ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第328号
ODAメールマガジン第328号は,トルコ共和国からの「世界人道サミット開催報告」とシリーズ「中東の難民問題」第10弾として「トルコ南東部の支援の現場から」,シリーズ「TICAD VI」第5弾としてエジプト・アラブ共和国から「エジプトにおける日本式教育の導入」と国際協力局政策課から「グローバルフェスタJAPAN2016 出展者募集中!」をお届けします。
世界人道サミット開催報告
原稿執筆:在トルコ日本国大使館 中西 良介 三等書記官
5月23日~24日,トルコ・イスタンブールにおいて国連主催により世界人道サミットが開催されました。
同サミットは,国連加盟国のみならず人道支援に携わる多様な関係者も交えて効率的・効果的な人道支援の実現に向けた取組について議論し,具体的な行動を示していくという初の試みでもありました。
55か国の首脳級を含む173か国から9,000名以上が参加した同サミットには,日本からは福田康夫元総理大臣が政府代表として出席しました。サミットにおいて福田元総理大臣は,中東地域安定化のための包括的支援として,中東地域向けに今後3年間で約2万人の人材育成を含む総額約60億ドルの支援を実施する旨表明しました。
具体的には,難民・避難民に対する人道支援や帰還・定着支援,難民を受け入れている周辺国への経済開発・社会安定化支援,今後3年間での約2万人の中東各国の人材育成,シリア人留学生の受入れ拡大,国際協力機構(JICA)専門家等からなる「シリア難民及びホストコミュニティ支援チーム(J-TRaC)」の派遣などです。
また,日本が国際的にも指導力を発揮してきたテーマである「人道と開発の連携強化」について,国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連開発計画(UNDP)等と協力して開催したサイドイベントをはじめ,国際保健,ジェンダー,防災等についても,ハイレベル分科会等において積極的に発信を行いました。
日本として難民・避難民問題の根本原因である貧困や格差という構造的な問題に対処するためには,人道支援と同時に難民・避難民への教育,職業訓練や難民受入れコミュニティのインフラ整備を含む開発支援の実施を重視する点を訴えました。
今回のサミットは,幅広い人道支援関係者による議論の結果が議長総括としてとりまとめられたほか,参加者が自主的なコミットメントを発表するなど,人道状況の改善に向けた取組を加速させていかなければならないということで共通の認識を高めることができた好機となりました。
サミットの開催を「終わり」としてではなく,人道支援への新たな機運の「始まり」として各国及びすべての関係者が更に取組みを重ねていくことが求められています。
トルコ南東部の支援の現場から
原稿執筆:特定非営利活動法人 難民を助ける会 宮越 清美 トルコ駐在員
2011年から続くシリアの内戦により,483万人を超えるシリア人が国境を越えて周辺諸国への避難を余儀なくされています。トルコも多くのシリア人を受け入れており,その数は273万人(2016年7月現在)に達しています。
難民を助ける会(AAR)では,2012年9月にトルコ南部ハタイ県に調査に入り,10月より物資支援を開始しました。また,2013年以降は,ジャパン・プラットフォームを通じて日本政府の資金援助を受け,ハタイ県やキリス県で食料・生活必需品の配付や,障がい者支援,教育の場を失った子どもたちへの教育支援などを行いました。
2014年10月からは,イラク・シリア地域でイスラム国家の樹立を一方的に宣言した武装組織「ISIL」の攻撃を逃れて急増した難民のため,新たに緊急支援チームをシャンルウルファ県スルチュ郡に派遣し,食料や生活必需品の配付を行いました。
これらの支援のほかに2014年7月からは,祖国に戻る見通しが立たず,トルコに定住しつつあるシリア難民のために,シャンルウルファ県シャンルウルファ市において,コミュニティセンターを運営しています。
2016年6月現在,シャンルウルファ県には40万人以上ものシリア難民が暮らしており,そのうち約30万人はキャンプ外のコミュニティで生活しています。難民の流入によって,トルコ人は物価の高騰や失業率の増加に直面し,ストレスを募らせている人も少なくありません。さらに言語や文化の違いがトルコ人とシリア人の関係を悪化させており,両者の間では日常的に争いが起きています。
コミュニティセンターでは,シリア人とトルコ人が交流し相互理解を深め,コミュニティの融和が促進されるよう,料理講座や美容講座,絵画講座等様々なイベントを実施しています。
そのほか,コミュニティセンターではトルコでの生活に欠かせないトルコ語や,就労に役立つ英語やICTなどの講座を提供したり,就学期にも関わらず内戦によってシリア国内で学校に通えなかったり,避難先でのトルコでも学校が定員オーバーの状態で待機児童となってしまっているシリア人の子どもたちにアラビア語や算数を教えたりしています。
また,生計者のいない家庭や障がい者など,より支援の必要性が高く,かつ行政やほかの機関から必要な支援を受けられない難民を対象に,個別に支援を行っています。特に障がいがある難民には,診断結果をもとに,車いす,歩行器などの補助具や,リハビリテーションの提供などの包括的な支援を行ってきました。今後は人員を増やして,より多くの障がい者に支援を届けるとともに,発達障がいや精神障がいがある方に対しても,必要な支援を実施していきます。
エジプトにおける日本式教育の導入
原稿執筆:在エジプト日本国大使館 星野 有希枝 一等書記官
本年2月28日から3月2日にかけて,エルシーシ大統領が日本を訪問しました。大統領の訪日では,日エジプト間における関係強化にとって政治・経済面等多くの成果が上げられましたが,中でも教育・人材育成の分野での協力強化は最重要事項の一つとして扱われ,両首脳間の合意文書として「エジプト・日本教育パートナーシップ(EJEP)」が発表されました。
エジプトでは,2013年の政変後,様々な経済・社会改革の努力が行われており,中でも教育は国づくりの基礎であるとの認識のもと,教育改革,若者の能力強化が極めて重視されています。こうした状況の中,2015年1月の安倍総理のエジプト訪問時には,エルシーシ大統領から日本式教育を通じて教育分野での支援を求める要請がなされました。
エジプトでの教育分野での協力として,エジプト日本科学技術大学(E-JUST)プロジェクトが良く知られています。これは,日本の工学教育の特徴を取り入れた大学院大学をエジプトに設置し運営するもので,日本からの支援は,主に専門家や大学教員派遣,教育・研究に必要な機器の供与に充てられています。
EJEPでは,この他に,日エジプト間で就学前から基礎教育レベル,技術教育及び高等教育までを包括的に捉えた協力を推進していくことを謳っています。具体的には,今後5年間で少なくとも2,500人のエジプト人を日本に留学や研修のために派遣すること,エジプト政府から,道徳心や規律,協調性をエジプトの若者の間に醸成するような学校活動を発展させることに強い関心が示されていることから,特に,日本の教育課程の特徴的な要素である特別活動や,体育・音楽といった科目の推進を図ることが明記されました。
これまでに,カイロとギザの2校をプレパイロット校に指定して,日本の特別活動にあたる活動をいくつか試験的に実施したところ,教員・生徒ばかりでなく保護者からも前向きな反応が得られています。当面は,これら2校を含む12校をモデル校として協力を実施し,今後更に100校,200校と拡大していく方向で,日本式教育の導入拡大を図っていく方針です。
また教員・指導者が日本またはエジプトで適切な研修機会を得ること,学校における運営や教育活動の改善を図るためのエジプト政府関係当局の取組みを支援すること,技術教育についてエジプト政府の取組を,エジプト駐在日本企業を中心とした産業界と連携しつつ支援すること,E-JUSTの今後の発展・強化のため引続き両国が協力すること,これらの実施を確実にするためのメカニズムを構築すること等も盛り込まれています。
現在,EJEPの本格的実施のため,日・エジプト双方の参加を得た運営委員会が立ち上げられ,協力を具体化するための作業が全力で進められており,また新規プロジェクトも順次開始される見込みです。人づくりは国づくり。教育分野における日エジプト間の協力の強化は,両国の平和と繁栄につながるものと確信しています。
グローバルフェスタJAPAN2016 出展者募集中!
原稿執筆:国際協力局政策課広報班
国内最大級の国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN2016」を10月1日(土曜日),2日(日曜日)に東京・お台場のシンボルプロムナード公園で開催いたします(外務省,国際協力機構(JICA),国際協力NGOセンター(JANIC)共催)。
今回で26年目を迎えるグローバルフェスタは,「for the First Step 新しい目標に向かって」をテーマに,昨年度からの新しい会場であるお台場のシンボルプロムナード公園で,より一層盛り上がって行きたいと思います!
現在出展者の募集を行っておりますので,皆様奮ってお申し込み下さい!
(申込期限8月1日(月曜日))
【申込み方法】
公式ホームページからお申込みください。
出展募集期間:7月14日(木曜日)~8月1日(月曜日)
出展者説明会:8月9日(火曜日)
【出展に係るお問合せ先】
グローバルフェスタJAPAN2016実行委員会事務局
〒107-0052 東京都港区赤坂2-18-14 赤坂STビル4階
TEL:03-3505-2235(電話でのお問合せ 平日10時00分~17時00分)
FAX:03-3585-6671 E-MAIL:info@gfjapan2016.jp