ODA(政府開発援助)

2016年2月24日発行
平成28年2月26日

ODAメールマガジン第318号は,ジョージアからの「「神様のとっておきの土地」ジョージア」と「国内避難民(IDPs)への支援」をお届けします。

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「神様のとっておきの土地」ジョージア

原稿執筆:在ジョージア日本国大使館 長谷川 朋範 参事官

こんな伝説があります。
神様が土地を各民族に分け与えた時,ジョージア人は宴会をしていて,土地をもらいそびれました。「私たちは神様に感謝して飲んでいたのです」と訴えたジョージア人を神様は賞賛し,自分のためにとっておいた最良の土地を分けてあげたということです。

たしかにジョージアは比較的温暖で,農業も盛んであり,理想的な天地に見えます。ワイン発祥の地はジョージアとする説が有力で,大きな甕(かめ)を地中に埋めて葡萄を発酵させる製法は8千年の歴史を持つとされています。この豊かな土地で育まれたジョージア・ワインは,日本のスーパーでも見かけるようになりました。

  • ジョージア:教会のある風景
  • 首都トビリシ

このほか,ジョージアといえば,歴史あるキリスト教会等の世界遺産,独自の文字・言語,多重歌唱,民族舞踊などが有名です。格闘技が盛んで,相撲の黒海関の出身国としても知られています。昨年4月,日本政府は同国の呼称を「グルジア」から「ジョージア」に改めました。

  • ジョージア伝統の甕
  • 甕からワインを汲み出す

1991年のソ連からの独立後,多少の混乱はありましたが,ジョージアはEU及びNATO加盟を目指して着実に歩みを進めています。しかし,社会主義時代からの制度,疲弊したインフラを整えるのは難事業で,今も国際社会からの支援を必要としています。

  • 東西ハイウェイ一部開通式典
  • 走り初め

我が国はこの改革努力を支援すべく,経済インフラの整備,医療機器の供与,給水設備や教育施設の改修など様々な分野で開発協力を実施しています。このうち,交通の大動脈である東西ハイウェイの改修整備は,これまで不便だった道路が快適に利用できるようになったと一般市民からも感謝の声が寄せられています。また,我が国は研修や専門家派遣を通じた技術協力を多く実施しており,例えば,農業と観光を組み合わせた魅力作りのための取組を行っています。

この「とっておきの土地」が現代においても輝きを放つよう,私たちはこれからもこの国の人々と共に歩んでいきます。

国内避難民(IDPs)への支援

原稿執筆:在ジョージア日本国大使館 津田 幸枝 外部委嘱員

ジョージア国内のアブハジア自治共和国とツヒンヴァリ地域(「南オセチア」とも呼称される)(注:両地域を合わせるとジョージア領土の約20%)については,ソ連邦崩壊後,分離・独立問題を巡って何度か紛争が起こりました。特に2008年のツヒンヴァリ地域に関するジョージア・ロシア間の紛争は記憶に新しいところです。その後,ロシアはこの2つの地域を一方的に独立国家として承認し(注:日本を含め世界の殆どの国は不承認),ロシア軍および国境警備隊が駐留しています。これらの紛争により故郷である両地域を追われた国内避難民(IDPs=Internally Displaced Persons)がジョージア国内には40万人近くいます。

日本はジョージアに対してさまざまな開発援助を行っていますが,その柱の1つは私が外部委嘱員として担当している草の根・人間の安全保障無償資金協力で,IDPsの方々への支援もその内の重要な分野となっています。IDPsの大半は不慣れな土地で定職を見つけるのが難しく,不安定な生活が続くことも多い状況です。

ジョージア北西部のアブハジア自治共和国との行政境界線(注:ジョージア国内の県境に相当する同境界線の「国境化」が近年強行されており,ジョージア側および日本を含む国際社会はこれを厳しく批判)に接するズグディディ地区にも多くのIDPsが居住しており,当大使館がこの地で実施している「温室栽培用グリーンハウス整備計画」プロジェクトはIDPs支援の好例の1つといえます。

  • 「国境化」の動きに応じてジョージア側が
    ズグディディ地区に設置したチェック・ポイント付近

このプロジェクトはグリーンハウスを整備し農業生産の向上を図ることが目的で,私達は関連のNGOやアブハジア自治共和国政府(注:ジョージア政府が認める亡命政府)の農業・資源・環境局と協力しつつ,「IDPsを対象とした所得創出プログラム」への協力の一環としても取り組んでいます。

  • NGOとアブハジア自治共和国政府の代表者
  • 完成しつつあるグリーンハウス

この他にも当大使館では,当国の北中央部に位置するツヒンヴァリ地域に近接する村で,紛争の影響を受けた家族(IDPsを含む)の子供達のための教育施設の改修案件や,社会的弱者のための医療センターの整備案件などを実施してきています。

こうした援助活動を通じてIDPsの方々の安定した生活の確保や社会・経済状況の改善に少しでも貢献できればと心から願いつつ,日々の業務に携わっています。

  • 草の根支援で改修された
    社会教育施設
  • 社会教育施設から1キロメートル先には
    ツヒンヴァリが見える
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