外交青書・白書
第2章 地球儀を俯瞰する外交

2 欧州地域情勢

(1)欧州連合(EU)

EUは、総人口約4億4,600万人を擁し、27加盟国から成る政治・経済統合体であり、日本と基本的価値・原則を共有し、日本が地球規模の諸課題に取り組む上で重要なパートナーである。

〈EUの動き〉

2019年は、EUにとって変化の年であった。5月に行われた欧州議会選挙では、二大会派(欧州人民党(EPP)、社会民主進歩同盟(S&D))の議席数が合計しても過半数割れする一方、EU懐疑派政党や環境政党などはおおむね議席増となり、議会勢力が分散化した。EU首脳人事は、議会選挙の結果を踏まえて行われ、首脳レベルの調整を経て、7月の臨時欧州理事会にてフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とミシェル欧州理事会議長を始めとする新体制が選出された。ただし、新欧州委員会の発足は、欧州議会が欧州委員候補の一部を承認しなかったため、当初予定から1か月遅れ、12月となった。ミシェル欧州理事会議長は、予定どおり12月に就任した。

2017年6月に開始された英国のEU離脱交渉については、3度にわたる離脱期限の延期及び英国議会下院総選挙を経て、2020年1月末に英国・EU双方の合意に基づく離脱が実現した。2020年2月から、EU離脱後の英国が引き続きEU加盟国として扱われる移行期間が開始されている。この移行期間は2020年末までとされており、それまでに英国・EU間の将来関係についての新たな枠組みを規定する国際約束の成立に向け交渉が行われている(移行期間については、英EU間の合意により1回のみ、最長2年間の延期が可能)。

経済面では、2019年のユーロ圏の経済は、世界的に不確実性が高まる中、世界貿易の減速を受けて、弱い成長率にとどまった。

〈日・EU関係〉

2019年は、2月に日EU・EPAが発効、SPAが暫定的に適用開始されたことにより、日・EU関係は新たな協力のための法的基盤を得ることとなった。4月の第26回日・EU定期首脳協議では、G20大阪サミットに向けた連携が確認されるとともに、日EU・EPA発効の歓迎及び自由貿易に向けた更なる関係強化で一致し、また、日EU・SPAの実施に向けた協力が確認された。

9月にブリュッセル(ベルギー)で行われた欧州連結性フォーラムでは、安倍総理大臣とユンカー欧州委員長が基調講演を行うとともに、「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」と題する文書に署名し、連結性に関する日・EU協力を確認した。

また、EU新首脳との間では、安倍総理大臣は、12月、フォン・デア・ライエン欧州委員長就任直後に日・EU首脳電話会談を行ったほか、9月の国連総会時に、就任前のミシェル欧州理事会議長(当時ベルギー首相)と会談を行った。また、外相間でも緊密な対話が行われ、4月のディナール(フランス)におけるG7外相会合、8月の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議、10月の即位礼正殿の儀、12月のASEM外相会合の機会に日・EU外相会談を実施した。

経済面では、2月1日、日EU・EPAが発効し、人口約6億人、世界GDPの約3割を占める巨大な経済圏が誕生した。4月には、東京において本協定に基づく合同委員会の第1回会合が開催され、共同議長である河野外務大臣及びマルムストローム欧州委員(貿易担当)の下、本協定の運用状況の確認や、日・EU間の貿易を一層促進するための今後の取組などに関する議論が行われた。同委員会の際に行われた夕食会では、本協定を踏まえた日・EUの今後の連携の在り方、いわば“beyond EPA”の課題についても協議が行われた。また、同じく本協定の下に設置されている12分野別の専門委員会や作業部会については、それぞれ第1回会合を東京及びブリュッセルで順次開催し、各分野における着実な実施に向け、それぞれの実施状況や双方の関心事項を確認するとともに、今後の日・EU間の取組や協力体制について議論を行っている。今後、本協定の合同委員会の運用を中心として、専門委員会を通じた本協定の着実な実施の確保及び専門委員会と既存の日・EU間の対話枠組みとを有機的に関連させる取組を通じて、様々な課題に対処していく方策を世界に示し、日・EU経済関係を更に発展させていくことを目指す。

(2)英国

英国のEU離脱について、2018年11月に英国・EU当局間で合意した離脱協定案及び将来関係枠組みに関する政治宣言案の英国議会下院での審議が難航した結果、離脱期限(2019年3月末)が2019年10月末まで延期された。また、メイ首相は、政権内外の反発の強まりを受け、5月に保守党党首辞任を発表、6月に党首を辞任し、党首選挙が行われた。

党首選挙を経て7月に就任したジョンソン首相は、10月末までの離脱実現を掲げEUと交渉し、10月、英国・EU間で離脱協定案及び政治宣言案の修正案に合意した。一方、英国議会下院は、離脱協定案などを承認せず、2020年1月末までの離脱期限延期のEUへの申請を政府に義務付ける法案を成立させた。その後、英国政府からの離脱期限延期申請にEUが同意し、離脱期限は2020年1月末に延期された。

一方、離脱実現を目指すジョンソン首相は、民意を問うとして英国議会下院総選挙の実施を求め、2019年12月に総選挙を実施した。その結果、ジョンソン首相率いる保守党が単独過半数(650議席中365議席)を確保した。英国政府は、総選挙後、離脱協定案の国内実施法案を議会に提出し、同法案は翌2020年1月に成立した。その後、欧州議会で離脱協定案が承認され、同月末、英国のEU離脱を問う国民投票(2016年6月)以来、3年7か月を経て、英国のEU離脱が実現した。EUと英国の間の経済関係を含む将来の関係の在り方については、2020年末までの移行期間中に交渉されることになっており、その結果は世界経済及び日本経済にも大きな影響を与える可能性がある。

経済面では、引き続き英国・EU間の離脱交渉の動向が不確実性リスクとして影響している。2019年7~9月期の経済成長率は、前年同期比ベースで1.1%と低水準だった。失業率は、2019年8~10月期に3.8%と1970年代中盤以降で最も低水準となった。物価上昇率は、2019年10月に前年比1.5%となり、2016年11月以降最も低い伸びとなった。2018年8月に引き上げられた政策金利は、2019年も0.75%に据え置かれている。

英国は、EU離脱を念頭にインド太平洋地域への関与を強化しており、日英両国間では、首脳、外相を始め様々なレベルでの政策協調や交流が進展し、二国間関係が強化されている。1月、安倍総理大臣は英国を訪問し、メイ首相と首脳会談を実施した。両首脳は、2017年8月のメイ首相訪日後の日英関係の大幅な進展を確認し、日英首脳共同声明を発出、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力やルールに基づく開かれた自由貿易体制の維持・拡大に向けた協力の強化などを確認した。また、安倍総理大臣は、6月のG20大阪サミット出席のため訪日したメイ首相と首脳会談を行ったほか、8月のG7ビアリッツ・サミットで、ジョンソン首相と首脳会談を実施した。12月、安倍総理大臣は、総選挙に勝利したジョンソン首相と電話会談を行い、EU離脱後の日英間の新たな経済的パートナーシップ構築や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた日英協力を進めていくことを改めて確認した。

日英首脳会談(8月26日、フランス・ビアリッツ 写真提供:内閣広報室)
日英首脳会談(8月26日、フランス・ビアリッツ 写真提供:内閣広報室)

河野外務大臣は、8月、ASEAN関連外相会議の際、ラーブ外務・英連邦相と外相会談を行った。9月、茂木外務大臣は、訪日したトラス国際貿易相と会談を行い、EU離脱後を見据え、日英間の相互承認に関する交換書簡に署名した。

安全保障・防衛分野では、3月に英国海軍フリゲート「モントローズ」が日本に寄港し、海上自衛隊及び米国海軍と共に、日英米共同訓練(本州南方海空域)を実施した3月、海上自衛隊の補給艦「おうみ」と英国海軍フリゲート「モントローズ」の連携により、東シナ海の公海上で、北朝鮮船籍タンカーが国連安保理決議で禁止されている「瀬取り」を実施していたことが強く疑われる事案を確認した。10月には、英国海軍測量艦「エンタープライズ」が日本に寄港し、日英共同訓練(関東南方海域)を実施したほか、9月から10月には、英国において英国陸軍と陸上自衛隊との共同訓練(「ヴィジラント・アイルズ19」)を実施するなど、アジア及び欧州において、互いに最も緊密な安全保障上のパートナーである日英の安全保障・防衛協力が具体的に進展した。

文化面では、ラグビーワールドカップ2019と2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の二つの大型スポーツ行事を橋渡しする期間を「日英文化季間2019-20」とし、日英両国で様々な関連行事を実施している。

(3)フランス

2017年5月の就任以降、マクロン大統領は国家制度改革やフランス国鉄(SNCF)改革など、国内の様々な改革を推進し、失業率の改善や財政赤字のGDP比3%以下の基準達成など、一定の成果を出してきた。一方、2018年11月には燃料税引上げに関する政府決定を契機に「黄色いベスト運動」と呼ばれる大規模なデモが発生し、格差是正を訴えるデモとしてフランス全土に広がり、一部過激な暴動も発生した。「黄色いベスト運動」で示された国民の不満や要望を聴取するため、2019年1月から3月までマクロン大統領自らがフランス全土で市民と直接対話するなどの「国民討論」を実施した結果、低下傾向にあった大統領の支持率は改善した。一方、12月、マクロン大統領の公約の一つである年金制度改革案をめぐり、鉄道や教員を始めとする労働組合などが反発、フランス全土で大規模なストライキが発生している。外政面では、フランスは議長国として8月に「不平等との闘い」をテーマにG7ビアリッツ・サミットを開催したほか、様々な国際会議で多国間主義を掲げ、気候変動や通商・貿易問題、EU統合の推進などにおいて指導力を発揮した。

日本との関係では、2018年7月から2019年2月にかけて大型日本文化紹介事業「ジャポニスム2018」が開催され、350万人を超える来場者があった。要人往来としては、1月に河野外務大臣がブレスト(フランス)を訪問し、ル・ドリアン欧州・外務相らとの間で第5回日仏外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を実施し、日仏包括的海洋対話の立ち上げやフランス海軍空母「シャルル・ド・ゴール」と海上自衛隊との共同訓練の実施などで一致し、5月には、ベンガル湾において日仏米豪共同訓練「ラ・ペルーズ」を実施した。4月には安倍総理大臣がフランスを訪問し、マクロン大統領と首脳会談を実施し、両国がG20(日本)/G7(フランス)の議長国として、国際社会が直面する諸課題の解決に向け緊密に協力していくことを確認した。6月、G20大阪サミットに先立ち、公式実務訪問賓客として訪日したマクロン大統領と安倍総理大臣との首脳会談において、「『特別なパートナーシップ』の下で両国間に新たな地平を開く日仏協力のロードマップ(2019~2023年)」を発出し、「海洋国家」かつ「太平洋国家」である両国がインド太平洋地域での具体的な協力を推進していくことなどで一致した。また、8月に安倍総理大臣がG7ビアリッツ・サミット出席のためフランスを訪問し、マクロン大統領との間で同年3度目となる首脳会談を実施した。9月、第1回日仏包括的海洋対話がヌメア(フランス領ニューカレドニア)で開催され、海洋ガバナンス、環境、海洋安全保障、ブルーエコノミー、科学の分野における両国の取組や今後の協力の可能性などについて意見交換を行った。

日仏共同記者会見(6月26日、東京 写真提供:内閣広報室)
日仏共同記者会見(6月26日、東京 写真提供:内閣広報室)

(4)ドイツ

ドイツでは、5月末のブレーメン州議会選挙を皮切りに、計四つの州で州議会選挙が行われたが、ブレーメン州議会選挙と同日に行われた欧州議会選挙も含め、大連立政権のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、及び社会民主党(SPD)の二大国民政党は支持率を減らし、旧西ドイツの都市部を中心に緑の党が、旧東ドイツ地域を中心に「ドイツのための選択肢」(AfD)が大きく躍進するという傾向が見られた。

連邦でCDU/CSUと大連立政権を組むSPDでは、6月上旬にナーレス党首が辞任したことを受け、約半年間のプロセスを経て、12月に行われたSPD党大会でエスケン連邦議会議員とヴァルター=ボルヤンス前ノルトライン=ヴェストファーレン州財務相が共同党首として選出された。大連立懐疑派が党首として選出されたことで、当初は連立離脱派が勢いづくことが予想されたが、実際にはSPD党内でも党幹部や連邦議会SPD会派から連立離脱の動きを牽制(けんせい)する声が強まり、党大会の場でSPDの連立離脱は決定されなかった。党大会後も世論調査ではSPDの支持率は低迷が続いており、引き続き大連立政権の今後は不透明な状況となっている。

日本との関係では、2019年は首脳会談が3度、外相会談が4度実施されたほか、シュタインマイヤー大統領が即位礼正殿の儀に参列するため訪日するなど、ハイレベル交流が活発に行われている。2月には、メルケル首相が訪日し、安倍総理大臣と首脳会談を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて協力することで一致したほか、経済分野では自動運転やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)分野での共同研究の強化について一致した。また、ミュンヘン安全保障会議(2月)G7ディナール外相会合(4月)核軍縮と核兵器不拡散条約に関するストックホルム会合(6月)といった多国間会合の場でも外相会談が行われ、二国間関係のほか、アフリカの平和と安定やイラン情勢を始めとした国際情勢について意見交換を実施した。11月には、G20愛知・名古屋外務大臣会合出席のためマース外相が訪日し、茂木外務大臣との間では初となる外相会談を行った。

日独首脳会談(2月4日、東京 写真提供:内閣広報室)
日独首脳会談(2月4日、東京 写真提供:内閣広報室)

(5)イタリア

8月、内政上の対立から、連立与党「五つ星運動」及び「同盟」が連立を解消したが、9月には「五つ星運動」と民主党が連立に合意し、第2次コンテ政権が発足した。

4月、安倍総理大臣がイタリアを訪問し、マッタレッラ大統領を表敬したほか、コンテ首相と首脳会談を行い、日伊防衛装備品・技術移転協定の発効を歓迎し、幅広い分野での関係強化を確認した。その際、コンテ首相から「自由で開かれたインド太平洋」への支持が表明され、両首脳は具体的協力案件形成に向けた連携で一致した。6月には、河野外務大臣と訪日したモアヴェロ=ミラネージ外務・国際協力相との外相会談でも同様の協力が確認された。また、G20大阪サミット出席のためコンテ首相が訪日し、8月に河野外務大臣が国際会議出席のため同国を訪問するなど、活発な要人往来があった。

日伊首脳会談(4月24日、イタリア・ローマ 写真提供:内閣広報室)
日伊首脳会談(4月24日、イタリア・ローマ 写真提供:内閣広報室)

(6)バチカン

11月、ローマ教皇フランシスコが訪日(ローマ教皇としてヨハネ・パウロ2世以来38年ぶり2度目)し、安倍総理大臣との会談を行ったほか、長崎と広島で「核兵器のない世界」の実現に向けたメッセージを発出した(101ページ コラム参照)。

ローマ教皇の訪日
~平和へのメッセージを携え、38年ぶりに訪日~

11月23日から26日の日程で、ローマ教皇フランシスコが訪日し、東京、長崎、広島を訪問しました。今回の訪日は、日本政府及び日本カトリック司教協議会双方の招請に応えて実現したもので、ローマ教皇訪日は、1981年2月のヨハネ・パウロ2世の訪日以来、史上2度目となりました。

ローマ教皇フランシスコは、「空飛ぶ教皇」と呼ばれたヨハネ・パウロ2世に匹敵するほど、積極的に世界中を飛び回り、現場での人々との触れあいを大切にしています。今回の訪日は、2013年の就任から数えて32回目の外遊となります。

かつて母国アルゼンチンの新聞インタビューで、「教皇になってからは気軽にピザを食べに外出することすら難しくなった。」と語り、「バチカンに取り寄せては?」との記者の質問に対し、「テイクアウトではなく、ピザ屋まで食べに行くのがいいんだ。実際に行くことが大事なんだ。」とコメントしたことも、よくその人柄を表しています。

そんなローマ教皇フランシスコですが、訪日時点で82歳ながら、11月23日夕方に前の訪問地であるタイから東京に到着した後、翌24日には早朝に東京を出発して長崎と広島の両県を日帰りで訪問するなど精力的に日程をこなしました。国際平和を希求するローマ教皇は、激しい雨が降る爆心地公園(長崎)や、広島平和記念公園で「核兵器のない世界」の実現に向けた非常に力強いメッセージを発出しました。このメッセージは、日本のみならず世界中の報道で取り上げられ、関心の高さがうかがえました。

広島平和祈念公園(写真提供:広島県)
広島平和祈念公園(写真提供:広島県)

11月25日の東京日程では、天皇陛下との御会見や安倍総理大臣との会談を行ったほか、「要人及び外交団等との集い」(官邸)でのスピーチでは、日本とバチカンの友好関係に触れつつ、日本の文化遺産や伝統文化を特徴付ける宗教的・倫理的価値観に感銘を受けたと述べました。また、同日の東京ドームでの大規模ミサでは、ローマ教皇の来日を心待ちにしていた約5万人の信者や日本国民と交流を行い、他者への思いやりの重要性などについて述べました。

要人及び外交団等との集い(写真提供:内閣広報室)
要人及び外交団等との集い
(写真提供:内閣広報室)

ローマ教皇フランシスコは離日の際に、1,800万人を超えるフォロワーが登録されている自らのツイッターアカウントで、日本語で「日本の皆様に深く感謝」とコメントし、日本人にとって更に身近な存在となりました。2019年はローマ教皇庁が日本への初代駐日使節を任命してから100周年となりますが、この教皇訪日を契機に、日・バチカン関係が一層発展していくことを期待しています。

(7)スペイン

4月の議会選挙で社会労働者党(PSOE)が第一党となったが過半数を獲得できず、サンチェス暫定首相の信任も成立しなかった。11月の再度の議会選挙で第一党を維持したPSOEと急進左派のポデモス連合との連立合意を経て、2020年1月、サンチェス首相が再任され、民主化後、国政における初の連立政権が発足した。

6月、G20大阪サミット出席のためサンチェス首相が訪日し、安倍総理大臣とG20での協力を確認した。10月、安倍総理大臣は即位礼正殿の儀参列のため訪日したフェリペ6世国王陛下と会談した。茂木外務大臣は同行したボレル外務・EU・協力相と外相会談を行い、企業間協力や人的交流を含む幅広い分野での関係強化で一致した。11月、バレンシア州カステジョンで「ソサエティ5.0:人間性を中心に据えたテクノロジー社会」をテーマに、両国の相互理解の促進、協力関係強化を目的とする第21回日本・スペイン・シンポジウムが開催され、官民双方の視点に基づく率直な意見交換が行われた。

安倍総理大臣とフェリペ6世スペイン国王陛下との会談(10月21日、東京 写真提供:内閣広報室)
安倍総理大臣とフェリペ6世スペイン国王陛下との会談
(10月21日、東京 写真提供:内閣広報室)

(8)ウクライナ

ポロシェンコ大統領の任期満了を受けて3月に行われた大統領選挙一次投票の結果、4月にゼレンスキー候補(30.24%)及びポロシェンコ候補(15.95%)の上位2人による決選投票が実施され、ゼレンスキー候補(73.22%)がポロシェンコ候補(24.45%)に勝利し、5月20日に新大統領に就任した。ゼレンスキー大統領は、大統領就任直後に最高会議の解散を表明、7月に実施された繰り上げ最高会議選挙では同大統領が率いる「国民奉仕者党」が過半数の議席を獲得して単独与党となり、8月には新議会によりホンチャルク新内閣が組閣された。

ゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部で停戦が履行されていないことに伴う不安定な状況の継続を打開すべく、ロシアとの対話姿勢を表明した。プーチン大統領との複数回の電話首脳会談を経て、9月には2018年11月にケルチ海峡付近で拘束された24人を含む双方35人ずつの被拘束者の交換が実現した。10月にはウクライナ東部被占領地域での地方選挙実施と特別地位法の発効のタイミングなどを定めた「シュタインマイヤー・フォーミュラ」に関する合意が実現するなど、ミンスク合意の履行に向けた解決努力が継続している。12月には約3年ぶりとなるノルマンディ・フォーマット(フランス・ドイツ・ロシア・ウクライナ)首脳会談が実現し、年内の完全停戦などで合意するとともに、4か月後に同首脳会談を再度実施する方向で調整が継続されることとなった。

日本との二国間関係に関しては、7月にトロント(カナダ)において開催された「ウクライナの改革に関する国際会議」に山田賢司外務大臣政務官が出席し、日本としてウクライナ新政権の国内改革に向けた努力を引き続き支援していくと表明した。安倍総理大臣は、10月の即位礼正殿の儀に際して訪日したゼレンスキー大統領と初の首脳会談を行い、ウクライナ情勢や今後の対ウクライナ支援などについて意見交換を行った。

その他の欧州地域

【北欧諸国】

デンマーク:6月の総選挙で、フレデリクセン社民党党首がデンマーク憲政上最年少(41歳)で首相に就任し、新政権が成立。8月、フェロー諸島自治議会選挙が実施され、連合党のニールセン党首率いる新政権が成立。

フィンランド:2019年、日本とフィンランドは外交関係樹立100周年を迎え、両国で様々な記念行事を開催(106ページ 特集参照)。9月、日・フィンランド社会保障協定に署名。10月には、安倍総理大臣が即位礼正殿の儀参列のため訪日したニーニスト大統領と会談を実施し、両首脳は、外交関係樹立100周年を機とする二国間関係の更なる強化と戦略的パートナーシップに基づく幅広い分野での協力推進を確認。

ノルウェー:12月のASEM外相会合に際し、茂木外務大臣は、ソーライデ外相と会談を実施し、捕鯨分野における協力の一層の強化への希望を述べ、両大臣は北極と捕鯨などの分野での更なる協力推進に一致。

スウェーデン:4月、日・スウェーデン社会保障協定に署名。6月、河野外務大臣は、スウェーデンを訪問した際、ヴァルストローム外相と会談を実施し、2018年の外交関係樹立150周年を踏まえ、引き続き幅広い分野で協力していくことで一致。12月、茂木外務大臣は、ASEM外相会合の際、リンデ外相と会談を実施し、両大臣は経済を含めた二国間関係の更なる発展を期待すると発言。

アイスランド:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したヨハネソン大統領と会談を実施し、北極など幅広い分野での両国間の協力の進展を歓迎。


【ベネルクス諸国】

オランダ:1月、安倍総理大臣がオランダを訪問し、ルッテ首相との首脳会談でG20大阪サミットでの協力及び「持続的な平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ」を踏まえた協力強化を確認。6月には、ルッテ首相が訪日し、G20大阪サミットに出席。11月、茂木外務大臣は、G20愛知・名古屋外務大臣会合出席のため訪日したブロック外相と外相会談を実施し、ワーキング・ホリデー制度導入の目処が立ったことを歓迎し、幅広い分野での緊密な協力を確認。

ベルギー:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したフィリップ国王陛下と会談を実施し、良好な皇室・王室関係に基づき、二国間関係を様々な分野で発展させたいと述べ、フィリップ国王陛下からは、今後の両国関係の発展を願うと発言。

ルクセンブルク:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したアンリ大公殿下と会談を実施し、政治、経済、文化、人的交流などあらゆる分野で両国の関係を発展させたいと述べ、両者は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けた協力を確認。


モナコ:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列及びラグビーワールドカップ2019観戦のため訪日したアルベール2世公殿下と会談を実施し、文化交流など良好な二国間関係や海洋プラスチックごみ対策に関する意見交換を実施。

アンドラ:10月、茂木外務大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したウバック・フォン外相と史上初の外相会談を実施し、観光など幅広い分野での交流拡大に向けた関係強化を目指すことで一致。

ポルトガル:10月、共和国議会選挙が実施され、同月、第二次コスタ社会党政権が発足。2020年は日本・ポルトガル修好160周年。

サンマリノ:12月、サンマリノ大評議会(議会に相当)が総選挙を実施し、2020年1月、ベッカーリ外務・国際経済協力・通信長官を首班とする新政権が発足。

マルタ:2018年及び2019年の両国の友好議員連盟の発足により、議会交流が活発化。2019年には日・マルタ友好議員連盟によるマルタ公式訪問が実現し、ヴェッラ大統領を表敬。


【バルト3国】

2018年1月に安倍総理大臣がバルト3国を訪問した際に立ち上げられた日・バルト協力対話の第2回会合が、2019年9月、ラトビアで開催され、先進技術を活用した連結性の強化及び地域情勢などに関する意見交換を行い、日・バルト間の協力関係強化を確認。

ラトビア:2月、河野外務大臣は、ミュンヘン安全保障会議の機会にリンケービッチ外相と会談を行い、日・バルト協力対話を通じた日・バルト間の協力促進を確認。10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したレヴィッツ大統領と会談を実施し、両国経済関係の強化で一致。

リトアニア:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したナウセーダ大統領と会談を実施し、杉原千畝氏の「命のビザ」発給から80年に当たる2020年の機会に共通の価値観や絆を協力して発信していきたいと述べ、両首脳は、二国間関係の更なる強化と国際社会の諸課題に関する緊密な連携を確認。

エストニア:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したカリユライド大統領と会談を実施し、日・バルト協力対話を通じた協力やIT・サイバー分野における官民の協力などの更なる発展で一致。


アイルランド:10月、安倍総理大臣は、即位礼正殿の儀参列のため訪日したオドノバン上院議長の表敬を受け、ラグビーワールドカップ2019での両国の健闘を称えるとともに、二国間関係について意見交換を実施。12月、茂木外務大臣は、ASEM外相会合の機会にコーヴニー副首相兼外務・貿易相と外相会談を実施し、英国のEU離脱を見据えた幅広い分野での二国間関係の強化及び国際場裡での連携強化を確認。

世界地図(北欧諸国、ベネルクス諸国、バルト3国)

【V4】

日本は、堅実な経済成長を背景に欧州での存在感を増すポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの4か国による地域協力の枠組みであるヴィシェグラード4(V4)との協力関係を重視。4月、グローバル経済と自由貿易に関する「V4+日本」セミナーを実施、安倍総理大臣のスロバキア訪問の機会に、3回目となる「V4+日本」首脳会合を前年に続き開催するなど、「日+V4」協力を一層強化。

ポーランド:2019年は日・ポーランド国交樹立100周年(106ページ 特集参照)。4月、スロバキアで安倍総理大臣とモラヴィエツキ首相が首脳会談を実施。10月には議会選挙が行われ、再任されたモラヴィエツキ首相の下、新内閣が発足。

スロバキア:4月に安倍総理大臣が日本の総理大臣として初めてスロバキアを訪問。ブラチスラバで第3回「V4+日本」首脳会合及び日・スロバキア首脳会談を実施。9月にはライチャーク外務・欧州問題相が訪日し、河野外務大臣と外相会談を実施。即位礼正殿の儀の際にはチャプトヴァー大統領が訪日し、安倍総理大臣と会談を行い、100周年に向けた協力強化で一致するなど政治対話が活発化。2020年は、日・スロバキア交流100周年。

チェコ:7月からV4議長国に就任。2019年、安倍総理大臣とバビシュ首相は、4月の安倍総理大臣のスロバキア訪問時、即位礼正殿の儀参列のためバビシュ首相が訪日した際の2度にわたり首脳会談を実施し、2020年の日・チェコ交流100周年に向け、二国間交流を活発化させていくことで一致。12月、茂木外務大臣は、ASEM外相会合の機会にペトシーチェク外相と会談を実施し、二国間関係の強化及び「V4+日本」協力の促進を確認。

ハンガリー:2019年は、日・ハンガリー外交関係開設150周年(107ページ 特集参照)。11月にはシーヤールトー外務貿易相が訪日し外相会談を、12月にはオルバーン首相が訪日。首脳会談では、二国間の連携を更に強化し、「V4+日本」協力の継続・強化を確認。

世界地図(V4、西バルカン諸国、GUAM)

【西バルカン諸国】

西バルカン地域では、民族間の対立が依然として残っているものの、各国はEU加盟に向けた改革に取り組むなど、全体としては、安定と発展に向けて進展。2018年1月、安倍総理大臣が日本の総理大臣として初めてセルビアを訪問し、EU加盟を目指す西バルカン諸国(アルバニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア及びモンテネグロ)との協力を進める「西バルカン協力イニシアティブ」を発表し、青年交流、経済交流などの分野で西バルカン地域全体との協力を促進。日本との関係では、8月の河野外務大臣のセルビア訪問、9月のサチ・コソボ大統領の訪日が実現。さらには、10月、即位礼正殿の儀参列のため訪日したメタ・アルバニア大統領、サチ・コソボ大統領、ジュカノビッチ・モンテネグロ大統領、ブルナビッチ・セルビア首相が安倍総理大臣とそれぞれ会談を実施し、各国との二国間関係の強化と「西バルカン協力イニシアティブ」の下での支援を確認。


【GUAM(ジョージア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバ)】

3月に「投資促進」をテーマとしたワークショップを東京で開催。12月にはブラチスラバ(スロバキア)で中谷外務大臣政務官とエフェンディエフGUAM事務局長が会談し、これまでの日本の対GUAM協力を受けて、「GUAM+日本」共同プレスリリースを発出。


ベラルーシ:6月の薗浦健太郎総理補佐官、渡辺博道復興大臣のベラルーシ訪問、12月のヴァシチェンコ非常事態相の訪日などハイレベルで相互に訪問。

スロベニア:8月、日本の外務大臣として初めて河野外務大臣がスロベニアを訪問し、ツェラル外相と会談を行うとともに、パホル大統領を表敬。10月には6年ぶりにパホル大統領が即位礼正殿の儀参列のため訪日、安倍総理大臣と会談を実施し、政治経済関係を始め、科学技術分野でも二国間関係を拡大していくことで一致した。

ルーマニア:10月のヨハニス大統領の訪日の際に首脳レベルで、12月のASEM外相会合の際に外相レベルでそれぞれ会談を実施し、2021年の外交関係樹立100周年に向けて協力を強化していくことで一致。

ブルガリア:交流開始110周年、外交関係樹立80周年、外交関係再開60周年の「3つの周年」となる2019年、3月にザハリエヴァ副首相兼外相が訪日、また8月には河野外務大臣がブルガリアを訪問し、外相会談を実施。さらには、10月にラデフ大統領が訪日し、安倍総理大臣と会談を実施。経済関係の強化、「西バルカン協力イニシアティブ」の下での連携を確認。

クロアチア:3月にペイチノビッチ=ブリッチ外務・欧州問題相が訪日、6月にヤンドロコビッチ議会議長が訪日。また8月には、日本の外相としては、24年ぶりに、河野外務大臣がクロアチアを訪問し、グルリッチ=ラドマン外務・欧州問題相と会談、EUと西バルカンの架け橋であるクロアチアとの連携強化を確認。

オーストリア:2019年は、日・オーストリア友好150周年(107ページ 特集参照)。2月、クルツ首相が訪日し、安倍総理大臣と首脳会談を実施。3月にはクナイスル外相が第5回国際女性会議(WAW!)出席のため訪日し、阿部俊子外務副大臣と会談を実施。5月、シュトラッヘ副首相兼自由党党首のスキャンダルに起因して内閣不信任案が可決され、ビーアライン新首相の下で暫定政権が成立。9月末に下院選挙が行われ、クルツ党首率いる国民党が勝利。

リヒテンシュタイン:10月の即位礼正殿の儀に参列するため、アロイス皇太子殿下が訪日。

スイス:6月、マウラー大統領兼財務相が訪日し、安倍総理大臣と首脳会談を実施したほか、7月には、パルムラン経済・教育・研究相が訪日し、辻清人外務大臣政務官と意見交換を実施。

ギリシャ:6月に薗浦総理大臣補佐官がギリシャを訪問したほか、6月には河野外務大臣は訪日したカトゥルガロス外相と外相会談を実施。7月の総選挙では新民主主義党(ND)ミツォタキス首相による単独政権が発足。

キプロス:2018年1月の日本国大使館開設に続き、2019年9月には、在京大使館が開設。2020年の国交樹立60周年に向けて一層の関係強化を期待。

日・ポーランド国交樹立100周年/日・フィンランド外交関係樹立100周年
~秋篠宮皇嗣同妃両殿下の両国御訪問~

ヨーロッパ有数の親日国であるポーランドは、18世紀に領土を分割され、一度は世界地図から消滅するという苦難の歴史を乗り越え、第一次世界大戦終戦の1918年、123年ぶりに独立を回復しました。翌1919年3月、日本はアジアで最初にポーランド共和国政府を承認し、国交を樹立しました。

時を同じくして、1919年5月に日本と外交関係を樹立したのが、1917年にロシアからの独立を果たしたフィンランドです。地図で見ると、日本から遙(はる)か遠い印象があるフィンランドですが、今や日本の国内5空港(2019年12月時点)から首都ヘルシンキへの直行便が飛び、日本から最短時間で行ける最も近い欧州です。また、フィンランドは「ムーミン」や「サンタクロース」を通じて日本人にも親しまれています。

秋篠宮皇嗣同妃両殿下の御訪問

ポーランドとフィンランドが日本との国交樹立・外交関係樹立100周年を迎えた2019年には、一年を通して様々な記念行事が行われました。中でも秋篠宮皇嗣同妃両殿下の両国への御訪問(6月27日から7月6日まで)は、長年の両国との友情を象徴するものとなりました。

両殿下は、ポーランドのドゥダ大統領夫妻、フィンランドのニーニスト大統領夫妻から温かい歓迎を受け、表敬訪問や午餐会(ごさんかい)を通じて親交を深められたほか、日本と関係の深い機関や施設、訪問国の文化や歴史を代表する多くの場所を訪問されました。例えば、ポーランドでは日本美術・技術博物館(通称マンガ館)、フィンランドでは同国特有の子育て支援施設である「ネウヴォラ(フィンランド語で「アドバイスの場所」の意)」などを視察され、各分野の専門家や有識者と交流の機会を持たれました。また、御訪問先では、出迎えた市民の方々や子供たちと直接言葉を交わされるなど、心温まる交流を持たれました。

秋篠宮皇嗣同妃両殿下によるポーランド・フィンランド御訪問は、両国との長年にわたる友好親善関係を再確認するとともに、新たな100年に向けて、両国との友好の絆(きずな)を更に深め、明るい未来を感じさせるものとなりました。

ドゥダ・ポーランド大統領夫妻を表敬訪問された秋篠宮皇嗣同妃両殿下(6月28日、ポーランド・ワルシャワ 写真提供:宮内庁)
ドゥダ・ポーランド大統領夫妻を表敬訪問された秋篠宮皇嗣同妃両殿下(6月28日、ポーランド・ワルシャワ 写真提供:宮内庁)
ニーニスト・フィンランド大統領夫妻を表敬訪問された秋篠宮皇嗣同妃両殿下(7月3日、フィンランド・ヘルシンキ 写真提供:宮内庁)
ニーニスト・フィンランド大統領夫妻を表敬訪問された秋篠宮皇嗣同妃両殿下(7月3日、フィンランド・ヘルシンキ 写真提供:宮内庁)
人道の港 敦賀ムゼウム

また、ポーランドと日本の間では、2020年にもう一つの大切な出来事から100周年を迎えます。ロシア革命の混乱の中、飢餓と疫病の中で苦しんでいたシベリアのポーランド人孤児を救出したのが日本政府及び日本赤十字社でした。1920年から1922年にかけて、福井県の敦賀港に上陸した763人の孤児たちは、東京や大阪での療養生活を経て、祖国へ戻って行ったのです。また、敦賀港はポーランド孤児だけでなく、1940年代にナチス・ドイツなどの迫害から逃れてきたユダヤ難民が上陸した港でもあります。2020年秋、敦賀市にはこれらの出来事を伝える資料館「人道の港 敦賀ムゼウム」がリニューアルオープンし、困難な時代に多くの人々を迎え入れた歴史を国内外に発信しています。

日本とポーランド及びフィンランドは、一世紀にわたる信頼と友情を礎に、次の100年に向けて新たな友好の歴史を刻み始めています。2020年以降も両国との相互理解が更に深まっていくことが期待されます。

日・オーストリア友好150周年/日・ハンガリー外交関係開設150周年
~佳子内親王殿下の両国御訪問~

2019年は、日本がオーストリア=ハンガリー二重帝国との修好通商航海条約に調印(1869年)してから150年という節目の年でした。これまでの150年間、日本と両国は、政治経済分野のみならず、学術・文化スポーツなど幅広い分野において、緊密な関係を築いてきましたが、2019年には、日本とオーストリア・ハンガリー双方において様々な交流事業が行われ、両国民の相互理解が特に進みました。

この記念すべき日・オーストリア友好150周年及び日・ハンガリー外交関係開設150周年という年に、佳子内親王殿下は、初めての公式外国訪問として、9月15日から25日まで、両国を訪問されました。

佳子内親王殿下は、オーストリアのファン・デア・ベレン大統領やビーアライン首相など政府要人から歓待を受けられ、これまでの両国の150年の歩みを振り返りながら、良好な二国間関係を更に発展させていくことの重要性を確認されました。また、150周年記念レセプションやシェーンブルン宮殿の日本庭園修復記念式典などの行事に臨席され、日・オーストリア両国関係に尽力された各界の方々と交流され、これまでの貢献に敬意を表されました。

ハンガリーでも、佳子内親王殿下はアーデル大統領御夫妻やクヴェール国会議長のほか、ハンガリー・日本友好議員連盟の方々から歓待を受けられました。また、首都・ブダペストのほか、パンノンハルマ、バーボルナ、ヘレンド、ティハニなど各地を視察され、市民との交流も深められました。150周年記念夕食会では、日本の勲章・褒章や外務大臣表彰を受賞された方々と懇談の機会をもたれました。また、150周年を記念してドナウ川に架かるエリザベート橋の主塔に両国の国旗がライトアップされ、佳子内親王殿下は、ブダペスト市長夫妻と共に、多くの先人たちによって紡がれてきた両国関係の歴史に思いを馳(は)せられました。

佳子内親王殿下によるオーストリア・ハンガリー御訪問は、日本と両国の人々が長年にわたり築き上げた友好の軌跡を振り返り、その友好の歴史を未来につなげ、更なる親善関係の強化を確認するものとなりました。

オーストリア首相府でのビーアライン首相との記念写真撮影(9月18日、オーストリア・ウィーン)
オーストリア首相府でのビーアライン首相との記念写真撮影(9月18日、オーストリア・ウィーン)
アーデル・ハンガリー大統領夫妻を表敬訪問される佳子内親王殿下(9月20日、ハンガリー・ブダペスト 写真提供:ハンガリー大統領府)
アーデル・ハンガリー大統領夫妻を表敬訪問される
佳子内親王殿下(9月20日、ハンガリー・ブダペスト 写真提供:ハンガリー大統領府)
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