ODA(政府開発援助)

平成31年3月22日

原稿執筆 在ニュージーランド日本国大使館

クック諸島の地元コミュニティから広がる防災の取組

(写真1)テイムリモティア消防隊結成時の様子(右からマッコリー隊長,ナパ副隊長) テイムリモティア消防隊結成時の様子
(右からマッコリー隊長,ナパ副隊長)

 ニュージーランドの北東約3,000キロの太平洋に浮かぶ島国クック諸島のラロトンガ島は,周囲が約30キロメートル,中央には600メートル級の山々が広がり,周囲には浅瀬の海岸が広がる風光明媚な島です。
 しかし,乾期が長引くと火災が起きやすいにもかかわらず,島内には空港の消防隊とその他小規模な2つの消防隊があるのみでした。特に,多くの外国人観光客が集まるリゾートホテルがある島の東南部(ムリ市)はこれら消防署から遠く,火事が発生してから消防車が出動して消火活動を行うまで時間がかかるため,大きな被害が出ていました。そこで,ムリ市の近くの出身で,飛行機の整備士として働いてきたマッコリー現消防隊長やナパ現消防副隊長らが中心となって,2013年,3名で消防隊を結成しました。結成当初,火災出動がない時は,20年や30年経った中古の消防車の修理や整備を行い,雨季には各自宅の軒先に,その消防車を置いて,活動に備えていたそうです。

(写真2)消防車の水圧ポンプの点検の様子 消防車の水圧ポンプの点検の様子
(写真3)消防隊員によるホースを使った訓練の様子 消防隊員によるホースを使った訓練の様子

 その後,マッコリー隊長らの要請に基づき,日本が,ODA草の根・人間安全保障無償資金協力の支援を通じて,ムリ市の近くにテイムリモテイア消防署を建設し,日本の消防車3台を供与しました。さらに今年1月には,はしご消防車の供与が決まりました。日本の支援によって,消防隊員の消防車修理の手間が大幅に減り,より迅速かつ幅広く消防活動を行えるようになりました。

(写真4)日本から供与された消防車前に集合した消防隊員 日本から供与された消防車前に集合した消防隊員
(写真5)3名の女性消防隊員 3名の女性消防隊員

 現在,消防隊員数が増えて16名ですが,その中には地元の元警察官の女性やミス・クック諸島の経歴を持つ女性がいます。彼女らは普段,地元の建設会社やホテルに勤務していますが,火災時には消防隊員として活躍しています。また,消防隊員は日頃から集まって訓練を行ったり,ニュージーランドの消防隊員と一緒に研修や訓練を行ったり,島内の市街化が進んでいる地域の建物内火災を想定した消防訓練を行ったりもしています。

 今では,このテイムリモティア消防隊のボランティア活動はクック諸島の人々の間でよく知られるようになっています。そして,徐々に防災意識が高まっており,アイツタキ島やアティウ島など他の島でも有志の消防隊を作る動きが出てきています。

(注)掲載されている写真は,全てテイムリモティア・ボランティア消防救急隊(TVFRBVT)より提供されたものです。

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