ODA(政府開発援助)

令和6年11月21日

評価年月日:令和6年4月11日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件名

1-1 供与国名

 エチオピア連邦民主共和国(以下、「エチオピア」という。)

1-2 案件名

 シダマ州における中等学校整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、シダマ州において、ジェンダーに配慮した後期中等学校の新設及び教育用機材等の整備を行うことにより、対象地域における後期中等教育課程へのアクセス及び学習環境の改善を図り、もって同州の教育の質向上及び女子生徒の教育推進に寄与するもの。
 供与限度額は、14.63億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)エチオピア(一人当たり国民総所得(GNI)1,020ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)エチオピア政府は、1997年以降、教育セクター開発5年プログラムI~VIを策定し、公教育へのアクセス改善、教員の人材育成、教材改訂を通じた教育の質改善等に取り組んでいる。その結果、初等教育及び前期中等教育(1-8年生)の純就学率は、2020/21年には89.7%に達した。一方、後期中等教育(9-12年生)の純就学率は29.5%に留まっている(2020/21年、エチオピア教育省教育統計年次概要)。後期中等教育の就学率が低い最大の要因として、学校数・教室数の不足が挙げられる。2020/21年には就学対象人口約41万人に対して、公立後期中等学校数は113校のみであり、学校インフラの不足は特に地方部において顕著となっている。
  • (3)また、同国における後期中等教育課程の女子生徒の純就学率は、29.3%(2020/21年教育統計年次概要)とサブサハラアフリカ男女平均42%と比較しても低い(2021年、UNESCO)。女子就学者のアクセス不足には様々な要因があり、社会経済的・文化的な障壁や、自然災害、紛争、学齢期の労働等が原因として挙げられている。特に、性別に配慮した施設・設備を伴う学校施設の不足が課題とされている。
  • (4)本計画の対象地であるシダマ州は、2020年に実施された住民投票によって旧南部諸民族州から独立した比較的新しい州である。同州では、後期中等教育への純就学率(2020/21)は39.4%(男子42.6%、女子36.1%)と全国平均29.5%(男性29.7%、女性29.3%)より高い。他方で、後期中等教育課程における同州(19県及び1特別市)の1教室当たりの生徒数は平均59人(標準人数:40人)である。特に、本計画の建設予定地5郡の平均は、82.5人と全国平均47.5人と比較して遥かに超過しており、後期中等学校の建設とともに過密な学習環境の改善が喫緊の課題となっている。
  • (5)我が国の対エチオピア国別開発協力方針においては、重点分野として「学校施設の改善を通じた地域格差是正と中等教育ニーズへの対応」を掲げており、本計画は同方針に合致する。また、我が国は第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において「教育(若者や女性を含めた人材育成)」に取り組んでいく旨表明しており、本計画は同表明の具体化に資するものである。さらに、SDGsゴール4(教育)及びゴール5(ジェンダーの平等)にも貢献するものと考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
  • (6)エチオピアの人口の4%を占めるシダマ族は、オロモ、アムハラ、ソマリ、ティグライに次いで、同国で5番目に人口規模の大きい民族である。民族連邦制を導入している同国は、民族自治権を憲法で保障しつつも国の統一という課題に直面しており、シダマ州に対する支援は、同国の社会基盤整備を通じた安定したガバナンス構築に寄与することが期待できることから、実施の意義が高い。

2-2 効率性

  • (1)本件は、エチオピアにおける類似の無償資金協力「南部諸民族州小中学校建設計画」(総事業費13.10億円。10校の新設及び11校の増設)と比較して平米単価がやや低く、その妥当性が認められる。
  • (2)対エチオピア技術協力「科学技術のための算数・数学理解プロジェクト」(2019年3月~2023年8月)では、中等数学カリキュラムと教科書の改訂支援を行った。本事業で建設される中等学校においても、同技術協力で改訂されたカリキュラムと教科書が活用されることから両者の相乗効果が期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 対象学区において仕様を満たした月経衛生棟(MHMルーム)と清潔なトイレを使える女子生徒数が、0人から1,800人になる。
    • イ 対象学区で新たに学校に通うことができる年間生徒数が、0人から3,600人になる。
  • (2)定性的効果
    • ア ジェンダーに配慮したトイレを含む学校施設を整備することにより、衛生環境及び学習/就学環境が改善される。
    • イ 女子生徒の通学意欲向上及び就学意欲が向上する。
    • ウ ジェンダーに配慮した学習環境及び学校運営改善に取り組むモデル校としての機能を果たす。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)エチオピア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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