高下の影響を受けやすく,所得格差の拡大を招きます。このようなリスクを防ぐため,アルジェリア政府は,経済の競争力強化および産業多角化を目指した,持続可能な経済発展に向けた政策を進めています。
日本はその政策に対し,同国で最重点分野に位置づけられている太陽光発電所の研究開発を支援しています。サハラ砂漠には,太陽光電池を製造する際の原料が無尽蔵にあるため,太陽がさんさんと降り注ぐ砂漠の環境は太陽光発電に最適です。視点を変えれば,不毛のサハラ砂漠も一石二鳥というわけなのです。
サハラ砂漠を起点とするソーラーブリーダー(注)研究開発事業は,日照時間の長いサハラ砂漠を活用して太陽光電池産業を育成し,最終的には世界各地に電力を送ることを目指しています。この太陽光発電事業は,将来的には必ず枯渇する化石燃料への依存の脱却にもつながります。
(注)ソーラーブリーダー事業では砂漠に太陽光発電所を建設,それによって発電した電力と砂漠の砂に含まれる原料でさらに太陽光パネルの生産を行う。これを繰り返すことでパネルの生産と発電の規模を拡大し,砂漠を太陽光パネルの生産と発電の拠点化,最終的には世界の電力をカバーしていくことを構想している。
そして,2010年度からの5年間に,オラン科学技術大学を中心として,太陽光電池の原料を砂漠の砂から抽出する基礎研究が日本とアルジェリアの研究者の共同で行われました。
この事業は第一歩に過ぎませんが,本事業で整備された実験機材などをベースに,今後さらに研究開発が進展し,太陽光電池生産の産業化,サハラ砂漠での太陽光発電が実現することを期待しています。
ちなみに本研究の拠点,オランはアルジェリア生まれのノーベル文学賞作家であるフランス人のアルベール・カミュの小説「ペスト」で描かれている美しい街です。またオラン科学技術大学の建築物は,日本現代建築家の故丹下健三氏によって設計されており,日本とも縁の深い大学です。
ベナンにおける内水面養殖の取組 人から人へと繋がる技術協力
原稿執筆:在ベナン日本国大使館 内田 智大 三等書記官
日本から遠く離れた西アフリカ・ベナンの成長に日本の技術力が大きく貢献しています。ここベナンでは日本の自動車や電化製品を通じて,日本の技術力や製品の品質の高さは広くベナンの人々に認知されています。そして,日本のこうした技術力を背景とした開発協力に大きな期待が寄せられています。
現在,日本の水産養殖の分野における技術力が,ベナンで徐々に注目を集めています。ベナンでも日本と同じく,魚が貴重な栄養源です。ベナンの人々は動物性タンパク質の53%を水産物から摂取しており,同国では水産物が生活に欠かせない食べ物です。しかし,その約8割は輸入に依存しているため,水産資源の自給率向上が大きな課題となっています。
近年の人口増加も相まって,水産資源量の減少は年々深刻な状況になっています。その対処法として,海に代わって河川や池などの「内水面」を利用した養殖が重要視されるようになってきました。ギニア湾に面するベナンの海岸線は東西120キロメートルと短いのに対し,奥行きが700キロメートル近くあり,国土が南北に細長く伸びた地形をしています。この地形を活かした「内水面」での養殖が注目されているのです。
このような背景から,日本は2010年にベナンで「内水面養殖普及プロジェクト(PROVAC)」を開始しました。2016年12月にベナン政府が発表した「政府行動計画」の中でも,内水面養殖事業は最優先45案件の一つに位置付けられており,同国の産業多角化や貧困削減に寄与するこのプロジェクトに大きな期待が寄せられています。
このプロジェクトの特徴は,日本の養殖技術を20名のベナン人中核養殖家へ伝え,さらに,彼らが一般養殖家にその技術を広めることで雇用創出や水産業の振興を目指すというアプローチを採用している点です。正に日本人専門家の技術が人から人へと繋がっていく技術協力です。
その結果,2010年の事業開始当初880人だった養殖人口は,プロジェクト第1期が終了した2014年には約2,200人にまで増え,生産量も3倍に増加しました。特筆すべきことは,養殖人口2,200人の3分の1が女性であるという点です。このプロジェクトは,ベナンの女性の地位向上・社会進出も同時に後押ししているのです。
2017年2月から始まった第2期では,5年間で養殖家人口と生産量の更なる増加を目指すとともに,売上げ価格の暴落といったリスクの管理方法の模索や隣国ナイジェリア等の市場の開拓を通じて,自己採算性を保持した産業への自立を支援していきます。同時に,トーゴやカメルーンなど周辺国への技術移転にも取り組んでいます。
日本は,人から人へと技術を伝えながらベナンの食料安全保障分野での協力を進め,今後もベナンの水産業の発展と雇用創出に引き続き協力していきます。
平成29年度外務省ODA評価(第三者評価)個別報告書の公表
原稿執筆:大臣官房ODA評価室
外務省は平成29年度外務省ODA評価(第三者評価)個別報告書を公表しました。
平成29年度は,「カンボジア国別評価」,「インド国別評価」,「ウガンダ国別評価」,「TICADプロセスをふまえた最近10年間の日本の対アフリカ支援の評価」,「JICAボランティア事業の評価」,「無償資金協力個別案件の評価」,「南部回廊を中心としたメコン地域の連結性の評価」の7件を実施しました。ODAに携わる方々やODAにご関心のある方々に,ぜひ活用していただければと思います。
なお,本年度は「インドネシア国別評価」,「コスタリカ・ニカラグア国別評価」,「アンゴラ国別評価」,「無償資金協力個別案件の評価」のODA評価4件を実施中です。
平成29年度までの報告書は,外務省ODAホームページに掲載しています。
また,これらの個別報告書以外にも,外務省が実施したODA評価の概要などを取りまとめた「ODA評価年次報告書」についても,毎年度公表しておりますので,ぜひこちらもご覧ください。
- ODA評価年次報告書(日本語版)
- ODA評価年次報告書(英語版)(2. Annual Report on Japan's ODA Evaluation 2017)
最近の開発協力関連トピック
- (1)「グローバルフェスタJAPAN2018」外務省写真展の展示作品を募集中!(締切8月31日)
グローバルフェスタJAPAN2018の外務省写真展で展示する写真を,絶賛大募集中です!「私たちのAction」を伝える写真をお待ちしています!みなさまの投票で決まる「いいね!賞」にも,是非ご参加ください! - (2)グローバルフェスタJAPAN2018にボランティア参加して感謝状をもらおう!
9月29日(土曜日),30日(日曜日)にお台場で行われる「グローバルフェスタJAPAN2018」では,ボランティアスタッフを募集しています。
国内最大級の国際協力イベントを,内側から見てみませんか?ボランティア終了後,外務省をはじめとする共催者名義の感謝状が発行されます! - (3)ODA出前講座をご存じですか?国際協力局では,国際協力についてお話しするため,第一線で働く職員を皆さまのもとへ派遣しています!全国の大学・高校・中学をはじめ,自治体,NGO団体などで開催しています。申請は,開催希望日の2か月前をめどにこちらから。