ODA(政府開発援助)

ODAメールマガジン第370号

2018年3月28日発行

平成30年3月30日

ODAメールマガジン第370号は,キルギス共和国から「一村一品アプローチで小規模ビジネス振興し,女性のエンパワーメントを促進する日本の支援」を,クック諸島から「クック諸島における防災の取組と日本の支援」を,ジャパン・プラットフォームから「ジャパン・プラットフォームによる緊急人道支援【第5弾 ミャンマー避難民人道支援】」を,また,国際機関人事センターから「JPO派遣制度について」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。

  • (画像)キルギス共和国,クック諸島

一村一品アプローチで小規模ビジネス振興し,女性のエンパワーメントを促進する日本の支援

原稿執筆:JICAキルギス共和国事務所 北島 すみれ 専門家

「一村一品運動」をご存じでしょうか。大分県発祥の一村一品運動は地域資源を生かして特産品を育てることにより,地域やコミュニティの活性化を目指す取組です。

開発途上国の農村部での生活は都市部との格差が大きく,また,現金収入の機会は多くありません。JICAではこのような問題を解決するため,日本の一村一品運動を参考に地域の産業やコミュニティ活性化を支援しています。

キルギスではソビエト連邦が崩壊した後,地方では仕事がなくなり,若者が国外に出稼ぎに行くなど,人々の結びつきや地域のコミュニティが機能しなくなって経済活動が妨げられ,貧困問題が深刻化していました。また,村落部では女性の地位が低く,家庭の用事以外で女性が出かける機会はほとんどありませんでした。

JICAは手つかずの自然が残る山岳国・キルギスならではの果実,ベリーや蜂蜜,羊毛などの素材を活用して,グループ単位で付加価値のある製品の生産・販売を行うことで地域経済の活性化に取り組んでいます。

  • (写真1)地元素材を利用したジャムやせっけん,フェルト商品
    地元素材を利用したジャムやせっけん,
    フェルト商品
  • (写真2)地元の素材を活用し草木染フェルト商品が作られています
    地元の素材を活用し
    草木染フェルト商品が作られています
  • (写真3)出荷する商品は検針機にかけ,安全性に自信を持って送り出します
    出荷する商品は検針機にかけ,
    安全性に自信を持って送り出します

その中でも羊の毛を使ったフェルト商品は特に好評です。昔から遊牧民に飼育されていた羊の毛と地域の自然素材を利用し,草木染のフェルト商品が地元の人々の手で作られています。素材と品質にこだわった商品を作って世界に認められ,現在では日本の無印良品や世界の会社との取引が進んでいます。

  • (写真4)女性たちの賑やかな仕事場
    女性たちの賑やかな仕事場
  • (写真5)廃校を再生した地域の女性が集まるワークショップ
    廃校を再生した地域の女性が集まる
    ワークショップ
  • (写真6)日本人専門家から食品加工指導を受ける様子
    日本人専門家から食品加工指導を受ける様子

地元の人が地域の素材を使って世界に誇れる商品を作ることは,住民の貴重な現金収入となるだけでなく,商品が届く先の世界とつながることによって自信と誇りが芽生えます。家庭とはまた別の「仕事場」というコミュニティができたことで,家庭に閉じこもりがちな農村部の女性に地域との繋がりができています。家庭の主婦が働くことに初めは否定的だった家族も,彼女たちの活躍を目にして次第に一緒に働き始めたり,サポートをするような光景も見られるようになってきました。

キルギスのこの取組はイシククリ州という地域で始まり,2017年よりキルギス全国に広げる活動がスタートしています。小さな地域で始まった取組が今度はキルギス全国で広がり,さらに元気の輪を広げています。

  • (写真7)雄大な景色がひろがるイシククリ州
    雄大な景色がひろがるイシククリ州
  • (写真8)中央アジアの真珠とも呼ばれるイシククリ湖
    中央アジアの真珠とも呼ばれるイシククリ湖
  • (写真9)イシククリ州での取組を他州に展開する取組が始まっています
    イシククリ州での取組を他州に展開する
    取組が始まっています

クック諸島における防災の取組と日本の支援

原稿執筆:在ニュージーランド日本国大使館 田中 紀子 一等書記官

クック諸島は,日本の南東約8,000キロメートルにある,15の点在する島からなる国です。ラグーンやポリネシアダンスで有名な平和で美しい国ですが,毎年11月から翌年3月にかけてトロピカル・サイクロン(熱帯性低気圧)が南太平洋で発生し,時にはクック諸島に近づいて大きな被害をもたらします。

昔からクック諸島には,無風状態でもバナナの茎が曲がったり,葉が不気味な音を立てたりすると数日後にはサイクロンが来るという言い伝えが残っています。また,白く煙のような形の雲が出たり,マンゴーやパンの実(ブレッドフルーツ)が鈴なりに茂ったりすると強風となる言い伝えもあり,クック諸島の人々は身近な生活の中で自然災害を予知し,それに備える知恵を培ってきました。

しかし,最近は気候変動の影響を受けてサイクロンの発生数やその規模が増したと言われており,過去20年間では大型のサイクロンが5回接近し,北部のマニヒキ島やプカプカ島,南部のアイツタキ島等を襲い,死傷者や家屋の損壊,タロ芋畑の流出,ココナッツの木々の倒壊など大きな被害が出ました。

  • (写真10)プカプカ島におけるサイクロン被害(2005年)タロ芋畑やココナッツの木々が被害を受け,回復するのに長期間かかりました【写真提供:クック諸島政府首相府】
    プカプカ島におけるサイクロン被害(2005年)
    タロ芋畑やココナッツの木々が被害を受け,回復するのに長期間かかりました
    【写真提供:クック諸島政府首相府】
  • (写真11)同島の病院が半壊するとともに,家屋の約8割が被害を受けました(写真12)アイツタキ島におけるサイクロン被害(2010年)【写真提供:クック諸島政府首相府】
    アイツタキ島におけるサイクロン被害(2010年)
    同島の病院が半壊するとともに(写真左),家屋の約8割が被害を受けました
    【写真提供:クック諸島政府首相府】

このような中,クック諸島政府は持続的開発の一環として,サイクロン等の自然災害対策を進めており,災害に強いインフラ整備やコミュニティレベルでの防災・減災研修や教育を実施しています。日本は草の根・人間の安全保障無償資金協力やノン・プロジェクト無償の見返り資金を活用して,ラロトンガ島のアヴァナ港の護岸整備,同島やアイツタキ島,パーマストン島における多目的ホール兼防災シェルターの建設等を通じて,クック諸島の取組を支援しています。

また,昨年11月,日本で開催された「『世界津波の日』2017 高校生島サミットin沖縄」にはクック諸島の4つの島から高校生や教員計8名が参加し,2010年のアイツタキ島のサイクロン被害を報告するとともに,地域や学校における防災教育や訓練の大切さについて発表しました。

  • (写真13)ラロトンガ島アヴァナ港の完成(2017年)(写真14)自然災害にも強い堅牢な作りで,埠頭の貨物積降し場には滑り止めもついています
    ラロトンガ島アヴァナ港の完成(2017年)
    自然災害にも強い堅牢な作りで,埠頭の貨物積降し場には滑り止めもついています

政府のみならず,住民の間でも地元コミュニティの防災・減災に取り組んでいます。リゾートホテルや外国人観光客が多いラロトンガ島南西部では,地元ボランティア団体であるテイムリモティア・ボランティア消防救急隊が地域の消火活動をはじめ海難救助の研修,サイクロン後の地下排水路の泥水汲み上げなどを実施しています。

同消防救急隊は,かつて屋根付き駐車場がなかったために野ざらしで消防自動車を保管せざるを得ませんでしたが,2017年,「草の根・人間の安全保障無償資金協力」によってテイムリモティア消防署が建設されました。同消防署及びその活動は地域住民の間でも広く知られており,消防署はサイクロン等の自然災害時には一部防災シェルターとしても活用される予定です。

今後,さらに日本の支援によって,消防車3台が追加される予定であり,更なる防災・減災対策の強化が期待されます。

  • (写真15)サイクロン後の排水処理を行うテイムリモティア消防隊(2015年)【写真提供:テイムリモティア・ボランティア消防救急隊】
    サイクロン後の排水処理を行うテイムリモティア消防隊(2015年)
    【写真提供:テイムリモティア・ボランティア消防救急隊】
  • (写真16)ラロトンガ島テイムリモティア消防署の完成式典(2017年2月)(写真17)ラロトンガ島テイムリモティア消防署の完成式典(2017年2月)
    ラロトンガ島テイムリモティア消防署の完成式典(2017年2月)

ジャパン・プラットフォームによる緊急人道支援【第5弾 ミャンマー避難民人道支援】

原稿執筆:ジャパン・プラットフォーム 緊急対応部 冨澤 聖子

着の身着のままで,最低限の家財道具を背負って逃げてきた人々。長い時間をかけて徒歩やボートで移動し,疲れ果てて体調を崩している人。お腹を壊しているのに十分な医療を受けることができない子どもたち。ミャンマーからバングラデシュのコックスバザール県に避難してきた人々です。

2017年8月25日以降にミャンマーから国境を越えてバングラデシュに避難した人(注1)は67.1万人以上にのぼり,その数はいまだ増え続けています。これだけ短期間に,これだけ大規模な避難民の流入は過去に例がありません。

緊急人道支援組織のジャパン・プラットフォーム(JPF)は10月13日に支援プログラム「ミャンマー避難民人道支援」を立ち上げ,これまでに7つのJPF加盟NGO(注2)が緊急支援を実施しています。国境を越えて逃げてきた人々からは,最低限の暮らしを送るためのシェルター資材や衣類,衛生用品,台所用品などが求められています。JPF加盟NGOのグッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)は毛布や水汲み用のバケツ,床に敷くマット,子ども用ジャンパーや女性用ショールなどが入った日用品セットを2,400世帯に配布しました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)は衛生キットを9,540世帯に,台所用品セットを11,500世帯に配布することを計画し,活動中です。

現地では,生活物資だけではなく,教育や保護,水と衛生,保健など様々な分野の支援が足りていません。劣悪な生活環境を強いられている避難民の中には体調不良を訴える人も多く,過密した住環境,安全な水の確保や衛生的なトイレの不足から感染症発生のリスクが常に高い状況であるため,医療支援のより一層の充実が求められています。

  • (写真18)仮診療所で避難民を診察する医師【写真提供:災害人道医療支援会(HuMA)】
    仮診療所で避難民を診察する医師
    【写真提供:災害人道医療支援会(HuMA)】

日本では1999年を最後に感染例の報告がないジフテリアが,現地の難民キャンプで昨年末から今年にかけて大流行しました。また,避難民の58%が18歳未満の子ども,60%が女性(そのうち3%が妊婦,7%が授乳中の女性)と言われています。妊産婦や子どもといった,より脆弱な人々への支援として,JPF加盟NGOのピースウィンズ・ジャパン(PWJ)や災害人道医療支援会(HuMA)は安全なお産や子どもの栄養不良改善に取り組んでいます。先日,完成したばかりの簡易診療所で無事に元気な赤ちゃんが生まれました。資機材や薬,人材不足など困難な状況が続く中とても嬉しい報告で,スタッフにも笑顔が溢れました。

  • (写真19)完成したばかりの簡易診療所で元気な赤ちゃんが誕生【写真提供:災害人道医療支援会(HuMA)】
    完成したばかりの簡易診療所で元気な赤ちゃんが誕生
    【写真提供:災害人道医療支援会(HuMA)】

JPFは避難民に寄り添い,命をつなぐために求められる支援をこれからも続けていきます。

(注1)JPFでは,民族的背景および避難されている方々の多様性に配慮し,「ロヒンギャ」ではなく「ミャンマー避難民」という表現を使用する。

(注2)特定非営利活動法人難民を助ける会(AAR),特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP),特定非営利活動法人災害人道医療支援会(HuMA),特定非営利活動法人メドゥサン・デュ・モンドジャポン(MdM),特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ),公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ),特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)

JPO派遣制度について

原稿執筆:国際機関人事センター 木下 悠矢 主査

「国連職員になりたい」と考えたことはありますか?外務省国際機関人事センターでは,国連をはじめとする国際機関別ウィンドウで開くを志す日本人の方々をお手伝いしています。
日本人が国際機関の専門職員を目指すには,主に3つの方法があります。

  • 国際機関への直接応募(空席公募)
  • ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度への応募
  • 国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)への応募

今回は,4月1日に公募を開始するJPO派遣制度について紹介します。

JPO派遣制度は,外務省が国際機関に日本人を派遣する制度です。任期は原則として2年で,派遣先の国際機関で職員として勤務しながら,正規採用を目指します。採用は基本的に年1回のJPO派遣候補者選考試験(JPO試験)を通じて行われます。2018年度は,2018年4月1日(日)から5月7日(月)まで応募を受け付けます。
応募資格は,(1)35歳以下,(2)修士号を取得又は取得見込み,(3)2年以上の職務経験があり,(4)英語で仕事ができ,(5)将来も国際機関で働く意思を有する,(6)日本国籍の方です(詳細は募集要項(PDF)別ウィンドウで開く参照)。応募に当たり,TOEFLテスト(iBT,PBT)またはIELTS(アカデミック・モジュール,ジェネラル・トレーニング・モジュール)のスコアが必要です。
第一次審査は書類審査で,審査通過者は面接審査等からなる第二次審査に進みます。

JPOは毎年50名から60名程度派遣され,約7割の方が就職活動の結果,国際機関で採用を得ます。国際機関のうち,国連関係機関では,約800名の日本人職員(専門職以上)のうち,4割以上がJPO出身者となっています。多くの日本人の先輩が,JPOから国際機関のキャリアを始めているのです。

  • (写真20)国際移住機関(IOM)中東・北アフリカ地域事務所の伊藤千顕・国際移住保健専門官ソマリアでIOMが運営している保健センターで,国内避難民と
    国際移住機関(IOM)
    中東・北アフリカ地域事務所の
    伊藤千顕・国際移住保健専門官
    ソマリアでIOMが運営している保健センターで,
    国内避難民と
  • (写真21)国際移住機関(IOM)中東・北アフリカ地域事務所の伊藤千顕・国際移住保健専門官ソマリアでIOMが日本企業と官民連携で水・衛生事業を行っている現場で
    国際移住機関(IOM)
    中東・北アフリカ地域事務所の
    伊藤千顕・国際移住保健専門官
    ソマリアでIOMが日本企業と官民連携で
    水・衛生事業を行っている現場で

国際機関の多くが開発途上国を活動の場としていることから,JPO試験では,開発途上国での現場経験が高く評価されます。企業で駐在員を経験した方,青年海外協力隊員(JOCV)や在外公館専門調査員等を経験した方にとって,JPOはさらに国際経験を積むチャンスです。

JPOを始め,多くの日本人国際機関職員の方が体験談別ウィンドウで開くを書かれています。関心を持った方は,ぜひ読んでみてください。

  • (写真22)国連開発計画(UNDP)ナイジェリア・アブジャ事務所の野口義明・プロジェクト管理専門官北東部ボルノ州で,紛争帰還民の生計回復のため,灌漑用の発動機付ポンプを供与
    国連開発計画(UNDP)
    ナイジェリア・アブジャ事務所の
    野口義明・プロジェクト管理専門官
    北東部ボルノ州で,
    紛争帰還民の生計回復のため,
    灌漑用の発動機付ポンプを供与
  • (写真23)国連開発計画(UNDP)ナイジェリア・アブジャ事務所の野口義明・プロジェクト管理専門官ナイジェリア北東部アダマワ州で,紛争帰還民の生計回復のため,家畜の山羊を供与
    国連開発計画(UNDP)
    ナイジェリア・アブジャ事務所の
    野口義明・プロジェクト管理専門官
    ナイジェリア北東部アダマワ州で,
    紛争帰還民の生計回復のため,
    家畜の山羊を供与

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