ODA(政府開発援助)

2017年7月26日発行
平成29年7月27日

ODAメールマガジン第354号は,ウガンダ共和国から「ウガンダの難民受入れと難民連帯サミット」と,シリーズ「SDGs 誰一人取り残さない日本の取組」第2弾としてJICAモロッコ事務所から「整理整頓が赤ちゃんとお母さんを救う モロッコでの5Sの取組」をお届けします。

  • (画像1)ウガンダ共和国,モロッコ王国

ウガンダの難民受入れと難民連帯サミット

原稿執筆:在ウガンダ日本国大使館 阪野 奈保 専門調査員

アフリカ東部の赤道直下に位置しているウガンダは,125万人を超える難民を受け入れており,トルコ及びパキスタンに次ぐ世界第3位の難民受入国です。特に昨年7月に発生した南スーダンでの騒乱後には,約60万人の南スーダン難民がウガンダに流入し,現在もなお,1日平均数百人が流入し続けています。昨年8月に北部ユンベ県に新規開設されたビディビディ難民居住区は,234平方キロメートルの土地に27万人以上が暮らす世界最大規模の居住区となりました。

このようにウガンダは世界でも最大規模の難民受入国ですが,難民には移動や就労の自由を認め,居住用と農業用の土地を貸与するなど,寛容な難民受入れ政策を掲げています。

  • (写真1)職業訓練を受ける難民と地域住民の様子
    職業訓練を受ける難民と地域住民
  • (写真2)自家製油を販売する難民女性
    自家製油を販売する難民女性

初等教育や医療などの公共サービスは,ウガンダ国民と同様に,難民にも無料で提供されています。一方で,難民の受入地域には大きな負担もかかっています。例えば,難民居住区に水を運ぶトラックにより道路が破損したり,学校や保健センターなどの公共施設が大混雑したりといった問題が起きています。

  • (写真3)混雑する居住区内の保健センターの様子
    混雑する居住区内の保健センター
  • (写真4)ウガンダ人と難民の学生が共に学んでいる様子
    ウガンダ人と難民の学生が共に学んでいる

アフリカに限らず,世界各地で難民問題の長期化が課題となっており,難民支援のあり方に関する議論が行われています。こうした中で,従来の短期的な人道支援に偏るのではなく,開発支援の視点も取り込み,難民の自立や受入地域の開発を支援することで,より中・長期的な解決を目指そうという考え方が広まっています。ウガンダでは,まさにこの人道支援と開発支援が連携した取組が先駆的に実施されています。

しかしながら,ウガンダの難民受入れに対する支援のための資金は大きく不足しており,危機的な状況にあるとして,国連とウガンダ政府は,ウガンダ難民連帯サミットを今年6月に開催し,国際社会からの支援を募りました。国連事務総長と国連難民高等弁務官も参加した本サミットには日本からも岸外務副大臣,加藤JICA理事が参加し,新たに11億円の緊急支援を表明しました。

  • (写真5)国連事務総長とムセベニ・ウガンダ大統領
    国連事務総長とムセベニ・ウガンダ大統領
  • (写真6)本会合の様子
    本会合の様子

サミット開催中には,JICAとUNDP(国連開発計画)共催の難民受入地方自治体に関するサイドイベントが開催され,各国の支援機関や市民団体などから多くの参加がありました。難民受入自治体の抱える課題や取組等に関する発表が行われたほか,日本によるウガンダの地方自治体支援に対し多くの関心が寄せられました。

  • (写真7)加藤JICA理事によるスピーチの様子
    加藤JICA理事によるスピーチ
  • (写真8)地方行政官による発表の様子
    地方行政官による発表

日本はこれまでも,難民の自立に向けた支援を行ってきたほか,難民を受け入れている地方自治体に対する能力向上支援も行っています。人道支援と開発支援を連携させた包括的な取組の継続に今後も期待が寄せられています。

整理整頓が赤ちゃんとお母さんを救う モロッコでの5Sの取組

原稿執筆:JICAモロッコ事務所 横手 春子 青年海外協力隊(看護師)

「酸素のチューブがない!」そう言って走り回っていたのは産科病棟の師長でした。小さなベッドには生まれたばかりの赤ちゃん。苦しそうに呼吸し,皮膚は青ざめていました。

私は2015年から2年間,モロッコのエルハジャブ県というアトラス山脈の麓で,青年海外協力隊の看護師隊員として活動してきました。活動の中心は「母子保健」,つまり赤ちゃんとお母さんの健康を守るための取り組みです。今回は,その取り組みの一つとして行った5S活動を紹介します。

5Sとは,働きやすい環境を作り,最終的にはサービスの質を高めるための手法です。Sは,「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字です。JICAプロジェクトとして世界各国で導入され,モロッコでは2008年ごろから保健分野の活動として徐々に導入されてきました。

冒頭に記したのは,実際に私が見た職場の病院での様子です。医療現場,特に出産の場で一分一秒は命取りなのですが,この様な光景は残念ながら稀ではありません。緊急時に限らず,時間や労力,そして物の無駄が至る所にありました。そこで,現場の方々と相談して決めたのが5Sの導入でした。

  • (写真1)5S開始前の産科病棟の様子
    産科病棟:
    5S開始前は山積みの点滴の箱や
    不要な物品がたくさんありました。
  • (写真2)5Sを開始してからの産科病棟の様子
    産科病棟:
    5Sを開始して不要なものを処分,
    診察のためのスペースができました。

実際の5S活動としては,研修を組み,定期的な会議や評価を実施して進めていきます。簡単なように思われるかもしれませんが,実際は何一つ日本のようにスムーズにはいきません。研修を行おうと思っても時間通りに来てくれない。時に優先されるのはお茶とおしゃべり。特に苦労したのは,「人も物も足りないから5Sはできない」という考え方でした。

5S導入として,まず私がするべきことは5Sの魅力と必要性を伝えることでした。現場の方と他県の成功例を見学しに行ってみたり,ペットボトルをリサイクルしてかわいらしい整理箱を作ってみたり,写真を活用して進捗を褒めてみたりと色々な工夫をしました。

  • (写真3)ペットボトルで作成した新生児のリストバンド用の整理箱
    ペットボトルをアレンジして
    新生児のリストバンド用の整理箱を作成。
  • (写真4)助産師さんが整理箱を作成している様子
    助産師さんが早速整理箱を作成。

5S活動を開始して約1年,まだまだ5S大成功とは言えませんが,「無駄な動きが減った」「緊急時の対応がスムーズに行えた」と助産師をはじめとした多くの産科スタッフが口をそろえます。他科のスタッフからも「5Sを教えてほしい」と声をかけられるようになりました。

私は任期を終えてモロッコを離れるので,今後は,私と共に働いたスタッフが活動を引き継ぎます。彼らは十分に5Sの魅力と必要性を理解してくれているので,今後の活躍に期待しています。整理整頓された綺麗な病棟で,大切な命を救ってくれることを願っています。

  • (写真5)初めての県内5S会議の様子
    初めての県内5S会議
  • (写真6)5Sテストに合格した産科師長さんに証明書を授与している様子
    5Sテストに合格した
    産科師長さんに証明書を授与
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