ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和7年1月7日
評価年月日:令和6年9月10日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志
1 案件名
1-1 供与国名
コンゴ民主共和国(以下、「コンゴ(民)」という。)
1-2 案件名
マタディ橋及びマタディ橋アクセス道路補修計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、中央コンゴ州において、マタディ橋の橋面舗装の補修及びアクセス道路の修復・整備を行うことにより、安定的な物流及び交通の確保を図り、もってコンゴ(民)の経済開発に寄与する。
供与限度額は、24.12億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)コンゴ(民)(一人当たり国民総所得(GNI)660ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
- (2)コンゴ(民)は、サブサハラ・アフリカ第1位の国土面積及び第3位の人口を擁する中部アフリカの主要国であり、コンゴ川流域の肥沃な土地は潜在的な農業生産能力が高い。豊かな水資源による水力発電ポテンシャル(約10万MW、世界第3位)や豊富な鉱物資源等を有する資源国である一方で、1990年代から2000年代初期にかけた国内紛争及びそれに続く混乱の時期の影響により、現在でも社会の復興に向けた様々な課題を抱えている。
- (3)マタディ橋は我が国の円借款により1983年に開通したコンゴ川下流域に架かる同国唯一の橋梁であり、日・コンゴ(民)二国間関係の象徴となっている。また同橋は、マタディ市内交通の利便のみならず、中央コンゴ州内の複数の海港・河川港、首都を繋ぐ陸運の要衝として重要な役割を担っている。
- (4)マタディ橋の維持管理は、施工関係者やJICA技術協力事業により派遣された専門家等から継続的な技術移転を受けつつ、実施機関であるバナナ・キンシャサ交通公団が自立的に担ってきたが、1983年の開通から既に41年が経過して経年劣化が進んでおり、舗装が損傷し橋面舗装の打換が必要な状況にある他、アクセス道路の排水ができておらず路面の損傷が生じている。処置を講じない場合は、雨水浸透による銅床版や結合部ボルト等の錆や腐食による更なる損傷が進み、大規模な費用や交通遮断を伴う橋梁の全面改修を余儀なくされる可能性が高い。他方で橋面舗装打換は高度な品質管理が求められるため、同国内で施工可能な業者がおらず、実施機関もノウハウを有さない状況にある。
- (5)コンゴ(民)政府は、運輸インフラの整備・維持管理不足に起因する高い陸上輸送コストや延着等が社会・経済発展の阻害要因となっているとの問題認識の下、国家開発戦略計画(2019-2023)の重点分野に「インフラ整備」を掲げ、その一環として既存インフラの改修・保全に取り組んでいる。また、我が国の対コンゴ(民)国別開発協力方針(2017年9月)において、重点分野「経済開発」の下、「経済インフラ開発」を開発課題として定めているほか、2022年8月に開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)においても、自由で開かれた国際経済システムの強化に向けた質の高いインフラ投資への支援を行う旨表明しており、本計画は右表明を具体化するものとして、実施する必要性は高い。また、基幹運輸インフラの保全を通じて物流・交通の安定化に資するものであり、SDGsゴール9(産業と技術革新の基盤構築)に貢献する。
2-2 効率性
コンゴ(民)政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。具体的には、緊急性があり早急に対応すべき箇所として、橋梁本体、右岸側アクセス道路のみを事業対象とすることとした。また、全区間の再舗装ではなく損傷が著しい箇所のみを対象とすることとしコスト縮減を図った。
2-3 有効性
本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア 一日当たりの平均断面交通量(二輪車を除く)が、2,274台から3,520台に増加する。
- イ 一日当たりの平均断面交通量(貨物車両のみ)が、272台から864台に増加する。
- ウ 年間車両旅客人数が、123万人から165万人に増加する。
- エ 年間貨物輸送量が、62万トンから287万トンに増加する。
- オ プロジェクト区間の通過時間が、14.1分から10.3分に減少する。
- カ プロジェクト区間の平均可能走行速度が、36.2キロメートル毎時から40.0キロメートル毎時に増加する。
- (2)定性的効果
物流・交通の安定化、損傷の進行による補修規模の増大とそれによる大規模補修工事中の通行止め・通行規制・事故の回避、周辺地域及び同国の連結性強化及び持続的な経済成長が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)コンゴ(民)政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)TICADプロセスを踏まえた最近10年間の日本の対アフリカ支援評価報告書(2017年度・第三者評価)