ODA(政府開発援助)

平成28年3月10日

【日時】2015年4月28日(火曜日)17時15分~18時45分
【場所】外務省 南180会議室

【議題】

  1. 今次意見交換会の議題等の確認
  2. NGO現地報告書に基づく議論、PI及びPEMについて
  3. マスタープランのドラフト初稿
  4. まとめ

【配布資料】

外務省・JICA配布資料:
配布資料1:
第11回意見交換会 議事次第(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料2:
意見交換会参加者名簿(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料3:
第10回意見交換会に向けたNGO側事前質問票(抜粋)へのJICA回答(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料4:
ナカラ回廊地域農業開発(プロサバンナ事業)マスタープラン・ドラフトの初稿の概要(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料5:
【参考訳】ドラフトマスタープラン バージョン0(要約)(PDF)別ウィンドウで開く
NGO配布資料:
配布資料6:
プロサバンナ事業関係者のモザンビーク農民への脅迫に関する資料(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料7:
第10回意見交換会に向けたNGO側事前質問と外務省・JICA側回答(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料8:
プロサバンナに関わる現地状況に関するNGO側資料(パワーポイント)(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料9:
【緊急声明】マスタープラン初稿の開示と対話プロセスに関する抗議と要請(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料10:
ProSAVANA-PD(マスタープラン策定)のコンサルタント契約変更書(PDF)別ウィンドウで開く
配布資料11:
プロサバンナ事業考察 概要と変遷。そしてNGOからの提言(PDF)別ウィンドウで開く
(注)他、第8・9・10回意見交換会議事要旨(NGO案)が回覧された。

【参加者】外務省2名、JICA6名(アフリカ部4名、農村開発部2名)、NGO15名(7団体)

1 はじめに

(1)議題確認、過去の議事要旨や開催モダリティの確認

司会:第10回意見交換会の後、モダリティ等について議論を進めてきた。NGO側から意見交換会の正常化の要請がなされ、双方のやり取りを経て、公開・公式にこの意見交換会を行っていくことで合意。その他のモダリティも整った。過去の議事要旨につき、相互協力して公開に努める。

(2)NGO事前質問へのJICA回答

NGO:第10回の質問表に関して口頭回答はあったが漏れもあり、NGO側でJICAの口頭回答を記入し、漏れと追加項目を明記し、改めて書面回答を要請した(資料7)。資料3はそれに相当するものか。

JICA:すでに多くは回答済みと考え、まだ回答できていないものについて、このような形で回答。

NGO:漏れ等について再度1,2週間内の書面回答を要請。

JICA:期限に関しては、質問内容確認後、回答の仕方も併せて返答。

2 NGOによる現地調査を踏まえた報告書・提言に基づく議論

(1)NGO現地調査に基づく資料11に関する外務省・JICAコメント

  • 「アグリビジネスの大豆生産によって奪われる土地」:本事業によって土地収奪が行われた事例は一件もない。土地収用を伴ういかなる民間投資も対象とせず。マスタープラン(以下MP)ドラフト初稿は、モザンビークの法律や現地事情を踏まえた「責任ある農業投資(RAI)ガイドライン」の整備や農業投資の管理・モニタリングの仕組みの整備等も記載。土地収奪を防止する為にも、早期にMP策定し本事業を進めることが重要。
  • 「政治化するプロサバンナ事業」:本事業を政治問題化させるべきではない。選挙の争点にもならず。政治の話をすると政治問題化を意図していると思われるので、記載しない方が良い。
  • 「未だ残る大規模農業開発という方向性」:大規模農業開発を行う民間投資を対象としていない。
  • 「ブラジル側コンサルタントが投資ファンドを自ら呼びかけている」:FGV(ジェトゥリオ・ヴァルガス財団)はもはや事業に関わっていない。
  • 「官民連携の案件として不透明」:本事業で進出した日本企業はなく、不透明と言われても困る。民間投資自体が否定されるべきではない。1月にAU総会で「AUアジェンダ2063」が採択されたが、アグリビジネス推進によって農産品の輸出・生産性の増大を目指す。UNACも策定に参加した農業セクター開発計画(PEDSA)にも、市場アクセスの普及も目標とされる。
  • 「JICA社会環境配慮ガイドラインの遵守」:本事業は同ガイドラインを遵守している。MP策定では、現時点で大規模な住民移転等を伴う事業を想定しておらず、カテゴリーをBに設定。
  • 「ガバナンスの実態把握と改善」:選挙に国際監視団が多数派遣され、平和裡に終了。ガバナンスに関して問題がない訳ではないが、世界銀行・国際機関・NGOの指標を見ても「アフリカ諸国の平均的な問題」との位置づけ。本事業の透明性については、広報等至らない所があり、現地へ情報発信中。現地から事業を評価・期待する声も増えている。
  • 「小農支援の抜本的見直し」:NGO側の記載にあるようだが、MP初稿においても同様に、小農の主権を認め、農民による作物選択を尊重し、家族農業が主体であることを記載している。我々もモザンビーク政府も同じことを望んでいる。

JICA:外務省と一致。

(2)NGOからの質問とJICA回答

NGO:「小農中心」という一方で、大農への対応は触れられておらず、隠されている感じがある。FGVは撤退との説明だが、ナカラファンドは大農開発と説明されており、その計画が残っている。

JICA:本事業では権利保護制度が整わない限りは、土地収用を伴う民間投資は推奨・支援しない方針。これは三ヵ国の方針として確認され、ホームページで公開している。

NGO:文章では「法制度が整うまではしない」となっている。

JICA:きちんと運用されるという意味も含まれている。

NGO:ニアサ州農業局訪問時、州の農業政策として海外からの農業投資を促進し歓迎すると聞いた。また産業インフラ等の整備を伴う場合、投資が色々な形で入り、それが農地収奪・農村社会の混乱を起こすが、これが現実に生じている。それをどう予防するのか。現地政府方針が農業投資促進である中で、どこまで小農育成の実効的推進ができ、農地収奪防止に効果を発揮できるのか。

3 事業に関する資料・文書の情報公開・共有の課題

NGO:本意見交換会では資料開示を繰り返し要請してきたが、開示されなかった。そのため、情報公開法を使い時間をかけて公文書を入手してきた。手元に「PD詳細計画策定調査報告書(平成25年9月)」、「PEM業務進捗報告書(平成26年6月)」がある。いずれもNGOの現地調査前の作成だが共有されず、JICAからは資料1枚が提供されただけ。これらの報告書があれば、事業の全体像を掴めた。JICA現地担当者に不必要な質問をすることもなく、不十分なまま調査する状況にはならず、有意義な調査の下、より具体的な提言にできた。資料開示は依然課題。今後は積極的に情報開示されたい。

JICA:承知した。

NGO:特にPEMの現地農民に対するきちんとした説明があったのか、という点について、現地調査の際にいくつかの訪問先で農家の不満がかなり出ていた。資料・情報の様々な機会での提示は必要。

4 事業の前提となるモザンビークと対象地の政治社会背景

(1)NGOからの事業の前提となるモザンビークと対象地の政治社会状況の共有

司会:選挙結果を踏まえた現地状況について、本事業を行う上で社会政治的文脈をしっかりと理解することが重要なため、NGO側から背景報告と共有を行う。

NGO:資料8を使って、プロサバンナ事業の前提となる現地の政治社会状況について説明する。

  • スライド2:アフリカの地域社会・政治の把握においては、表面化しない数値として見えない点で油断していると、過日のアルジェリア人質事件のように突発的に見えるが、社会の中で長年蓄積されてきた危機を見逃し、取り返しがつかないことになる。
  • スライド3:「(ガバナンスは)アフリカ内で平均的」とされたが、その比較自体が問題。我々は「モザンビーク」について話しているのであり、この2年半でより危険な国になった。JOCVを派遣するJICAは切実に感じているはず。特に2013年10月からの1年間、各地で戦闘があった。20年間の和平の後、現在「新しい状況」が生じているとの認識の共有が必要。
  • スライド4:安倍首相の訪問前、この武力衝突について集中協議した。最大野党レナモへの国軍の攻撃を許容する論調は中国・インドに限られ、世界ではレナモもゲブーザ政権も問題とされ、各国はモザンビーク政府に非難声明を出している。
  • スライド5:両者は選挙直前に和平合意。レナモ党首デュラカマは近年支持率を下げていたが、衝突後全国で熱狂的な支持を得て、選挙結果にも表れた。第3政党MDMも躍進した。
  • スライド6:選挙は平和裡に行われ世界から「高く評価」と説明されたが、現地では「フレリモはまた『汚れた選挙』に勝利」との評価。国際監視団も選挙不正を多数指摘し、フレリモ政府や警察による暴力行為を非難。不正選挙にもかかわらず、野党が票を伸ばし与党が減らした。
  • スライド7:現地調査の際、日本政府高官はレナモの躍進について理解できず、「NGOが資金援助しているのか」と聞いたり、「ジャーナリストはガバナンスもさほど悪くなく、不正や圧力は強くない」と述べた。日本政府が現地の政治社会状況を本当に理解できているのか疑問。
  • スライド8~10:ゲブーザ政権後の貧富の格差拡大が2010年の首都暴動の背景。不満を抱える民衆を黙らせるための強権政治が進行。しかし、日本政府やJICAの発行物では異なる論調。JICAの日本企業向け「ナカラ回廊トピックス」では、原典の9.5割以上は政府系新聞であり、政府情報に依拠する問題は、現地の政治学者が指摘している通り。
  • スライド11:戦後モザンビークは、平和・民主主義定着の道を歩んでいたが、2009年以降に後退。まさにその時期、日本はプロサバンナも含めたナカラ回廊開発に関与を深めている。特に首相訪問は、国軍が野党党首の拠点を軍事攻撃した3ヶ月後。日本政府もこの悪化プロセスに加担していることを踏まえ、ドナーとして現地状況をどう把握すべきか考えてほしい。
  • スライド12~13:先月、国立大学教授が暗殺。現地政治学者が「和平後の最も困難な時期に突入」、「投資やメガプロジェクトの一方で社会的不平等が拡大。汚職等も発生。これに対する民衆の不満が爆発寸前」と分析していることを、本意見交換会の前提に据えて欲しい。
  • スライド13:学者らに強調されるのが、ゲブーザ政権による農村部でのコントロール強化。学校・病院・軍・警察等、政府系の全組織内で職員を掌握。関係者への報酬として援助事業や仕事の斡旋があり、昇進等が利用。複数政党制選挙で継続勝利するため、国家資源である政府機能・職・物品を使って支持者を取り込む。フレリモ党と政府は一体。外務省・JICAが関わる「政府高官」は、フレリモ党の役職を兼任。
  • スライド14~15:これを変える提案が「自治州構想」で、レナモはこの検討がないなら、選挙で勝利したニアサ、ナンプラ、ザンベジア州等で武力の行使を辞さないと表明。これらは本事業の対象州で、レナモは自らの統治範囲と認識。これら3州では、政治勢力が拮抗。
  • スライド16~17:大統領選では3州全てで与党候補が野党候補(合算)に破れる。北部は有権者の42%を占め、フレリモ政府の政治的安定には同地住民を取込む必要がある。有権者の圧倒的多数が小農であり、これが政府のプロサバンナ推進の原動力・目的の一つ。
  • スライド18~20:本事業の対象19郡では、州全体よりも与野党が勢力拮抗する傾向。援助を通じ、競り合ったり、フレリモが負けた郡の有権者/小農の支援を試みていることになる。
  • スライド21~22:MPの公聴会が各郡で行われているが、参加動員されている「コミュニティリーダー」とは誰か。2009年以来、フレリモは郡長、行政ポスト長、党の下部組織、公職の組織的動員体制を強化。下部組織として青年組織OJMと女性組織OMMがあり、伝統権威を取込んできた。これらの人物は、選挙の度、あるいは公聴会等の集会の度に必ず現れる。
  • スライド23~27:これがMP公聴会で発現。現地からの写真は「コミュニティリーダー」と呼ばれる伝統首長。政府は、首長の制服を支給し、首長はフレリモ票の取り纏め役として機能。
  • スライド28~29:農村部の政治・選挙、公聴会で、郡長が重役を担う。「政治化するな」とのことだが、現実に地方行政は政治化されており、構造の中で利用されている。特にJICAは理解すべき。

(2)外務省コメントとNGO・司会のやり取り

外務省:この会はプロサバンナ事業に関する意見交換会であり、モザンビーク情勢について議論することを目的とするものではない。ナカラ回廊の農民が非常に貧しい中、持続的な農業支援のあり方を意見交換するのが目的。その上で御指摘の点について反論すれば、先の大統領選挙には国際選挙監視団が9千人も派遣され、国連事務総長、EU、SADC代表声明では、一部でご指摘のような問題点もあったかもしれないが、それは個別事案であり、「概ね自由・公正・信頼的・平和裡な選挙」が行われたと評価されている。シスタック教授の殺害事件は、モザンビーク政府も批判し対処するとしている。プロサバンナ事業と関係のない事案を、憶測でこの意見交換会で関連づけて議論するのは不適切。

NGO:時間の関係で割愛したが(スライド14)、シスタック教授は、レナモの自治州構想が「憲法上合憲」と述べた結果脅迫に遭い、暗殺。「自治州構想」には本事業の3州も絡んでくる話なので、ご理解いただきたい。

司会:公聴会にどういった政治背景と文脈が影響を及ぼしているかについては、資料8の後半で確認を。なお、ODA適正会議と同様、案件を議論するにあたっては、事業の背景について共通認識が無ければできない。

外務省:モザンビーク情勢の共通理解に達するために議論するにはいくら時間があっても足りない。

司会:今日はここまでで、(共通理解の形成が必要か否かについては)今後検討することとする。

5 マスタープランのドラフト初稿

(1)JICAによる資料4と5を踏まえた初稿の説明

  • 農業セクター基本計画、農業セクター戦略計画(PEDSA)に沿って日本とブラジルがモザンビーク政府に技術協力する形で策定。現地市民社会組織との対話を踏まえ、本稿をベースに様々なステークホルダーとの意見交換を行って最終化を目指す。
  • 資料5は、日本で関係者と共有するための「参考訳」。1章から8章で構成。序章はPEDSAに基づいたナカラ回廊地域の農村開発で、本事業とPEDSAとの関係を整理。PEDSAのビジョン達成のため、次の1~4を戦略の柱に据えており、MPも4~7章に同様の柱を立てた。
  • 1.2「MP策定に向けた基本理念」について7つの定義。
    • (1)家族農業を重視した包括的でダイナミック、持続的バランスの取れた開発を目指す。
    • (2)大規模投資等、経済発展を優先した開発より、コミュニティの社会経済の文化的な開発に視点を置き、地域住民の生活を向上させる。
    • (3)地域の農業ポテンシャルに即したサプライチェーンの開発及び市場アクセスの確立。
    • (4)コミュニティの土地利用権保護の促進。第三者の脅威から住民を守る方法を考慮。
    • (5)農家による新技術の選択、習得、適用のための研修を通じ、生産の増大及び生産向上に関する技術革新、普及を推進。家族農業は、貧困や飢餓の撲滅、初期量及び栄養保障、生活改善等重要な役割を果たしていることを認識した上で、農業投入財の活用や換金作物の導入、保全農業の推進等を通して、住民の生活や農業技術の向上を促していく計画。
    • (6)民間セクターは改良種子を含む農業投入財の供給や市場・金融へのアクセス等、農家が抱える課題の効果的、効率的な解決に寄与。この発展のため、地元のアグリビジネス企業を支援・活性化し、官・民・住民のパートナーシップを確立して農業開発を推進。
    • (7)人口・経済活動の増加は、様々な問題の原因になる環境負荷を増加させると懸念。持続的な開発の実現には、環境保全の推進が重要。負の影響を軽減する方策を取る。
  • 第二章「地域農業の課題と開発ポテンシャルの分析」:農家の大部分は、小規模な自給自足農業を営む。生産性が低い小規模生産。市場も不足しているため、少ない収益しか得られず、投入財を購入する資金もない。農業知識も限定され、生産性や生計の向上が困難。一方、急激な人口増加は農業生産増大における脅威。現在の粗放的農業は、人口増加によって基礎が弱体化。解決策として、生産性の向上、生産量の増加、農業生産物の多様化、市場、流通、加工業の発展、天然資源の持続的使用を記載。
  • 三章「基本構想」:MPの目的は、自然および社会経済環境に考慮すると共に、競争力のある市場志向型の農業・農村、地域開発を目指した新しい農業開発のモデル構築。受益者の家族農家は主に小規模農民。小規模農家も幅があり、「零細農家」「一般的な小規模農家」「中核農家」に3分類。目標年は2030年。15年~20年をフェーズI開始時期、25年迄をフェーズII成長期、30年迄をフェーズIII成熟期と捉える。フェーズIIの農業分野の成長率は7%、IIIを6%として計画。
  • 3.3.1「小規模農家の成長モデル」:(1)アソシエーションの組織化と営利目的協同組合への移行を通じた成長促進。(2)コミュニティレベルでの農民グループの組織化による零細農家の成長。(3)アソシエーションと協同組合の設立過程での中核農家の役割。
  • 3.3.2「アグリビジネス地場産業の発展形態と小規模農家の連携」:RAI体制を構築し、民間投資の住民の生計向上や利益への貢献を確実にする為、公的機関による市民社会等が参加した監視や指導を期待。CSR投資では、社会インフラの開発を期待。
  • PEDSA目標への貢献:自然林は近代的で持続的な農業技術の適用、適正に管理・運営された投資により保全。対象地域は自給自足の農民を含め食料自給を満たし、より広い地域で食料保全の改善に貢献。余剰生産物は、国レベルの食料保障改善に貢献。農家レベルでは余剰増加で収入増。MP実施により、2030年の家族農家・中規模農家の平均農業収益は1.7倍。農業生産総額170億MT(メティカル)が1.9倍、2030年には3.2倍。これはPEDSAの目標である0.7%を満す。
  • 4章5章はより具体的な説明は控える。
  • これまで対話がストップしたこと、三カ国民衆会議やその他の会議で具体的なドラフト全体を示して議論すべきとの意見があり、モザンビーク政府はドラフト・ゼロをまとめた。郡レベル、次に州レベルで対話を進める。ドラフト完了時期の予定は聞いていない。

(2)司会とNGOによるコメント

司会:要約は本日配布のため議論はできない。NGO側も、ポルトガル語版を自前で英訳した物をベースに分析を進めているので、議論としては次回以降となる。

NGO:

  • MPに「英語版がない」というのは、これまでのJICAの作業管理委員会の経験から見てもあまり例がない。国際的にもかなり異例。早いうちに対応を。
  • 初稿を読んでも、誰に知らせようとしているのかがよく分からない。モザンビークの農村の条件を考慮に入れた際、家族農業・家族農家をメインにしようと書いているのだから、家族農家にきちんと知らせる努力をすべき。ホームページに載せている、郡の役所に置いてあるから見に来いと言うだけで、農民たちが知ることができるのか。
  • 三章で「参加型・インクルーシブな計画」と記載するが、計画にそもそも小農たちの声がどの程度反映されているのか見えてこない。
  • エビデンスに相当するものが殆ど記載されず。「近代農業が素晴らしい」と主張するが、論拠になる文献が示されず、懸念が捨てきれない。実際の調査データや結果が公開されれば、それに基づいて議論ができる。
  • 「家族農業の主流化」はこれまで私たちも強く主張してきたことで、ドラフトにそれが明記・位置づけられたのはかなりの進歩。開発至上主義的なモザンビーク政府と、大規模農業が中心のブラジルとの間で、本当に小農支援で一致したのか疑問。一致したのなら評価できるが、初稿でも随所で「衣(家族農業重視)の下の剣(大規模ビジネスなど)」が覗いている。首尾一貫していない箇所がある。本気度がわからない。
  • 「家族小農」といった場合、大事なのはサブシステンス。「零細」に分類した層も対象にするというが、「生産性」という概念では捉えられない。サブシステンスを無くす形なら基盤を失い弱くなる危険性。結果彼らは町に出るしかなく、仕事がないからスラムに住む等の社会不安の原因になりかねない。
  • 家族農業から学ぶ姿勢が欠如。いつまでも休閑地を多く取っている等書いてあるが、彼らは固定的な農法をやっている訳ではなく、工夫して変化している。その前提で、人口増加の中、どうクリアしていくかという問題設定であるべき。
  • 家族小農主流化の具体的な策として、契約農業とバリューチェーンへの統合、近代農業の推進がある。しかし、前者がWINWINの関係をもたらすとは限らない。「契約農業をすれば自動的に生計水準が向上」とのシナリオを書くことは不可能。学会などで議論されてきた契約農業とバリューチェーンの問題点に目配りするべき。
  • プロサバンナによる農地収奪はないとのことだが、プロサバンナそのものが直接農地収奪に結びつくことはないかもしれないが、ナカラ回廊開発も含めて支援が入ることを当て込んだ農業投資は存在する。農民たちにはプロサバンナも異なる枠組みのものも、皆プロサバンナだとの認識になる。そのきっかけになってしまったことに、どう対応するのか。

(3)JICAとNGOのやり取り

JICA:

  • コンサルタントは、英文版をベースにして作成した。それをポルトガル語に翻訳したが、テクニカルな言葉など表現が難しい点がある。ドラフト・ゼロを策定していく過程で、モザンビーク農業省自身が、どうやったら自分たちの土地に合うのか、農民から聞いた意見も含めて彼らの中で様々な議論を交わした上で、彼ら自身で最終化したものがドラフト・ゼロであるため、ポルトガル語版が最終版であり、英語版はない。
  • 家族農業から学ぶ、契約農業とのマッチングを考えることは重要で、考慮したい。家族農業の人々は頑張っているが、このままでは良くないと考えている農民もおり、モザンビーク政府も同じように考えている。これからどのように地域・国を作るのかを議論していきたい。
  • 「衣の下の剣」とおっしゃったが、我々は隠しているつもりはない。

NGO:

  • 農民のタイプも様々。プロサバンナでどこをターゲットにするのか。MPでは、同じ家族農業でも、ポンと背を押せば走っていけるような農民を念頭にしている。市場経済的にやっていけない農民のことが抜けている。彼らの声が反映されていない。アグリビジネスによって農地を取り上げられた結果、農作物が生産できなくなって販売することもできず、子供たちに教育を与えることができなくなったり、一日一回しか食べられなくなってしまったりする人がいることも理解すべき。農地収奪等の権利侵害の事例は、「プロサバンナの外のことだから関係無い」というのは問題。
  • MPの完了時期について、情報公開請求で入手したPDの業務指示書では、第一ドラフトファイナルレポートが2014年12月まで、第二が2015年5月に提出と記載されている。
  • 日本のコンサルタントらもODAの何億円かを使ってMP事業をやってきた。日本政府としてどのように責任をもってドラフト・ゼロを共有していくのか。

JICA:

  • どういう方向でまとめていくのか、についてモザンビーク政府と議論し、(マスタープランの)ドラフトを示した上で、意見を求めようという姿勢を確認している。現地で議論が進むことが重要で、時間枠を契約書に合わせることは一切考えていない。
  • (ドラフト・ゼロを)郡事務所に取りに来いというのでではなく、農民に近いメディアで情報提供をしている。公聴会には、誰が参加してもよい、と呼びかけている。

6 マスタープラン・ドラフト初稿に関する公聴会

NGO:公聴会にJICAからの参加人数は?農業省が発表した表の通り実施されているのか。

JICA:日本人は参加せず。予定通り行われていると思う。時間等が遅れたり、少し混乱があるのは聞いている。

NGO:日本のNGOは10近くの公聴会に参加中。3、4の公聴会で日時が急に変更。コミュニティラジオ等で広報があっても、日時が変わり、現地市民社会が行ったらなかったことも。公聴会は様々な点で危機的な状況という。日本が開催費を出している以上、きちんとモニタリングすべき。

司会:公聴会の状況が危機的なのは誰もが認識している。日本側はちゃんと認識しているのか。公聴会の内容も重要。現在、公聴会に出席中のNGOメンバーから報告の用意がある。


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