ODA(政府開発援助)

ジェンダー

日本の取組

平成28年12月19日

 日本は,2015年2月に決定した「開発協力大綱」において,「男女平等,開発の担い手としての女性の活躍推進等の観点から,女性がさらされやすい脆弱性と女性特有のニーズに配慮しつつ,開発協力のあらゆる段階における女性の参画を促進し,また,女性が公正に開発の恩恵を受けられるよう,一層積極的に取り組む」としています。また,2016年5月のG7伊勢志摩サミットに合わせ,同大綱の分野別開発政策である「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表しました。同時に,2016年から2018年の3年間で,約5,000人の女性行政官等の人材育成及び約5万人の女子生徒への教育支援を実施することを表明しました。また,第3回国際女性会議WAW!(2016年12月)において,安倍総理は,途上国における女性の活躍推進のために,2018年までに総額約30億ドル以上の支援を行う旨表明しました。

 日本政府としては,日本国内で成長の最大の潜在力として「女性の力」を活用していくとともに,「女性の輝く社会」の構築は世界に大きな活力をもたらすとの考えの下,国際社会との協力や途上国支援を強化していきます。

国内での取組

 わが国は,第1回世界女性会議(1975年)で採択された世界行動計画,女子差別撤廃条約(1979年,日本は1985年に締結),北京宣言及び行動綱領(1995年)を含め,女性のエンパワーメントとジェンダー平等の達成を目指す一連の国際的な誓約を支持してきました。国内においては,1999年に男女共同参画社会基本法を施行し,その中で「男女共同参画社会の形成に関する国際的な相互協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講じるよう努める」ことを規定しました。また,男女共同参画基本計画(2000年策定)では,WID(Women in Development: 開発と女性)イニシアティブの推進を規定しました。

 ODAの観点からは,ODA大綱の基本方針(2003年改訂)において「男女共同参画の視点」が取り入れられ,また,ODA中期政策(2005年)において「ジェンダーの視点」が規定されました。これらの方針に基づき,分野別開発政策として 1995年に「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」を策定し,ODAを通じて女性の教育,健康,経済社会活動への参加の3分野を中心として支援してきました。更に,2005年には第4回女性会議から10年を経て,開発途上国の女性を取り巻く状況が変化していること,また,開発プロセスにおけるジェンダー主流化の重要性に対する認識の強まりを受け,2005年3月に「ジェンダーと開発(GAD: Gender and Development)イニシアティブ」を策定・発表し,ODAのあらゆる段階においてジェンダーの視点を盛り込むことの重要性を唱えました。

 2015年2月に決定した「開発協力大綱」においても,「男女平等,開発の担い手としての女性の活躍推進等の観点から,女性がさらされやすい脆弱性と女性特有のニーズに配慮しつつ,開発協力のあらゆる段階における女性の参画を促進し,また,女性が公正に開発の恩恵を受けられるよう,一層積極的に取り組む」と明記しています。同大綱の分野別開発政策である「女性の活躍推進のための開発戦略」においても,女性にやさしいインフラ整備や女子教育支援(科学,テクノロジー,工学,数学(STEM: Science, Technology, Engineering and Math)を含む),防災分野をはじめとする女性の指導的役割への参画推進を重点分野として挙げており,上記を通じた女性の活躍と質の高い成長を目指しています。

外務省の取組

 外務省では,これまで組織内の体制強化と事業へのジェンダー配慮を目指して,ODAにおけるジェンダー支援を強化してきました。具体的には,援助政策においてジェンダー平等の視点を強化するため,2015年9月の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」採択に係る国連サミットに合わせて発表した「平和と健康のための基本方針」及び「平和と成長のための学びの戦略」においてもジェンダーの視点に配慮しています。また,ジェンダー課題を着実に推進するためには,幹部職員を含む職員一人一人がジェンダーの重要性を認識して組織的に対応することが求められます。そのため,在外公館に配置しているODAジェンダー担当官を活用し,ジェンダーの視点に考慮した好事例及び配慮が十分でなかった事例からの教訓等を集め,その情報を共有するなどして「ジェンダー主流化」推進を図っています。

 2013年9月の国連総会一般討論演説では,安倍総理が女性関連施策を大きく取り上げ,その中で,(1)女性の活躍・社会進出推進と女性の能力強化,(2)女性を対象とする保健医療分野の取組強化,(3)平和と安全保障分野における女性の参画と保護,という3つの重点施策分野において,2013年から2015年の3年間で30億ドル超の支援(二国間ODA及び国際機関を通じた支援)を行うことを表明し,着実に実施しました。

 2016年5月のG7伊勢志摩サミットでは,2016年から2018年の3年間で,母子保健,防災,平和構築(警察,人身取引対策),起業等の分野における約5,000人の女性行政官等の人材育成及び女子教育の普及が遅れている地域(アフリカ,南アジア)を中心に学校建設等により約5万人の女子の学習環境を改善することを表明しました。また,2016年12月の第3回国際女性会議WAW!では,「女性の活躍推進のための開発戦略」の下,(1)女性の権利の尊重,(2)能力の発揮,(3)リーダーシップの向上を重点分野として,2016年から2018年までの3年間で総額約30億ドル以上の支援を行う旨表明し,着実に実施しています。

ジェンダー分野における政策方針とコミットメント

開発協力大綱(2015年2月)(抜粋)

I 理念 (2)基本方針
イ 人間の安全の推進
 人間中心のアプローチ観点から,女性の権利を含む基本的人権の促進に積極的に貢献する。
III 実施 (1)実施上の原則
イ 開発協力の適正性確保のため原則
(カ)女性の参画促進
 男女平等,開発の担い手としての女性活躍推進等観点から,女性がさられやすい脆弱性と女性特有のニーズに配慮しつつ,開発協力のあらゆる段階における女性の参画を促進し,また,女性が公正に開発の恩恵を受けられるよう一層積極的に取り組む。

女性の活躍推進のための開発戦略(2016年5月)

G7伊勢志摩サミットに向けた我が国の主な貢献策(2016年5月)

ジェンダー分野における事例

重点分野1 女性と女児の権利の尊重・脆弱な状況の改善

女性にやさしいインフラ

デリー高速輸送システム建設計画/インド

 インドやバングラデシュを始めとする南アジア諸国では,公共の場所での女性に対する嫌がらせや性的被害が深刻な問題となっています。そのため,女性にとって安全で快適な公共交通機関がない場合,学校や勤務先などの選択肢が狭まることになり,女性の社会進出の制約になります。この事業では,「世界一ユーザーフレンドリーな地下鉄」を目指して,女性,高齢者,障害者等の利用に配慮した駅舎(エレベーター,エスカレーター,防犯カメラなど)や客車(女性専用車両用,各車両に非常通報装置を設置)を採用し,駅員や乗務員を対象とした手話訓練も実施しています。

  • 写真(提供):JICA
女子の学習環境改善

ナンプラ州中学校改善計画/モザンビーク共和国

 モザンビークでは,中等教育に進学を希望する初等教育修了者が急増していますが,教室数の不足から生徒が入学できず,学校施設の整備が喫緊の課題となっています。この協力では,中等教育への就学率が低い北部ナンプラ州において,中学校の教室やトイレ棟などの新設と,必要な機材の整備を支援しました。女子生徒にも安全・安心かつ衛生的なトイレ設備を整備することで,より多くの女子生徒が中等教育へ進学することが可能となり,中等教育就学率の向上が期待されます。

  • 写真(提供):JICA
母子保健

第三保健地域母と子のプライマリーヘルスケアプロジェクト/ドミニカ共和国 

 ドミニカ共和国の母子保健指標は,中南米・カリブ地域の平均に比べ劣悪な状況にあります。同国では,出産介助は病院にて,産前・産後健診や新生児ケアは一次医療施設である地域保健ユニット(UNAP)にて行われていますが,それぞれのサービス水準が統一されておらず,施設間の連携も円滑に行われていません。この協力では,第三保健地域を対象にUNAPの妊産婦,新生児ケアの質の向上を支援しています。これにより,第三保健地域における妊産婦および乳幼児死亡数の削減が期待されます。

  • 写真(提供):JICA

重点分野2 女性の能力発揮のための基盤の整備

女性警察官養成

アフガニスタン女性警察官支援/アフガニスタン

 アフガニスタンでは,DVや性暴力,幼児婚,名誉殺人といったジェンダーに基づく暴力が,アフガニスタン女性の人権と安全を脅かす喫緊の取り組み課題となっています。日本政府は,UNDPが管理するアフガニスタン法秩序信託基金(LOFTA)への拠出を通じた同国の警察支援を行ってきました。また,JICAでは,2014年度よりUNDP/LOFTAを通じたトルコでのアフガニスタン女性警察官研修に個別専門家を派遣してきました。2015年度の研修では,中堅女性警察官28名及び新人女性警察官361名が参加しました。2016年度から3年間,「アフガニスタン女性警官のジェンダーに基づく暴力への対応能力向上」に係る本邦研修(技術協力個別案件)が実施される予定です。

  • 写真(提供):JICA
女性工学系教員の育成

アセアン工学系高等教育ネットワーク構築/ASEAN

 アセアン加盟各国では,産業構造と企業活動の高度化が進んでいます。しかし,産業の多角化や環境問題などの各種課題に対応できる,高等教育機関によるグローバルな工学系高度産業人材の育成や研究活動は不十分な状況です。この協力では,アセアン工学系高等教育ネットワークのメンバー大学および本邦支援大学の連携により,女性教員を含む工学系教員の育成促進や高度な研究・教育実施体制の整備を支援しています。

  • 写真(提供):JICA

重点分野3 政治,経済,公共分野への女性の参画とリーダーシップ向上

防災分野における女性のリーダーシップ向上

「ジェンダー・多様性からの災害リスク削減」本邦招へい事業/アジア

 災害が与える影響は,性別,年齢,障害の有無等で異なるため,防災に関する政策・計画等の策定と実施の際には,予防,緊急対応,復旧・復興の各段階においてジェンダーや多様性の視点が重要です。そのためには,女性や多様な人々が活動や意思決定に参画できるよう,機会が確保されることが重要です。この事業では,アジア7か国から,防災を扱う行政官や市民団体の代表を招へいし,災害リスク削減・防災の取組にジェンダー・多様性の視点を入れこむための研修を実施しました。

  • 写真(提供):JICA
女性による小規模ビジネス振興

一村一品アプローチによる小規模ビジネス振興を通じたコミュニティ活性化プロジェクト/キルギス

 キルギスは,中央アジア諸国の中では比較的市場経済化が進んでいます。しかし,生産や流通を共同作業で効率的に行うための農民組織がほとんどないなど,村・コミュニティレベルの地域経済活動は進展していません。この協力では,農業や観光産業のポテンシャルもあるイシククリ州において,「羊毛」と「女性」をキーワードに,古くから女性たちが行ってきたフェルト手工芸に着目し,その組織強化や品質向上を目指しています。現在では,フェルト工芸品のみならず夏から秋にかけては果実を使ったジュースやジャム,冬には蜂蜜やジャーキー,その他ハーブを練りこんだ石鹸など,四季折々の地元原産の素材を加工し,生産しています。その販売先もキルギス国内から日本を含む海外へ広げています。

  • 写真(提供):JICA

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