ODA(政府開発援助)
日本-ベトナムの友情をつなぐ
空の玄関からハノイの街へ
原稿執筆 在ベトナム日本国大使館
戦後40年,市場経済化を経て,近年,めざましい発展を続けている,ベトナム。古くからの友好国,また,政治・経済などあらゆる面での重要なパートナーとして,日本からは様々な開発協力を実施している。
ベトナムと世界を結ぶ国際ゲートウェイ
東京から約5時間。ハノイ・ノイバイ国際空港に降り立つと,快適で便利な真新しい空港ターミナルが迎え入れてくれる。そして,空港から高速道路で約20分,ノンストップで市内中心部へ。途中,紅河(ほんがわ)を渡るひときわ印象的な5つの主塔をもつニャッタン橋を通る。5つの主塔は,かつてハノイで栄えたタンロン城の5つの門を意味し,まさにハノイの玄関,という印象を受けるだろう。
これら,「ノイバイ空港国際線新ターミナル」,「空港と市内を結ぶ高速道路」,そして,東南アジア最長ともなる連続斜張橋「ニャッタン橋」は,日本からの支援により整備されたものだ。2015年1月4日,これら3事業の同時完成式典が盛大に開催され,日越友好をひときわ印象付ける1日となった。ベトナムからはフン国会議長,日本からは太田国土交通大臣他,両国政府,企業,地元関係者など,1,000人以上が式典に出席した。
ノイバイ空港国際線新ターミナルの完成により,空港の慢性的な混雑を解消するとともに急増する旅客に対応し,古くて暗いターミナルからイメージも一新。また,ニャッタン橋,空港と市内を結ぶ高速道路の完成により,市内までのアクセスが20分以上短縮(半減)され,市内の渋滞緩和も実現。ハノイの玄関口とも言えるこの場所で展開されたプロジェクトは,ベトナムの社会・経済発展を促進し,ハノイを東南アジアの国際都市へと大きく牽引した。いずれも,難易度の高い工事だったが,日本の最新技術が活用され,日本企業・技術者がベトナム企業・技術者と協働して施工にあたり,ベトナムへの日本の技術移転にも貢献した。
「ベトナムと世界を結ぶインフラである。(フン国会議長)」,「一千年の歴史を持つ文化首都であるハノイのゲートウェイに相応しい。(ハイ副首相)」,「空港職員と日本人専門家は昼夜を問わず緊密に協力した。一番機が飛び立った時,ベトナム人と日本人が抱き合って涙を流す者もいた。(フン空港公社総裁)」,「ニャッタン橋は,ハノイのシンボルである5つの門という文化の美しさと,ベトナムの象徴である竜が天に登る姿を表現し,日越両国の友好関係に相応しい。(チュオン交通運輸省副大臣)」。1月4日の完成式典では,ベトナムの政府要人より,日本からの支援への感謝とともに,こうした印象的なスピーチが行われた。
日越友好橋
完成式典において,ニャッタン橋は,別名,「日越友好橋」とも名付けられた。世界遺産,ベトナム中部の町,ホイアン。約400年前,日本と交易が盛んだった当時,日本人により建設されたという日本橋(来遠橋)は,ベトナムの紙幣にも印刷され,今なお,ホイアンのシンボルとなっている。今回完成した3事業は,まさに21世紀の日本橋。首都ハノイの玄関口であり,いつまでも,ベトナムと日本の友情をつなぐ存在となることが期待される。
(参考)
- (1)ノイバイ国際空港第2旅客ターミナル建設事業(本邦技術活用条件:STEP(注))
総事業費約760億円。うち,円借款約590億円。大成建設等により施工。年間1,000万人以上の旅客に対応可能。 - (2)ノイバイ国際空港-ニャッタン橋間連絡道路建設事業
総事業費約270億円。うち,円借款約180億円。全長12.1km,6車線の高速道路。 - (3)ニャッタン橋(日越友好橋)建設事業(本邦技術活用条件:STEP(注))
総事業費約800億円。うち,円借款約540億円。IHIインフラシステム,三井住友建設,東急建設等により施工。全長3,755m,主橋長1,500mの連続斜張橋。連続斜張橋としての橋長は東南アジア1位。
(注)STEP(Special Terms for Economic Partnership)
SETP(本邦技術活用条件)は,主契約者を日本企業とすること,また,事業を実施する際に使用する資機材の30%以上が日本製であること(本邦調達比率)を義務付けているもの。