ODA(政府開発援助)

平成30年1月16日

原稿執筆 在ベトナム日本国大使館

組織力で短縮した工期

(写真1)開通式典(中央左がフック首相,中央が梅田大使,中央右がギア交通運輸大臣) 開通式典(中央左がフック首相,
中央が梅田大使,中央右がギア交通運輸大臣)

 2017年9月2日ベトナム独立記念日に,首都ハノイから東へ100キロメートル離れた港湾都市ハイフォン市で,ベトナムで最長となる5.4キロメートルの海上橋梁が開通しました。開通式にはフック首相やギア交通運輸大臣も参加し,ベトナム政府関係者から,短時間で高品質な橋梁を完成させた日越JVチームの技術力・組織力に対して称賛する声が多く聞かれました。

(写真2)完成したラックフェン橋(ディンブー・カットハイ橋) 完成したラックフェン橋(ディンブー・カットハイ橋)

 いまや世界有数の工業国に成長したベトナムと世界各地を結ぶため,ベトナムの海の玄関口であるハイフォン港に,大型コンテナ船の寄港が可能となる大水深コンテナターミナル(ラックフェン国際港)を日本の開発協力支援のもと建設しています。
 今回開通したのは,ラックフェン国際港へのアクセス道路となるラックフェン橋(ディンブー・カットハイ橋)です。ラックフェン国際港及び接続橋の開通により,日本企業を含むベトナムへの更なる投資促進,ベトナムの更なる経済成長が見込まれ,橋梁の早期開通に対して強い期待が寄せられていました。

(写真3)採用された新技術(プレキャストセグメント工法)【写真提供:三井住友建設(株)】 採用された新技術(プレキャストセグメント工法)
【写真提供:三井住友建設(株)】

 こうした要望に応えるため,施工を担当した日本の建設会社は,プレキャストセグメント工法(注1)や鋼管矢板井筒工法(注2)といった新技術を導入するとともに,ベトナム人技術者と連携して工期を5か月短縮し,建国記念日というベトナムにとって最も重要な日に開通することができました。

(注1)プレキャストセグメント工法:橋梁を3メートルごとに区切って工場で製作し現場で結合するもの。高品質な橋梁を早期に完成させることが可能となる。

(注2)鋼管矢板井筒工法:橋脚部に杭を高密度に打ち込み基礎と杭を一体構造にしたもの。軟弱地盤でも安全かつ速やかに施工することが可能となる

ベトナム人技術者の育成

(写真4)ベトナム大学生向け見学会の開催【写真提供:三井住友建設(株)】 ベトナム大学生向け見学会の開催
【写真提供:三井住友建設(株)】
(写真5)毎月開かれる安全ミーティングにて全作業員が安全管理の大切さを再確認【写真提供:三井住友建設(株)】 毎月開かれる安全ミーティングにて
全作業員が安全管理の大切さを再確認
【写真提供:三井住友建設(株)】

 今回の工事は日本人20名を含む,合計で1,000人の体制で取り組みました。設計から庶務,安全管理まで工種ごとに編成されたチームには,海外経験豊富な日本人リーダーのもと,ほかの現場で技術を磨いたベトナム人チーフエンジニアを配置し,ベトナム人作業員やベトナム企業を指揮する体制を取りました。「ベトナム人チーフエンジニア」の登用により,各チーム内の円滑なコミュニケーションが実現し,多くの作業員が日本の建設技術を身につけました。また,各チーフエンジニア自身も,日本人リーダーと一体となって現場を仕切る中で,技術力のみならず,組織マネジメント能力も身につけました。すでに何名かのチーフエンジニアは他の現場へ移り,今度はリーダーとしてベトナム各地での建設工事をマネジメントしています。

 このように,日本の開発協力事業は,単にものをつくるだけではなく,プロジェクトを通じて,日本の建設技術の移転やベトナム人技術者を育成することを特徴としています。今回の工事に従事したベトナム人技術者が日越友好の架け橋として,また,ベトナムの発展のために今後多くの現場で活躍することになることを期待しています。

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