ODA(政府開発援助)

ODAメールマガジン第362号

2017年11月22日発行

平成29年11月24日

ODAメールマガジン第362号は,チュニジア共和国から「日本のテレビ番組及び学校改修を通じたチュニジア支援」を,UNDP駐日代表事務所からシリーズ「国際機関と開発協力」第12弾として「テロ予防としての貧困撲滅 10月17日貧困撲滅のための国連デーに寄せて」をお届けします。なお,肩書は全て当時のものです。

  • (画像1)チュニジア共和国

日本のテレビ番組及び学校改修を通じたチュニジア支援

原稿執筆:在チュニジア日本国大使館 久保田 寛之 二等書記官

チュニジアと聞いて,皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。北アフリカに位置し,北は地中海,南はサハラ砂漠が広がる比較的穏やかな気候に恵まれた地域で,カルタゴ・ローマなどの歴史を物語る文化遺産も豊富です。
そういった風土のチュニジアでは,地域格差はあるものの,インフラ整備も比較的進められており,テレビ分野においては,電波カバー率は国土の99.7%をカバーするなど十分に整備されています。また,今日では,チュニジア国民のテレビ所有率は90%を超えており,テレビの影響は非常に大きく,国民にとって重要な情報獲得ツールとなっています。
このような状況の中,国営放送局であるチュニジアテレビは,更なる番組放送の多様化や質の向上を行い,チュニジア国民に,より良いテレビ番組を供給するため,我が国に同分野の支援を要請しました。
これを受け,我が国はハードの面から,日本企業の有する高い技術を結集した中継車,放送機材等を供与しました。ソフトの面からは,日本の戦後復興から高度経済成長期までの過程を描いた「プロジェクトX」,日本の職人等に着目した「ザ・プロフェッショナル」,「日本の伝統文化」などに加え,「科学技術や自然に関する教育番組」などの150本を超える児童向けのテレビ番組を供与しました。これらの供与されたテレビ番組は,合計315本,延べ6,000時間を超えています。

  • (写真1)チュニジアテレビに供与した中継車
    チュニジアテレビに供与した中継車

放送されたこれらのテレビ番組は,チュニジア国民から好評であり,近年当地で親しまれつつあるポップカルチャー等と相まって更なる親日感情の醸成に貢献しています。
また,教育支援においては,草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて,教育省と連携し,小学校の食堂の建設,校舎の改修,校庭の整備を行うなど総合的な学校の教育環境の改善を行っています。
こういった取組を通じて,チュニジアの発展を支援すると共に,当地における日本のプレゼンス及び親日感情を向上できるよう,開発協力を行っていきたいと思います。

  • (写真2)支援した小学校に描かれた,友好を示す壁画
    支援した小学校に描かれた,友好を示す壁画

テロ予防としての貧困撲滅 10月17日貧困撲滅のための国連デーに寄せて

原稿執筆:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所パートナーシップ・コンサルタント 徳田 香子

貧困,気候変動,(学校や仕事先での)疎外感,脆弱な政府,不公平感,家族や宗教指導者による不適切な教育。一見バラバラに見えるこれら全てが,テロの根本的な原因であることが徐々に明らかになってきました(注)。

UNDPは,アフリカ6か国における農村部,拘置所,リハビリセンター等の多様な場所で調査を実施し,志願して過激派に入った人から,自らの意に反して過激派に取り込まれた人々まで,718人を対象にインタビューを行いました。興味深いことに,インタビュー回答者の半分が,過激派に入った理由として「宗教」を挙げましたが,そのうち半分以上の回答者は,教本を読んだことすらない等,ほとんど宗教に関する知識がありませんでした。また,彼らが過激派に入った当時,最も困っていたことの上位3つは,治安,雇用,そして(水や電気等)生きるために最低限必要なアイテムでした。この3つのキーワードは,国内や旅行先におけるテロの恐怖,バブル崩壊やリーマンショック,東日本大震災等を経験した日本の私たちにとっても,決して縁遠いものではありません。

  • (写真1)UNDPが2017年に発刊した過激派に関する報告書【写真提供:UNDP】
    UNDPが2017年に発刊した
    過激派に関する報告書
    【写真提供:UNDP】
  • (写真2)実話を交えた写真集【写真提供:UNDP】
    実話を交えた写真集
    【写真提供:UNDP】

貧困は,今この瞬間,食べ物が手元にあるかないかだけで判断できるものではなく,私たちや次世代の命や生活,そして尊厳が守られているかどうかで判断されうるものです。日本政府は,先に挙げたような多様な脅威から人々を守り,一人一人が自らの将来に希望をもって可能性を実現できる環境を整える「人間の安全保障」の概念を推進してきました。その考え方に共感するUNDPは,約170の国・地域における現場経験とネットワークを生かして,多様な脅威を生み出す根本的な原因に対して,複合的で包括的なアプローチを心がけて取り組んでいます。

例えば,ナイジェリアでは,過激派が引き起こした武力紛争で土地を追われた人々に対して,食糧や水,医療や教育といった緊急の支援を行うだけでなく,人々の生活の糧である農業を再開する手助けをしています。イラクでは,UNDPとトヨタイラクが協力して,国内避難民の女性や若者に自動車整備等の職業訓練の機会を提供し,雇用を促進することで,所得の向上やジェンダーの平等に寄与しています。インドネシアでは,現地の大学と連携し,暴力的且つ過激な思想の広がりを防ぐとともに,若者自身が主体となってソーシャルメディアを活用したイベント等を行うことで,コミュニティのつながりを強化しています。

  • (写真3)UNDPナイジェリア事務所から,一世帯あたり3頭の山羊の供与を受ける国内避難民【写真提供:UNDP】
    UNDPナイジェリア事務所から,
    一世帯あたり3頭の山羊の供与を受ける国内避難民
    【写真提供:UNDP】
  • (写真4)UNDPアジアパシフィックによるフェイスブックライブ【写真提供:UNDP】
    UNDPアジアパシフィックによる
    フェイスブックライブ
    【写真提供:UNDP】
  • (写真5)UNDPモルディブ・UNDPインドネシアによる過激派対策に向けた南南協力【写真提供:UNDP】
    UNDPモルディブ・UNDPインドネシアによる
    過激派対策に向けた南南協力
    【写真提供:UNDP】

固定概念をとりはらって,テロの原因になりうる「貧困」を広く捉え,自分事として,個人や所属組織ができること,一人ではできなくともNGOや大学そして企業と連携すればできることに思いを巡らせることが,未だ答えのないテロ予防の一助になると感じています。

(注)国連開発計画(UNDP)「アラブ人間開発報告書2016別ウィンドウで開く」及び「Journey to Extremism in Africa (2017)別ウィンドウで開く」参照。