ODA(政府開発援助)
第7回ProSAVANA事業に関するNGO・外務省意見交換会
議事要旨
【日時】2013年12月18日(水曜日)17時00分~18時30分
【場所】外務省 南282会議室
【議事次第】
- 対話の在り方(外務省・JICAからNGOへの質問と応答)
- マスタープラン・コンセプトノートの分析と意見交換
【配布資料】
- 外務省・JICA配布資料:
- 資料1:
- 議事次第(PDF)
- 資料2:
- 参加者一覧(PDF)
- 資料3:
- NGOへの質問(PDF)
- NGO配布資料:
- 資料4:
- ProSAVANAに対する日本内外研究者・メディア・市民社会の評価(2013年12月)(PDF)
- 資料5:
- ProSAVANAに関する日本NGOの緊急声明(2013年9月30日)(PDF)
- 資料6:
- 「NGO緊急声明」に対する外務省返答(第6回意見交換会)へのNGO側コメント(PDF)
- 資料7:
- ナンプラ州市民社会(PPOSC-N)のプレスリリース(日本語訳・2013年9月30日)(PDF)
- 資料8:
- ODA政策協議会報告(2013年12月9日)でのProSAVANAに関するNGO側資料(PDF)
- 資料9:
- 年表ProSAVANAにおける農民・市民社会組織との「合意形成」の課題(2013年12月17日)(PDF)
- 資料10:
- 現地新聞記事「プロサバンナ:情報操作、嘘、半分だけの真実」(日本語訳・2013年11月8日)(PDF)
- 資料11:
- 現地新聞記事「UNACの正当性」(日本語訳・2013年12月13日)(PDF)
- 資料12:
- マスタープラン・コンセプトノートに関する日本の専門家分析(2013年12月16日)(PDF)
- 資料13:
- UNACによるプロサバンナ事業に関する声明(2012年10月11日)(PDF)
- 資料14:
- JICA「ナカラ回廊農業開発研究・技術移転能力向上プロジェクト」概要(PDF)
- 資料15:
- 「ナカラ回廊ファンド」に関するFGVによるプレゼンテーション資料(2013年10月)(PDF)
- 資料16:
- 本邦企業に関する日本大使館「モザンビーク共和国月報」記事(2013年7月)(PDF)
【参加者】NGO14名(6団体、2大学)、外務省国際協力局2名、JICA農村開発部・アフリカ部3名
1 外務省からNGOへの事前質問に関するやり取り
(1)外務省:事前質問事項2点の趣旨説明
- ア
- 対話の在り方に関する問題提起
- (ア)
- 「対話する、しないの議論」から、対話の中身についての議論に移ってきた。
- (イ)
- 最初の問題設定である「対話の在り方論」に立ち戻り、対話をどうすれば良いのか、改善すべき点は何か知りたい。また、それをどのように現地に示唆していくべきか。
- (ウ)
- 現在ナンプラ州では市民プラットフォームがあり、そこと州政府側が意見交換しながら対話の場を設定していくプロセスが動き始めていると理解。両機関が仕切っている対話に、日本政府やJICAなど外部の人間がモザンビーク政府に示唆するだけでよいのか。
- (エ)
- 市民社会側には誰がどのような形で示唆するのが最も現地に伝わりやすいのかお伺いしたい。
- イ
- コンセプトノートの「DUAT(土地使用権)」に関するNGOの指摘を踏まえた問題提起
- (ア)
- 近代国家においては、政府が農業の発展のために政策を実施し、農業に従事する人々へのサービス提供、援助、権利の保護を行わなければならない。文書がない状態では、農民の権利を保護しサービスを提供することができず、土地の登録は必要である。制度の下で政策を行うには、制度の中に入ってもらうのがワンステップアップ。
- (イ)
- (登記に)反対なら何故なのか、どのように政策を実施し権利を保証していくべきかお伺いしたい。
(2)NGO:以上の2点への応答
- ア
- 配布資料6、7、8、9、10と12月の現地調査に基づく説明
- (ア)
- 対話の方法は現地で話し合われるべきで、我々は決める立場にない。
- (イ)
- 現地市民社会とUNAC(全国農民組織)との面談(ナンプラとマプト)で得た認識を共有。
- 11月にマプトで「対話のあり方を決める協議」を持つ努力があったが、「プロサバンナに関する対話」と書かれた名簿への署名が求められ紛糾。市民社会側は次の会議もキャンセル。また、この議論の最中にマスタープラン(以下MP)のコンセプトノート(以下CN)が突然9月に発表されたが、11月の会議で要請された根拠となるデータ等が提供されず。結果、首都では「対話のための議論」すら停止状態。
- ナンプラでは、CNが議論されているが、これをPPOSC-Nは「対話」と捉えず。対話の手法に合意した上で中身を議論したいと考えていたが、その前にCNが出された。プロサバンナ関係者の(対話への)圧力を感じる一方で、今問題提起せねばCNの中身が正当化されかねず、「仕方なく賛同できない部分を項目分けし、議論を重ねている」状態。CN全体のメッセージ賛同できないことの表明を優先しているだけで、本来あるべき「対話」ではないとの説明。
- (ウ)
- 首都とナンプラの市民社会が日本のNGO本意見交換会での伝達を希望したのは、「その場に参加したからといってプロサバンナに賛成ではない」という点。現地での議論への参加の人数やリスト等を以て、東京では「対話が進展」として事業推進の根拠とされてきたが、現地はそれが不安。まず公開書簡の回答を、そして中身の議論のための「対話の在り方」を検討したい、よって「現状は対話ではない」との声が寄せられている。
- イ
- コンセプトノート(CN)の分析(【資料12】)に基づく説明
日本の市民社会によるCNの分析結果が以下のとおり説明された。- (ア)
- CNは「ProSAVANA-PDレポート2(2013年3月)」を基本的に踏襲。違いは、「レポート2」記載のアグリビジネス進出や土地収用が、CNでは隠されている点。代わりに小農が個別に土地を登録することで使用可能範囲を固定化し、それ以外を「未耕作地」として農業投資を推進する「区分けの思想」が強調されている。
- (イ)
- 外部資材依存の高投入高収量農業への大転換を小農に強いる戦略。社会的問題の大きさの考慮なし。自給的農業を商業に変換させ、アグリビジネスがそれを補助する形が提示。
- (ウ)
- 小農の土地の権利の範囲を限ることで、本来長い時間をかけて行われるこのような農業の転換の条件を強制的に作り出している。
- (エ)
- DUATの登記に関しては【資料12】参照。現在使用する土地だけが権利の範囲ではない点に注意。現地の農業の形態は非常に多様。休閑地や林、保護地の権利など様々ある中で、耕作地の登記を強制することで、小農に必要不可欠な土地への権利を失う問題が隠されている。
- (オ)
- 「土地登記は農民にメリット」との単純な発想はCNの根本欠陥で、モザンビークの小農の発展にとって、上記のような不適切な強制をもたらす危険がある。
- (カ)
- 現在の農業は欠陥と断定し、「移動耕作から定着農業へ」との単純・大雑把な変革が合理的とする考え自体が誤り。アグリビジネスによる大規模森林伐採が進んでいるのに、伝統的な農業が森林伐採の主犯であるかの描き方は作為的ですらある。現状の農業の合理性の考えに立っていない。
- (キ)
- 移動耕作と一括りにされるが、家屋は固定、焼畑耕作地の範囲は決められ、ローテーションし、叢林を焼き灰が肥料になる叢林休閑法。この合理性は研究で実証されている。
- (ク)
- 以上から、外務省の質問にある「土地登録制度に反対か否か」の問いの設定自体が、問題の矮小化で、問題が正確に捉えられていないことが示される。土地法によれば、DUATの権利は証明の有無に拘らず存在。耕されている農地があることで、すでにDUATがあり、「登録」は権利の明示にすぎない。これがモザンビーク土地法の精神。アフリカの大半の国で、農民が伝統的な共同体の中で権利を保持している場合、個別農民の土地の登録はされていない。
(3)外務省の応答
- ア
- 「対話の在り方」について:提案できるものがあれば現地に示唆するため今回の議題を設定した。現地に行かなければわからないのであれば、我々はどうするべきか。「参加=賛成」ではないことは承知。だからこそ話し合いの場、方法論について意見を出す場が必要。
- イ
- CNの位置づけ
- いかなる国家も政府が政策を実施する際には説明会を開き、意見を出してもらう場を設定している。モザンビーク政府も州政府も現在のCNを完璧と思っているわけではない。むしろ意見を必要としている。「CNに問題があるから」「賛成しているわけではないから」参加しないのであれば、対話の場を持つことを拒否しているように思える。
- 説明会にはたたき台が必要であり、CNで説明会、その次に対話という順序で現在に至っていると理解。
- ウ
- 反省点
- 一方で、資料等を配付せず大量の情報をパワーポイントだけに詰込んで説明したことは反省点。
(4)NGOの応答
- ア
- 日本側では「MPは白紙。農民からまず意見を聞く」とされていた。まず、対話の議題・日程、呼びかけ方法等を市民社会と政府が事前協議の上、対話の場を設けるべきとの議論をしてきた。CNはその対話の上で作成と理解されていたが、急に出て、現地は大きな衝撃を受けた。
- イ
- 現地では、「我々は長年農業に従事し、課題もあるが知恵もある。それを汲み上げることから出発してほしい」、「CNにそれが汲み取られていないのでは」との願いや懸念がある。
- ウ
- まず現地住民を「プロジェクトの対象」ではなく「対等な利害関係者」と捉えるべきだが、現実は情報の非対称性。これを放置したままで農民は同意しないことを認識し、補完する仕組みを作ることが肝要。農民は「受益者」になるはずだが「最大の被害者」になる可能性も。そこに暮らし、財産を持つ立場の保証が不可欠。一人でも事業に反対であれば、その人の社会生活や立場が否定されないことが論理的に必要。
- エ
- 【資料3】では、現地が「議事要旨作成を否定」ととれるとあるが、違う。対話促進の過程で様々なことが起こる上に、「白紙」のはずのCNが突然出る。モザンビーク政府の「ProSAVANAでの生産は国内向け」との説明の一方、JICA資料では日本への大豆輸出等が謳われ、情報に格差。
- オ
- 事前質問から外務省/JICAと日本の市民社会との認識ギャップが浮き彫りになった。(距離のある)現地とのギャップは当然。故に、理解の深化に本意見交換会の重要な役割がある。
- カ
- 現地には、対話すると、公開書簡で要求する「一旦停止して抜本的に見直す」ことが実現されないとの懸念がある。これは公開書簡への返答がないことにも起因。
- キ
- ナンプラ(PPOSC-N)は、「CNの内容は小農に犠牲を生み出すもので、現状改善のためになっていない故、CNは新しく書き直されるべき」で、「大前提に公開書簡への返答」と主張。
- ク
- 毎回外務省は「モザンビーク市民社会は対話に慣れていない」と指摘するが、現地はこれに憤慨している。モザンビークはPROAGRIの反省以来、市民社会・農民組織と共に農業政策を形成してきた。対話の停滞はモザンビーク側の問題ではなく、ProSAVANA独自の問題と認識すべき。
2 司会の要点整理と外務省・NGOのやり取り
(1)司会:ここまでのNGOの主張を4点に纏める。(ア)CN策定のプロセスの問題、(イ)農民が主体になるべき事業での情報の非対称性、(ウ)モザンビーク国内の政策対話でProSAVANAだけがうまくいかない点、(エ)有意義な対話の実施には信頼関係の構築が不可欠で、公開書簡への返答から仕切り直すべきとの主張。
(2)上記4点への外務省応答
- ア
- ProSAVANAと銘打って日本政府がある種の手続きを行い、MP作成を提案し、専門家チームを組織し、調査を実施。調査も現地で様々な協議の上で始め、ある程度実施されたためその結果を報告し、中身について対話するというプロセス。その調査結果を踏まえて説明会を行ったところ、手法に誤解や不満が出たということは私たちも認めている。この反省を踏まえ、何が現状で何が目的なのかというコンセプトについて説明する形からいかなければいけない、となった。
- イ
- 情報の非対称性については指摘の通り。政府と国民がある中で、政府がいかに国民の意見を汲み上げて国家を運営していくかが問題となる。だからこそ、内容について意見を出してもらい、それをどう取り入れていくかというプロセスを経なければいけない。CNは必要だった。現地の人々に「何が行われているのか/行われていたのか」「何の趣旨か」について説明が欲しいという声があったのは事実で、対話、説明会から始めようとなった。外務省がJICAと話し、モザンビーク政府に言ったのは、まず何の趣旨でやっているのか、どこまで調査したかを説明することから始めること。説明のためCNとしてたたき台を出すことから始めた。
- ウ
- 通常、MPはその国家自身で作っていくもの。政府が作り、それを説明して対話する過程が普通。モザンビークの場合、プランを作る前の段階の調査を日本に支援要請してきたために、我々が入って調査をやり、プロセスにも関わっている。そのため、普通の国と比較して、モザンビークの場合はプランができる前から相当色々な情報が出ていると考えるべき。
- エ
- 議事の要旨が先に作成されサインを求めたとは聞いていないため、事実関係を知りたい。
(3)NGOからの2点の返答と、2点の質問
- ア
- 近年モザンビークの農業政策や計画作成は、公聴会に限らず、農民らが最初から参加して実施している。外務省指摘はモザンビークの現実と異なる。詳細は「ProSAVANA市民社会報告2013」参照。
- イ
- 「事前サイン」の事実関係とNGO作成の詳細は【資料8と9】を参照。
- ウ
- 第5回意見交換会で外務省が「現地調査がここまできたのかとの声を聴いている」と述べている。CNは本当に現地調査に基づいて作られたのか、誰がノートを作ったのか疑問。
- エ
- 現地の11月の会議では、対話を前提に「CN策定の元になったとされる現地調査資料」を求め、農業省局長がこれを約束したそうだが実現していない。その確認。
(4)上記(ウ)(エ)に関するJICAの説明
- ア
- CNは、日本・ブラジル・モザンビーク三カ国の技術チームが共同で作成。日本のコンサルタントはオリエンタル・コンサルタント率いる複数企業で、ブラジルはFGV(Fundacao de Getulio Vargas)、モザンビークについては農業担当者。
- イ
- 調査は1つで、2012年3月から開始。その調査の過程で得られた情報を踏まえCNを作成。個々の調査を報告という形で纏めていない。調査結果のエッセンスをCNに反映。
(5)上記(エ)に関するNGOの要請
- ア
- 調査結果の報告がされないままCNが出たことは重大な問題であり、CNの根拠となる調査結果を資料として提供するよう数度にわたり要請。
- イ
- この要請には背景がある。【資料14】はJICAのホームページのコピーで、現地では土地が余っていると説明されている。特に、「ProSAVANAの対象地域の多くは未開墾地」であり、「農業のポテンシャルがあるため投資が必要」と記載。一方、CNでは、「このまま農民が移動農耕を続けると2030年には土地が不足するため現在の農法が問題」とある。同じJICAが関わりながら、全く異なる現状把握と主張がなされている。
- ウ
- 以上から、CNの土台となる調査報告書の提供を要請。書面での提供が困難であれば口頭でもよい。次回、NGOの現地調査報告にあわせ、JICAの現地調査者の報告を提案。
(6)外務省:以上要請について、どのような調査をしたのかについては、JICAの方でコンサルタントにも聞いて、メールベースで返答するとの回答。
3 司会の論点整理、NGOの要請、外務省の応答
(1)司会:NGOから「白紙に戻す必要性」が繰返し指摘された。新しい試みも古いものが残る以上歪みやズレが生じる。白紙に戻し仕切り直す方がコスト安になる。それが最良の方法であるというのがモザンビーク市民社会の提案でもある。残る論点は次の3つ。(ア)現地でどのような対話の場を作るべきか。「参加型」はJICAの専門領域。経験を含めどうすべきか。(イ)広い事業対象地を踏まえた情報の非対称性への対応。(ウ)公開書簡に対する返答。
(2)NGO補足:(ウ)安倍総理の現地訪問時にゲブーザ大統領に公開書簡への返答を促すことを要請。
(3)外務省の応答
- ア
- 白紙にする点について、現地でも長いプロセスを経ている。対話の中でまず我々の趣旨を聞いてもらい、モザンビーク政府がこのプロジェクトを始めた理由を説明する必要があると考える以上、今は説明のプロセスだと理解してもらいたい。
- イ
- その上でどのような対話をしていくかについては、ナンプラに市民社会プラットフォームがあり、そこと話し合った上で対話が始まったと理解。それがダメなら皆さんから提案を頂きたい。「州政府が提案した形ではけしからん」となり、PPOSC-Nが窓口となって仕切り直して対話の形をセットしたと理解。対話が「進展している」と言っているが、皆が賛成とはいっていない。
- ウ
- (公開書簡の返答については時期を含め)モザンビーク政府次第。(安倍総理への要請は)ご意見は伺った。皆さんのお気持ちを聞いたことを伝える。
4 MP策定プロセスについて
(1)NGO:12月にJICA現地事務所訪問の際、MPのドラフトが1~3月にできると聞いた点の確認。
(2)MPに関するJICAの返答
- ア
- その事実はない。なぜそのような話になるのかを、逆にこちらが聞きたい。既成事実を作るために議論をしているのではないかとの話があったが、それは全くない。
- イ
- (NGOから現地所長・次長の説明との指摘に対して)市民社会との対話がある程度目処がついたら、どの意見が実現できるのか否かを提案として出すとその時期になるのではという話だが、スケジュール通りに物事を動かすため対話を打切るあるいは無理に進めることは考えていない。
- ウ
- CNは3チームで作り、モザンビーク政府側のオーナーシップもあって出てきた。100%自信をもって奨められる、突っ込む余地のない完璧なプランではない。色々な問題があり、たたき台がないと前に進まないため、これで議論をしている。色々な指摘があり、できる限りは聞き、どうしたら良いか考えるため、我々も時間を使い、モザンビーク政府も対話をしている。従って、プランがいつまでに、どのような形のものになるとの完成形(のイメージ)を一切持っていない。現在ドラフトはなく、1月にそれが出てくることはない。
- エ
- (以前にJICAが6月に完成形が出来る可能性に言及したことのNGO側による指摘)どんなに頑張っても6月になるだろうという話。線引きして落とし込むという期限では全くない。
5 ナカラ・ファンドとProSAVANA事業(PD)・MPの関係性について
(1)NGOからの問題提起
- ア
- 「ナカラ・ファンドはProSAVANAとは関係なし」と聞いているが、事実関係を確認したい。
- イ
- 【資料15】は、ProSAVANA-PDのMP策定コンサルタント機関FGV作成の10月付の資料。
- 同資料では、「ナカラ・ファンドの全体像をガイドするのが(ProSAVANAの)MP」(2頁)、「(3)ナカラ・ファンド-ガイドライン」(3頁)で、「ナカラ回廊の35万6千ヘクタールの土地を3年で対象とする」と記載。その前提として「日本・ブラジル・モザンビークが、モザンビークの様々な物を輸出できるようインフラ支援」とある。ナカラ港の円借款事業のことと推察する。
- 4頁に、同ファンドの「アドバイザリーボード」と「プロジェクトパートナー」としてJICAのロゴあり。さらに「日本のファンド」となっている。
- ウ
- この資料を見る限り、ナカラ・ファンドは「ProSAVANAを前提として、そこに民間の投資を呼び込むためのファンド」として理解される。ナカラ・ファンドとProSAVANAの関係性、日本政府・JICAの関与について質問。
- エ
- ナカラ・ファンドとProSAVANAが別々のものと説明されても、現実ProSAVANAによってこれが立ち上がり、ナカラ回廊に民間投資が呼び込まれていると認識している。投資関連の活動に対してProSAVANAはどのようにアカウンタビリティやモニタリングを確保しうるのか、見解を要請。
- オ
- この資料はMPの調査をしているブラジルのPDコンサルタント機関が出している点が重要。現地の人たちが混乱し、信用できないといっても当然。
(2)外務省の返答
- ア
- この資料の存在は知らない。FGVが勝手に作成したと察するが、これに関する回答及び外務省とナカラ・ファンドとの関係についてはある程度書面でやりとりをした上で次回扱う。
- イ
- 結局、NGOはモザンビークが今のままでよい、と言っているように聞こえるが、それでは農民の生活は改善しない、収入も向上しない。だから何かをしようとしている。
- ウ
- 森林伐採や企業投資の問題があると言われた。近代的な市場経済の中で、農民の権利が奪われたり、制度と政策の方針がない中で投資家らが利益だけ奪っているのではないかとの危惧を私たちも共有。だからこそ、放置するのではなく、モザンビークから要請され、MP作成の過程で調査もやり、プランを作ろうとしている。そこだけは理解していただきたい。
(3)NGOの要請
- ア
- 現地はこのままで良いと思っていない。UNACの最初の声明文(【資料14】)に彼らが考える発展のあり方やビジョンが記載されている。議論の参考としてほしい。
- イ
- ナカラ・ファンドについて、10月のUNAC主催「土地に関する小農国際会議」で、農務省が同ファンドの説明を行い、資料に「ProSAVANAと関係がある」とはっきり書かれていたと現地で聞いている。モザンビーク農業省にも確認頂きたい。
- ウ
- 現地市民社会からの要請で調べた結果、駐モザンビーク日本大使館の月報(【資料16】)にある日本企業がナンプラ州Malema郡で4千ヘクタールの土地を綿花栽培用に確保と掲載。今回の現地調査で実際は2万ヘクタールと聞いた。この企業の進出について、10月段階では、現地政府のプロサバンナ関係者から「ProSAVANAと関係あり」と説明されたそうだが、12月の再確認では「関係なし」と発言が変容し、現地は不安を感じている。外務省に状況確認を要請。
- エ
- 投資が流入する状況下で日本政府が出来ることの一つは、企業の情報を(早めに)押さえて、無茶な投資をしないよう監視していくこと。
6 司会のまとめ
- (1)情報の齟齬はこれまで何度もあった。中身の議論をすべき意見交換会にも拘らず、誤解払拭の会となっている。それも重要だが、このような齟齬をなくしていくことをJICAも考えてほしい。
- (2)最終的に「そもそも論」に議論が入ったが、CNのあり方に密接に繋がる。この議論は日本の我々ではなく、現地農民たちとどうするかが重要。今後も議論していきたい。
- (3)改めて何が大事なのか考えることが必要。ナカラ・ファンドや本邦企業の話にしても、農民を惑わし不安にする要素になる。そこを払拭していくことがProSAVANAにおいて重要。現地の人たちの不安払拭を考えることも小農支援である。