ODA(政府開発援助)

2015年8月26日発行
平成27年8月28日

古くて新しい国ウズベキスタンの熱い期待 信頼のパートナーとして国造りを支える日本

原稿執筆:在ウズベキスタン日本国大使館 向井 晋一 一等書記官

中央アジアの中心に位置するウズベキスタン。
ソ連から独立して24年という若い国ですが,緑豊かなオアシス地帯であるこの土地は,東西の文明を結ぶシルクロードの要衝として古代から栄え,ギリシャ人,ペルシア人,モンゴル人,ロシア人など,さまざまな民族が去来しました。その中でも,モンゴル貴族出身のティムール(1336~1405)が打ち立てたティムール朝は,現在のウズベキスタンの地を中心に,中近東からインドにまでまたがる大帝国を建設し,その都サマルカンドは,ペルシア文明を中央アジアに取り入れたチュルク(トルコ)・イスラム文化の中心として繁栄し,現在に至るまでその壮麗な姿を残しています。

ソ連時代,ウズベク共和国は,首都タシケントに中央アジア初の地下鉄が建設されるなど,中央アジアの中心として整備が進められてきました。しかし,ソ連崩壊に伴って1991年に急に独立国となると,新国家建設には多くの課題が突きつけられることになりました。

  • ソ連時代の面影を残す首都タシケントの街並

独立当時から一貫して指導者を務めるカリモフ大統領は,ウズベキスタンが中央アジアという複雑な地域に位置することなども踏まえ,急速な経済改革による混乱よりも政治的・社会的な安定を優先し,経済の再開発と自由化は段階的に進めていくという「漸進主義(Gradualism)」のアプローチを採用しました。その結果,改革の速度はゆっくりとしたものながら,近年では毎年7%前後という安定した経済成長を確保し,自動車やコンピュータ,家電といった多くの産品を国産化するなど,着実な経済開発が進められています。
あくまでも国が主導する経済であるため,外国企業の進出には依然としてさまざまな課題も残されていますが,最近では,ウズベキスタンが実施する大規模なビジネス・プロジェクトを日本企業が受注する動きなどが徐々に広がっており,経済改革の進展とあいまって,この国が持っている潜在的な可能性に期待が膨らんでいるところです。

  • 各民族をまとめ,祖国ウズベキスタンへの忠誠を促すスローガンが至るところに見られる

日本は,中央アジアの大国であり要衝であるウズベキスタンの持続的発展が地域全体の安定に重要であるという観点から,独立以降のウズベキスタンの改革努力を一貫して支援してきました。具体的には,「経済成長の促進と格差の是正に向けた支援」を大目標とし,その下に「経済インフラの更新・整備(運輸・エネルギー)」,「市場経済化の促進と経済・産業振興のための人材育成・制度構築支援」,「社会セクターの再構築支援(農業改革・地域開発,保健医療)」という3つの重点分野を設定し,さまざまなプロジェクトを実施してきました。最近では,急速な経済成長の中で,大規模インフラを整備するための資金のニーズが高まっており,有償資金協力(円借款)の枠組みで,ナボイ火力発電所近代化計画(2013年,約349億円),電力セクター・プロジェクト・ローン(2014年,約868億円),アムブハラ灌漑施設改修計画(2015年,約119億円)といった大型の案件が決定されています。

日本による独立後一貫した支援は,現地のメディアでもよく取り上げられており,カリモフ大統領以下ウズベキスタン政府の要人はもとより,一般国民にも広く知られ,また感謝されるところとなっています。ウズベキスタンは,戦後この地に抑留された日本人の方々の真摯な働きぶりがウズベク市民に感銘を与えたという歴史もあり,元々日本に対する親近感が強い国ですが,独立後の経済協力の成果によって,地理的には離れていても,日本は間違いなくウズベキスタンのパートナーだという期待と信頼が定着しています。

  • 現在のウズベキスタンが歴史上最大の英雄としているティムールの像
  • イスラム教国と思われがちだが宗教は自由で
    首都の中心には大きなロシア正教会もある

日本の経済成長の経験を学びたい:ウズベキスタン若手行政官たちの挑戦

原稿執筆:JICAウズベキスタン事務所 片倉 葉子 企画調査員

8月19日(水曜日),残暑が厳しいウズベキスタンの首都タシケントに,日本への出発を控えた15人の若者が集まりました。これから体験する日本での生活への期待を口々に語る彼らは,日本政府がウズベキスタンで続けている無償資金協力「人材育成奨学計画(Japanese Grant Aid for Human Resource Development Scholarship: JDS)」によって,日本の大学に留学するウズベキスタンの若手行政官たちです。

JDSは,開発途上国の経済,財政,司法,農業,インフラ開発といった分野の政策や基礎研究を担う若い行政官などの育成を支援するため,日本の大学院修士課程での2年間の留学を支援する事業です。ウズベキスタンでは2000年渡日の第1期生以降,今回で第16期生を送り出すことになりました。これまでに265人の若者が日本の各大学に留学し,ウズベキスタンの開発のために必要な知識と経験を学んでいます。現在は,毎年15人の若手行政官たちが選抜されています。

  • 日本への出発を控えた第16期生の留学生と帰国したOBたち

シルクロードのオアシスとして,古代からの豊かな歴史を誇るこの地域ですが,国家としてのウズベキスタンは,1991年にソ連から独立した若い国です。ソ連時代,ウズベキスタンは中央アジアの中心として開発が進められましたが,実際には,ソ連全体の分担体制の中で綿花栽培など一部の産業の中心であったに過ぎず,ソ連崩壊によってさまざまな課題に直面することになりました。
中でも,人材育成はもっとも重要な課題のひとつです。
独立以降一貫してその地位にあるカリモフ大統領は,混乱を避けるために市場経済化への道は急がずに進むという方針をとり,経済の自由化はこれまで段階的に行われてきましたが,最近では,世界経済や地域情勢の急速な変化を受け,改革のピッチが速まっています。また,産業の多角化を進め,綿花や一部の天然資源に依存した経済からの転換を図ることも課題です。そうした中,カリモフ大統領をはじめウズベキスタン政府の要人やウズベキスタンの人たちは,戦後復興と高度経済成長を遂げた奇跡の国として,日本に熱い視線を向けているのです。

この事業によって日本で学んだ多くの留学生たちは現在,ウズベキスタンの行政や研究の最前線で活躍し,独立24年目を迎えた祖国の発展のために日々奮闘しています。8月下旬,期待を胸にはるか日本に出発する15人の若者たちが,2年後にその一員に加わることが期待されます。

  • 2年間の思い出と将来への期待を胸に無事修了
  • 勉強の傍ら日本の伝統文化も体験
  • 日本での各国留学生との交流も貴重な財産に

外務省ホームページ「ODAちょっといい話」の更新

原稿執筆:国際協力局政策課広報班

外務省ホームページ「ODAちょっといい話」に新たにアジア・アフリカ・中南米・欧州地域の新案件を掲載しました。開発協力とは,具体的にどういうことをやっているの?どういう目的で行っているの?日本にもメリットがあるの?などなど。
昨年で60周年を迎えた日本の開発協力がどのように各国に役立っているのか,是非,具体的な案件からその真相に触れてみてください。

今後も引き続き,いろいろな地域の開発協力案件をアップ予定です。世界中で活躍する日本の「人間力・技術力」にご注目ください!

  • (画像)「ODAちょっといい話」イメージ
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