ODA(政府開発援助)
ODAメールマガジン第304号
ODAメールマガジン第304号は,コートジボワール共和国からの「次なる「イボワールの奇跡」へ向けて コートジボワール」と「日本とコートジボワールを結ぶ友好の架け橋を 経済都市・アビジャンのインフラ整備支援」をお届けします。
次なる「イボワールの奇跡」へ向けて コートジボワール
原稿執筆:在コートジボワール日本国大使館 大曲 英男 一等書記官
【日本とコートジボワール】
コートジボワールは,西アフリカに位置する人口約21百万人の国です。
昨年6月のワールドカップの対戦国として記憶されている方も多いかと思われます。試合では日本は敗れ,日本にとっては残念な結果となりましたが,サッカー以外の面でも両国に関する特集が組まれるなど,相互理解が深まったという点において大変有意義な試合となりました。
- 日本対コートジボワール戦パブリックビューイング(於:アビジャン)
日本ではチョコレートの原料であるカカオの原産国というと,隣国のガーナをイメージされる方が多いのではないでしょうか。実は,世界一の生産量を誇るのがコートジボワールです。同国のカカオは,原料として主にヨーロッパに輸出されているため,日本ではベルギー等で作られた少し高価なチョコレートとして口にされているはずです。
- カカオの実と種
【イボワール(象牙)の奇跡】
同国は,1960年に仏からの独立後,カカオやコーヒー等の生産・輸出拡大を推進しました。その結果,1960年代から1970年代にかけて年平均8%の経済成長を遂げ,その発展は「イボワール(象牙)の奇跡」と呼ばれています。その当時建設された高層ビル,道路等のインフラは今なお現役で使用されています。
- 今なお使用される「イボワールの奇跡」時代のインフラ
【成長から混乱へ】
しかし,カリスマ的な初代大統領の死後,政治が不安定化するとともにクーデター,2度の内戦が勃発し,同国の社会・経済に大きな影響を与えました。さらに2010年の大統領選挙後には,前大統領と現大統領が大統領就任を宣誓したことで二重政府状態に陥り混迷を極めました。2011年4月に政治は正常化しましたが,内戦等の影響により同国経済は冷え込み,国民の間にも「現大統領派」「前大統領派」という溝ができてしまいました。
- 内戦時に学校に打ち込まれた銃弾痕
(悲惨な内戦を繰り返さないとの思いを込めて保存しています)
【そして再成長期へ】
その後,ウヲタラ大統領のリーダーシップの下,大きなインフラ投資を基軸に経済は再び成長期に入り,2012年から14年にかけては年平均で9%程度の高い成長を記録。社会も安定してきています。
【対コートジボワール支援】
我が国は,内戦で不安定化した同国に対して,安全で安定した社会の回復,経済成長の促進を重点分野とした支援を行っています。
(1)安全で安定した社会の回復
警察や司法機関の人材育成,組織能力強化のため,研修の実施や専門家の派遣を行っています。また,学校改修等の基礎的インフラ整備のプロジェクトを通じ,内戦の影響により分断された住民間の融和を進めるとともに,行政機能の改善も支援しています。
- 社会融和を目的として住民も建設に参画する学校
(2)経済成長の促進
(ア)国産米の振興,湖や川での魚の養殖,農産物機械加工等の開発ポテンシャルが高い産業の振興,(イ)インフラ整備の基礎となる測量技術の移転を支援しています。
また,今年から実施する「日本・コートジボワール友好交差点改善計画」により,同国及び域内物流の改善を通じた経済成長促進を図り,次なる「イボワールの奇跡」へ向けて確かに歩み出した同国を支援していきます。
- 「国産米振興プロジェクト」における耕うん機運転実習
日本とコートジボワールを結ぶ友好の架け橋を 経済都市・アビジャンのインフラ整備支援
原稿執筆:JICAコートジボワール事務所 小川 穣 所員
【内戦によるアビジャンの都市機能の低下】
かつて「アフリカのパリ」と呼ばれ,繁栄を謳歌したコートジボワール最大の都市アビジャンですが,1990年代後半以降,政治危機を発端とする内戦によって,国内のインフラ整備は停滞しました。その一方で,内戦の影響を受けた国内移民の増加等により,1998年に約280万人であったアビジャンの人口は,2014年には約470万人へと大きく増加しました。この結果,アビジャンの都市機能は著しく低下し,人々の日々の生活に様々な負の影響が生じています。
- アビジャン市内の交通渋滞の様子
【アビジャンの都市計画の策定支援】
日本政府は,内戦終結後の2011年から同国に対する支援を本格的に再開し,その一環として「大アビジャン圏都市整備計画策定プロジェクト」によりアビジャンの都市交通の機能回復に向けた都市交通マスタープランを策定しました。
本プランにおいて緊急に対応する必要があると特定されたのが「日本・コートジボワール友好交差点」です。
- 日本人専門家とカウンターパート
- 地域セミナーの様子
【日本とコートジボワールの友好の象徴となる交差点】
本交差点は,アビジャン空港から中心部を結ぶ最重要幹線と,アビジャン港から近隣国に至る国際回廊が交わるところに位置しており,1日に13万台の交通量があります。
このため,朝・夕の通勤時には慢性的な渋滞が発生しており,早期の改善が望まれていました。
- 「日本・コートジボワール友好交差点」の位置
「日本・コートジボワール友好交差点改善計画」は,日本政府が本格的な支援を再開した2011年以降,初めて無償資金協力により供与される象徴的な案件です。各種手続きを経て,本年12月から本格的な工事が開始される予定です。
本計画は,長く続いた内戦を乗り越え,復興に向けた歩みを進める同国と我が国の友好関係を象徴する架け橋となるものと信じています。
- 交換公文署名式(川村駐コートジボワール大使とディビ外務大臣)