ODA(政府開発援助)

2016年1月27日発行
平成28年1月28日

ODAメールマガジン第316号は,ジブチ共和国からの「「世界一暑い国」ジブチ」「地域の海上安全確保に向けて:日本とジブチ沿岸警備隊」をお届けします。

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「世界一暑い国」ジブチ

原稿執筆:在ジブチ日本国大使館 坪根 耕平 三等書記官

皆さんはジブチと聞いてすぐに地図上で場所がわかりますでしょうか。
日本の友人に聞いてもなかなか答えられる人はいません。

東アフリカに位置し,「世界一熱い国」とも言われるジブチでは日本の冬にあたる季節でも日中の気温が30度を超え,7~8月は40度を超える日(ときに50度に達することも)が続きます。年間降水量も極端に少ないことから国内には乾燥した土地が広がっており,町を離れたところでは原始的な風景が見られます。

  • アフリカ大地溝帯上の壮大な景色
  • 世界一塩分濃度が高いとされるアッサル湖

四国の1.3倍ほどの面積しかなく,人口も90万人に満たないジブチですが,紅海に通じるアデン湾に面し,ヨーロッパ,中東,アフリカを結ぶ海上交通の要路に位置しています。そのため,湾港業や関連するサービス業が国の経済の大部分を担っていますが,反面その厳しい気候のために農業を発展させることが難しく,食糧自給率はわずか3%とも言われており,スーパーで並ぶ野菜は輸入品ばかりと特殊な経済構造を抱えています。

  • 首都ジブチ市の様子
  • ジブチ市に隣接するドラレ・コンテナ港

そんなジブチでは実は日本の名前がよく知られています。理由の一つは2009年からソマリア沖の海賊対処活動のためにジブチに派遣されている自衛隊の存在でしょう。2011年には海外で初となる活動拠点が設けられ,隊員による付近の学校訪問,文化交流が行われたこともあって,町中を歩いていれば日本語で声をかけられることも。政府関係者は拠点開設以降一度も事故やトラブルを起こしていない自衛隊員の振る舞いを模範的と賞賛しています。

さらに1982年以来,日本が実施している開発協力によっても親日感情は深まっています。食糧援助に始まった日本の協力は学校建設や給水施設の建設,港や道路といったインフラ整備など多岐にわたり,研修によって学校教員や保健師の人材育成も行われています。20年近く前に日本の支援で建設されたフクザワ(現地の言葉で「共に開く」という意味があります)中学校は日本の協力の象徴ともなっています。

最近では衛生状況改善のためにゴミ収集車が供与されました。首都のジブチ市では日本の国旗が描かれたゴミ収集車が「夕焼け小焼け」のメロディーを流しながら走る光景をよく見かけます。音楽を聞いた住民が家庭ゴミを持ち出す仕組みになっており,政府関係者や住民の方からもゴミ収集車のおかげで町がきれいになったとの声が届けられます。こうした住民に寄り添った支援によって日本の名前が市民レベルに行き届いています。

厳しい気候の中でも住民と同じ環境に身を置き,様々な分野で活動する青年海外協力隊員の存在も日本を身近に感じてもらうのに一役買っています。なかなか日本では名前の聞くことが少ないジブチですが,遠く離れたこの国では親日感情が形成されているのです。

  • 市内を巡回するゴミ収集車
    (写真提供:JICAジブチ支所)
  • 参議院ODA調査団の訪問を歓迎する
    フクザワ中学校の生徒たち

地域の海上安全確保に向けて:日本とジブチ沿岸警備隊

原稿執筆:在ジブチ日本国大使館 坪根 耕平 三等書記官

毎年2万隻近い船舶が航行するアデン湾に面するジブチにとって,周辺海域の安全確保は重要な課題です。2008年頃からアデン湾・ソマリア沖における海賊問題が深刻化し始め,ジブチをはじめとした周辺国にとって大きな脅威となりました。国際社会も海賊対策の必要性を認識し,ジブチは海賊対処活動の拠点として注目を集め始めます。

ジブチに駐留している外国軍を含めた約30か国が軍艦や軍用機を周辺海域に派遣して海賊対策にあたる中,日本も2009年より自衛隊を派遣し,哨戒機,護衛艦を使って民間船舶の護衛に従事しています。年間多くの関連船舶がアデン湾を航行する日本にとって,同海域の安全確保は非常に重要な意味を持っています。

こうした背景もあって,ジブチ自身の海上安全確保に向けた取組を後押しすることは当地における支援の重点分野の一つとなっています。同分野での協力は主にジブチ沿岸警備隊への支援を通じて実施されています。

沿岸警備隊は2010年の大統領令によって海軍から分離する形で文民組織として設立されました。日本の海上保安庁のようにジブチ沿岸の安全確保を任務とし,ジブチの安定維持のため重要な役割を担っています。

沿岸警備隊設立以来,日本は隊員への研修実施や通信機器,救命胴衣といった機材供与を行い,能力向上を支えています。現在も日本人専門家が沿岸警備隊に派遣され,出動体制や通信体制改善のため様々な助言を行っているほか,海上保安庁職員による隊員への研修も実施されています。

  • 海上保安庁による研修修了式典において
    隊員に修了証を手交する新井大使
  • 修了式典集合写真

昨年の12月には日本によって供与された巡視艇2隻の引渡式典が行われました。20メートル級の高速巡視艇は沿岸警備隊の機動力強化に直結し,ジブチ沿岸の安全確保に貢献することが期待されています。

式典には首相をはじめ,多くの大臣も出席し,その様子は地元の新聞でも大きく取り上げられました。それまでもJICAがジブチやモロッコで実施した沿岸警備隊員への研修の様子が報道されており,そのたびに「間もなく2隻の巡視艇がジブチに到着する」と書かれ,日本の支援への期待の高さがうかがえました。

  • 供与された巡視艇
    (写真提供:墨田川造船(株))
  • 引渡式典でスピーチを行う新井大使

最近では対岸のイエメン情勢の混乱を受け,同国から海路でジブチに流入する避難民も増加しています。海上捜索や救命活動の必要性は増し,避難民に紛れて過激派分子が流入する危険も懸念される中,沿岸警備隊の役割はますます重要になっています。

海上交通の要衝に位置するジブチにとって,海の安全確保は国の安定に直接つながります。ジブチ沿岸の安全を担う沿岸警備隊への支援は,ジブチにとっても貿易立国である日本にとっても意義が大きいと言えます。

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