ODA(政府開発援助)

ODAメールマガジン第372号

2018年4月25日発行

平成30年4月26日

ODAメールマガジン第372号は,ナミビア共和国から「ナミビア紹介」と「物流立国・ナミビアに向けた経済開発に対する日本の協力」を,Gaviワクチンアライアンスからシリーズ「国際機関と開発協力」第13弾として「すべての子どもに命を救うワクチンを Gaviワクチンアライアンスの役割」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。

  • (画像1)ナミビア共和国

ナミビア紹介

原稿執筆:株式会社国際開発センター 研究主幹 川原 恵樹 JICA専門家 プロジェクト総括

私は,南部アフリカのナミビアで「物流立国構想」をサポートする業務に携わってきました。同国を初めて訪れたのが2011年3月でしたから,7年以上のお付き合いになります。

広大な国土,少ない人口,そして治安の良さ

ナミビアは,アフリカ大陸南部の大西洋岸に位置する,1990年に南アフリカから独立した若い国です。北はアンゴラ,北東はザンビア,東はボツワナ,南は南アフリカに接しています。国土は82.4万平方キロメートルと日本の2.2倍ですが,人口は247.9万人と日本の約50分の1です。南部アフリカの中では比較的治安が良いことで知られるナミビアは,安心してアフリカ観光が楽しめる国としてヨーロッパからの観光客に人気があります。

  • (画像2)ナミビアの位置【出典:JICA専門家チーム作成】
    ナミビアの位置
    【出典:JICA専門家チーム作成】

砂漠と高原サバンナ

ナミビアの平均年間降水量は,東京都の年間降水量の3分の1にも満たない僅か400ミリほどで,国全体が乾燥地です。国土の西側にあたる海岸に近づくほど雨量は少なくなり,大西洋岸には東西100キロメートル,南北1,280キロメートルのナミブ砂漠が広がっています。その海岸線のほぼ真ん中に,天然の良港を擁する港湾都市,ウォルビスベイがあります。同港は,イギリスが現在の南アフリカにあたるケープ植民地と自国との航路の中継地として1840年に開港しました。

  • (写真1)沿岸部の砂漠地帯
    沿岸部の砂漠地帯
  • (写真2)世界最古の砂漠のひとつといわれるナミブ砂漠の砂丘
    世界最古の砂漠のひとつといわれる
    ナミブ砂漠の砂丘
  • (写真3)沿岸部の町
    沿岸部の町
  • (写真4)高原部の内陸に向かう道路
    高原部の内陸に向かう道路

東側の内陸部は標高1,000から2,000メートルの高原です。首都ウイントフックはウォルビスベイから東に350キロメートル,標高1,500メートルの高原にあります。高原部も降水量800ミリ程度でサバンナ気候です。サバンナ地帯には観光ルートとして整備された野生動物保護区があり,チーターの生息数は世界一です。

  • (写真5)内陸の高原にある首都ウイントフックの中心街
    内陸の高原にある首都ウイントフックの中心街

高中所得国の抱える貧困の問題

ナミビアの国民一人当たりの所得は4,640ドル(2016年)と,高中所得国に分類されます。国際観光に加えて,ダイヤモンド,ウランという地下資源に恵まれ,高級牛肉と水産物輸出によっても外貨を獲得しています。しかし,外貨を稼げる部門に従事する豊かな層と,そうでない貧しい層とが存在する二重構造の経済になっています。

貧困層の問題はナミビアの課題ですが,雇用の増加に結び付きにくい資源の切り売りだけでは解決は困難です。失業率は34%(2016年)と高く,とりわけ若年層の失業は深刻です。今,ナミビアが求めているのは,新しい産業を興し,若い人たちの活躍の場を広げることです。

  • (写真6)高原部のサバンナと自然保護区,ザンビア方面に延びる道路
    高原部のサバンナと自然保護区,ザンビア方面に延びる道路

物流立国・ナミビアに向けた経済開発に対する日本の協力

原稿執筆:株式会社国際開発センター 研究主幹 川原 恵樹 JICA専門家 プロジェクト総括

ナミビアは,国全体では高中所得国の経済水準ですが,国内の経済格差は大きく,特に地方を中心に貧困層が多く存在します。とりわけ若者の失業率が高いことは大きな課題となっています。鉱物資源に依存した経済・産業構造を変えていくことが急務である中,新たな産業振興の柱の一つとして掲げられているのが「物流立国構想」です。ナミビアは,現在実施中の第5次国家開発5か年計画(2017年/18年から2021年/22年)の中で「物流立国構想」を進めることを目標の一つとしています。

積替拠点としての実績と「地の利」を活かした物流立国構想

日本ではあまり知られていませんが,ナミビアの国際物流の玄関口であるウォルビスベイ港は水深14メートルと深く,かつ天候が穏やかで波も静かな天然の良港です。世界最大のコンテナ輸送量を持つMaersk社をはじめとする大手海運各社は大陸間を結ぶ大型コンテナを定期的に運航しており,港は国際的な貨物の積み替え拠点として賑わっています。
さらに同港では,2020年の運用開始を目指して新コンテナターミナルが建設中です。完成すれば水深は16メートルとなり,最新の大型クレーンも完備され,超大型船の着岸が可能となります。海運各社は,従来はアフリカ西海岸航路で運用できなかった超大型コンテナ船を就航させる予定です。

「物流立国構想」とは,この港を船から船への積み替えだけではなく,港を持たない内陸国にも陸路で輸送するための新しい玄関口として活用してもらい,国際物流産業の誘致を進めようという構想なのです。

  • (写真7)ウォルビスベイ港に就航している定期大型コンテナ船(2017年10月現在)
    ウォルビスベイ港に就航している定期大型コンテナ船(2017年10月現在)
  • (写真8)建設中の新コンテナターミナルで設置が進む4基の大型クレーン(2018年2月)
    建設中の新コンテナターミナルで設置が進む4基の大型クレーン(2018年2月)

物流立国を目指すナミビアの強みは,港だけにはとどまりません。港と内陸国を結ぶ幹線道路は,広大な乾燥地を横切ってまっすぐに伸び,途上国にありがちな「舗装面の穴」もありません。また,たとえば内陸国ザンビアへの物流の場合,南アフリカで陸揚げするルートではほかの国を経由しなければなりませんが,ナミビアとザンビアは直接国境を接しているため,国境の通過は一回で済みます。

  • (画像3)ナミビアのウォルビスベイ港と南部アフリカ内陸部を結ぶ道路網(国際回廊)【出典:JICA専門家チーム作成】
    ナミビアのウォルビスベイ港と南部アフリカ内陸部を結ぶ道路網(国際回廊)
    【出典:JICA専門家チーム作成】
  • (写真9)ウォルビスベイと内陸部を結ぶ幹線道路
    ウォルビスベイと内陸部を結ぶ幹線道路
  • (写真10)ナミビアとザンビアの国境のザンベジ川にかかるカティマムリロ橋
    ナミビアとザンビアの国境のザンベジ川にかかるカティマムリロ橋

物流立国・ナミビアに向けた経済開発に対する日本の協力

日本は,ナミビアの物流立国構想に深く関わってきました。もともとこの構想は日本の国際協力機構(JICA)による「ナミビア国経済開発支援にかかる基礎情報収集・確認調査」(2011年9月)の中で提案されたものでした。その提案内容を高く評価したナミビア政府国家計画委員会(NPC)は,国の開発方針となる第4次国家開発計画(2012年/13年から2016年/17年)で物流立国構想を国家戦略とすることを決めました。
2013年には,その推進を後押しする技術協力を日本に要請しました。これに応じた日本の協力によって作られたのが「国際物流ハブ構築マスタープラン(2015年2月)」です。その提案内容はナミビア政府に全面的に採用され,現在の第5次国家開発計画の柱の一つとなりました。

マスタープラン完成後もナミビアから日本への支援要請は続いています。現在は日本の専門家チームがマスタープランの実施体制と枠組みづくり,関連プロジェクトの具体化案づくり,国際機関・他ドナーによる支援活用の推進をサポートしています。
日本のサポートによって実施体制・枠組みの整備やプランの具体化が進む一方で,アフリカ開発銀行(AfDB)やドイツ国際協力公社(GIZ)のマスタープラン実施枠組みへの参画とプロジェクトの実施に向けての技術・資金協力も動き始めています。

  • (写真11)ナミビアで開催された南部アフリカ開発共同体(SADC)主催の回廊開発国際会議でナミビアの物流立国構想の開発シナリオを説明する筆者(2016年9月)
    ナミビアで開催された南部アフリカ開発共同体(SADC)主催の回廊開発国際会議で
    ナミビアの物流立国構想の開発シナリオを説明する筆者(2016年9月)
  • (写真12)マスタープラン実施のワークショップにてナミビア政府,民間,大学,他ドナー関係者と議論する筆者(2018年2月)
    マスタープラン実施のワークショップにてナミビア政府,民間,大学,
    他ドナー関係者と議論する筆者(2018年2月)
  • (写真13)ナミビア科学技術大学大学院にて,物流専攻の学生に特別講義をする筆者(2018年2月)
    ナミビア科学技術大学大学院にて,
    物流専攻の学生に特別講義をする筆者(2018年2月)

動き始めた物流立国への歩み

物流立国構想推進による国際的な広報・誘致活動によって,近年,ナミビアを入り口とした内陸国との国際物流量は増加しつつあります。例えば,内陸国であるザンビアやコンゴ民主共和国への生活用品の輸送やこれらの国々からの精錬済みの銅の輸送は着実に増えています。

また2018年3月には,フランス自動車メーカーのプジョー・シトロエン・グループが,南部アフリカ関税同盟地域に販売するSUV車(スポーツ用多目的車)の組立拠点工場をウォルビスベイに建設することを発表しました。これも,世界と南部アフリカの内陸国とを結びつける国際物流拠点としてナミビアが高く評価された結果です。

人口も水も少ないナミビア国内だけを見ていると八方ふさがりに見えても,大きな世界地図を眺めてみると意外な突破口が見えて来ます。物流立国構想への日本の継続的な支援は,ナミビア政府から高く評価されています。

すべての子どもに命を救うワクチンを Gaviワクチンアライアンスの役割

原稿執筆:Gaviワクチンアライアンス 北島 千佳 上級資金調達官

毎年4月24日から30日は世界予防接種週間です。今年は予防接種推進のための人々の連携「Protected Together」がテーマです。また2012年には,2020年までのグローバルな指針としての「世界的ワクチン行動計画(GVAP)」がWHO加盟国により採択されました。Gaviワクチンアライアンス(以下,「Gavi」という)は子どもたちへの予防接種を推進する国際機関として,GVAPの中でも特に重要な位置を占めています。

  • (写真14)コンゴ民主共和国において不活化ポリオワクチン接種を受ける赤ちゃん【写真提供:Gavi 2015】
    コンゴ民主共和国において
    不活化ポリオワクチン接種を受ける赤ちゃん
    【写真提供:Gavi 2015】
  • (写真15)カメルーンのミナワオ難民キャンプで経口コレラワクチンの接種を受けるナイジェリア難民の子どもたち【写真提供:Gavi 2015】
    カメルーンのミナワオ難民キャンプで
    経口コレラワクチンの接種を受ける
    ナイジェリア難民の子どもたち
    【写真提供:Gavi 2015】

Gaviは2000年の設立以来,6億4,000万人あまりの子どもたちに予防接種を行い,900万人以上の命を救いました。また,世界で最も所得の低い73か国に対象を絞り,新規ワクチンの導入や感染症流行を防ぐための大規模予防接種活動を380回以上実施しました。現在までに支援したワクチンは16種類にのぼります。

加えて,Gaviでは上記73か国の長期にわたるワクチン需要を取りまとめることで,ワクチン製造業者がより多く,安定的にワクチンを製造して供給できるようにサポートし,その代わりに,これらの製造会社と交渉してワクチンの価格を下げるという新たなモデルを構築しました。一人でも多くの子どもたちにワクチンを届けられる仕組みを作ったのです。

Gaviがこのようなモデルのもと,地球規模で活動を行えたのは,多様な知見経験を持つ関係者同士の連携によるところが大きく,今年の予防接種週間のテーマ(Protected Together)とも合致します。Gaviのパートナーは,WHO,ユニセフ,世界銀行などの国際機関から市民社会組織,ワクチン製造業者を含む民間部門まで,多岐にわたります。中でもドナー各国による財政支援は特に重要です。日本政府は2011年以来財政支援を行っており,2016年のG7伊勢志摩サミットでは更なる支援を発表しました(Gaviを含む国際保健機関に対し,総額約11億ドルの支援を実施する内容。詳細はこちら(PDF)別ウィンドウで開くへ)。日本の支援により現在までに250万人の子どもたちが予防接種を受け,それによりもたらされる経済効果は8億6,500万ドルにものぼると推計されています。

  • (写真16)予防接種データの電子化【写真提供:Gavi 2017】
    予防接種データの電子化
    【写真提供:Gavi 2017】

日本政府は財政支援に加え,全ての人が負担可能な費用で基礎的な保健医療サービスを受けられることを目指すユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を筆頭に,国際保健における画期的なアプローチを推進しています。現在筆者はジュネーブにあるGavi事務局で日本からの資金調達を担当していますが,UHCのような,国際保健のあり方を変える試みがグローバルに浸透していく様子に大きな感銘を受けています。

予防接種は世界の最大数の子どもたちに裨益する保健サービスです。予防接種によって,子どもたちの健康状態を把握したり,両親の健康状態を確認し,保護者の知識を向上させたりすることが可能となり,それによって,より多くの人が他の保健サービスを享受できる機会を作り出す窓口となっています。予防接種は,UHC達成のための強固なプラットフォームとしての役割を担うことができるのです。Gaviは今後も,日本とのUHCについての連携を進めていく考えです。

一方で,基本的な予防接種を受けられない子どもたちが毎年1,950万人(全世界で生まれる子どもの5人に1人)もいることを忘れてはなりません。この「5番目の子ども」の命を守るべく,Gaviは日本を始めとするGaviのパートナーと積極的に連携していきます。

  • (写真17)Gaviは市民社会と協力し,遠隔地や難民キャンプなどの子どもたちにも確実にワクチンを届けます【写真提供:Gavi 2015】
    Gaviは市民社会と協力し,
    遠隔地や難民キャンプなどの
    子どもたちにも確実にワクチンを届けます
    【写真提供:Gavi 2015】
  • (写真18)途上国のワクチン製造業者もGaviにワクチンを供給【写真提供:Gavi 2015】
    途上国のワクチン製造業者も
    Gaviにワクチンを供給
    【写真提供:Gavi 2015】

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