ODA(政府開発援助)

ODAメールマガジン第351号

2017年6月14日発行

平成29年6月15日

ODAメールマガジン第351号は,シリーズ「日系社会と日本の開発援助」第1弾としてペルー共和国から「協会設立100周年を迎えるペルー日系社会と日本の開発協力について」と,シリーズ「中東の難民問題」第12弾としてUNRWAアンマン本部から「パレスチナ難民母子手帳アプリ」をお届けします。

  • (画像1)ペルー共和国

協会設立100周年を迎えるペルー日系社会と日本の開発協力について

原稿執筆:在ペルー日本国大使館 岩瀬 基彦 二等書記官

ペルーは日本から見てほぼ地球の反対側にある南米の国で,マチュピチュやナスカの地上絵で有名です。日本から飛行機でほぼ丸1日かかるこの国で活躍している日系社会をご存じでしょうか。
ペルーは南米諸国の中で日本の契約移住者を受け入れた最初の国で,第1回移住者は1899年(明治32年)4月3日です。2019年には移住120周年を迎える現在のペルー日系社会は約10万人に上り,世界ではブラジル,米国に次ぐ第3位の規模です。

ペルーの日系人は,「正直」「勤勉」「誠実」であるとして,ペルーで高い評価を得ています。ペルー日系人協会(APJ)は1967年に開館した日秘文化会館(注:「秘」はペルーのこと)を中心に,26の県人会(出身都道府県毎に設立された団体)などで活発な活動を行っており,病院の経営も行っています。

本年は,ペルー日系人協会設立100周年,日秘文化会館設立50周年,日秘文化会館内の高齢者のための施設「神内センター」開設25周年という記念すべき年です。記念式典のほか,例えば献茶などの日本文化に根ざした記念行事が予定されています。加えて,アメリカ大陸の日系人が一同に会するパンアメリカン日系人協会主催の大会がペルーで開催予定です。

  • (写真1)日秘文化会館ロビーに設置された開館50周年記念の寄せ書き
    日秘文化会館ロビーに設置された開館50周年記念の寄せ書き

日本がペルーに対し実施している様々な支援の中には,ペルー国民の生活向上だけでなく,ペルーの日系社会の活動支援を同時に目指したプロジェクトもあります。
例えば,2008年に「草の根文化無償資金協力」にて,日秘文化会館大ホールの音響照明機材を整備しました。この機材を活用して日本映画上映会や和太鼓コンサートなどの公演が例年行われるなど,このホールは日本とペルーの文化交流の場として,毎日多くの人々に利用されています。また今年は「草の根・人間の安全保障無償資金協力」にて,ペルー日系人協会が日本人ペルー移住百周年を記念して建設した病院に,手術用医療機材を整備します。この病院はペルー日系人協会が経営しておりますが,ペルー国民は誰でも利用可能であり,ペルーの医療サービス向上に大きく貢献しております。

  • (写真2)日秘文化会館大ホール
    日秘文化会館大ホール
  • (写真3)ペルー日系人協会百周年記念病院
    ペルー日系人協会百周年記念病院

日秘文化会館には,移住史料館や日本食レストランもあります。ペルーにお越しの際はぜひ日秘文化会館にお立ち寄りいただき,ペルー日系社会のこれまでの歩み,文化や活動と共に,日本の援助がペルーの日系協会やペルー社会に貢献している様子をご覧下さい。

パレスチナ難民母子手帳アプリ

原稿執筆:UNRWAアンマン本部保健局 北村尭子 公衆衛生・疫学専門官

国連パレスチナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East, UNRWA)は,ガザ,ヨルダン川西岸地区,ヨルダン,シリア,レバノンに居住する約580万人のパレスチナ難民に対し,保健,教育,福祉などの支援を提供しています。3万人の職員のうち99%以上がパレスチナ難民で構成されている点や,70年近く同じ集団を幅広いサービスで支援している点で,国連の中でもユニークな存在の組織です。

  • (写真1)57,000人が暮らすアンマンのパレスチナ難民キャンプ,ワヒダットキャンプの様子
    57,000人が暮らすアンマンのパレスチナ難民キャンプ,
    ワヒダットキャンプ
  • (写真2)UNRWAの診療所で母子保健サービスを受けるパレスチナ難民の女性
    UNRWAの診療所で母子保健サービスを受ける
    パレスチナ難民の女性
  • (写真3)UNRWAの小学校の子どもたち,理科の授業中
    UNRWAの小学校の子どもたち,理科の授業中

私が勤務する保健局では,上記5つの地域における143箇所の診療所を通して,パレスチナ難民へ無償のプライマリーヘルスケアを提供しています。母子保健の分野では,JICAの協力の下,アラビア語で作成された母子健康手帳を2008年より導入し,年間約10万人の全ての妊婦に配布,母子の健康管理を行ってきました。2016年からはJICAと共に母子健康手帳の電子化に取り組み,2017年4月にスマートフォンのアプリケーションとしてヨルダンで配信を開始しました。

  • (写真4)診療所で配布される母子健康手帳
    診療所で配布される母子健康手帳
  • (写真5)新たに導入された母子健康手帳のアプリケーション
    新たに導入された母子健康手帳のアプリケーション

UNRWAの診療所では保健改革の一環として電子カルテ(e-Health)の導入が進んでおり,この母子健康手帳のアプリケーションによりe-Healthの情報をスマートフォンで確認,家族と共有したり,予防接種のリマインダー機能を利用したり,また万一,紙の母子健康手帳が破損・紛失してしまったとしても継続した記録を行うことが可能となりました。スマートフォンの普及率は,パレスチナ難民においても年々高まっています。現在診療所の医療スタッフが,本アプリケーションについて積極的な情報提供を行い,難民の母親たちに活用を勧めています。

  • (写真6)アプリケーションについて看護師の説明を受けるお母さんたちの様子
    アプリケーションについて看護師の説明を受けるお母さんたち
  • (写真7)看護師の説明後,早速アプリケーションをダウンロードする様子
    看護師の説明後,早速アプリケーションをダウンロード

パレスチナ難民は「1946年6月から1948年5月にパレスチナに住んでおり,1948年の第一次中東戦争(イスラエル・アラブ戦争)の結果,住居村及び生活手段を失った人」と定義されており,世界最大規模の難民集団です。キャンプを出て生計を立てている人もいますが,貧困も未だ多く存在し,健康面では母子保健に加え,生活習慣病,メンタルヘルス,高齢化に伴う問題も増加しています。

いつの日か故郷に戻ることを願う彼らにとって,子どもたちの健康を守ることは大きな希望となっています。パレスチナ難民における母子健康手帳,アプリケーション活用の更なる推進はもちろん,私自身としては,今後このようなサービスや知見を,紛争や災害に苦しむ他の避難民,特に継続して同じ医療機関を受診することができない人々,帰還しても医療記録が残っていない可能性がある人々などのために,どのように役立てることができるかについても,考えていくべき長期的な課題の一つであると感じています。

  • (写真8)パレスチナ難民の子どもたち
    パレスチナ難民の子どもたち
  • (写真9)パレスチナ難民の子どもたち(写真10)パレスチナ難民の子どもたち
    パレスチナ難民の子どもたち