ODA(政府開発援助)

令和6年9月17日

評価年月日:令和6年7月4日
評価責任者:国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭

1 案件名

1-1 供与国名

 ミクロネシア連邦(以下「ミクロネシア」という。)

1-2 案件名

 ポンペイ港拡張計画

1-3 目的・事業内容

 ミクロネシア最大の港であるポンペイ港において、岸壁等を整備することにより、同港湾における混雑緩和及び安全性の向上を図り、もって同国における海上交通・物流の改善に寄与する。
 供与限度額は45.97億円

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ミクロネシア(一人当たり国民総所得(GNI)4,130米ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類されている。
  • (2)ミクロネシアは、607の島々、4つの州から構成される島嶼国であり、地理的特性から、海上物流は国民生活の維持に欠かせないものとなっている。なかでも、ポンペイ港は、同国において漁港と商業港の機能を併せ持つ、同国で最大の港湾である。特に漁船(まき網漁船、はえ縄漁船、漁獲物運搬船等)の年間寄港数は、年々増加している。
  • (3)ポンペイ港では岸壁の中央部を貨物船及び漁獲物運搬船専用とし、その両端部を漁船用として運用しているが、急増する漁船の受入れに対応するため、貨物船及び漁獲物運搬船等の寄港がない時は岸壁の全面で漁船を係留している。貨物船及び漁獲物運搬船等の寄港時には、係留している漁船を本港より西へ2.5キロメートル離れた投錨地に退避させる必要があり、その際サンゴ礁により航路が狭隘な箇所が多いため、漁船同士の接触事故が発生しており、港内の安全性の確保が課題となっている。
  • (4)こうした状況を踏まえ、同国運輸通信インフラ省は「インフラ開発計画2016‐2025(Infrastructure Development Plan)」において、漁船及び商業船のニーズを満たす埠頭の整備を重点課題として掲げ、我が国に対し係る緊急の要望を行った。
  • (5)本事業は、最大の港であるポンペイ港において、岸壁等を整備し、海上交通・物流の改善を図るものである。
  • (6)本計画は、2021年7月の第9回太平洋・島サミット(PALM9)の重点分野「持続可能で強靭な経済発展の基盤強化」に合致し、当国最大の港であるポンペイ港湾内における混雑緩和及び安全性の向上を図り、もって海上物流の改善に寄与することから、「「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のための新たなプラン」における第三の柱「多層的な連結性」に該当する。また、対ミクロネシア国別開発協力方針(2019年4月)では、重点分野「脆弱性の克服」にて「経済成長基盤の強化」を掲げ「経済・社会インフラ整備・維持管理能力強化」に力を入れるとしており、同方針にも合致する。
  • (7)ミクロネシアの所得水準は相対的に高いことから、「所得水準が相対的に高い国に対する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき、無償資金協力の供与の適否について精査が必要である。本件は漁船同士の接触事故が発生しており、港内の安全性の確保が急務であることから、緊急性が高い(「緊急性・迅速性」)。また、ミクロネシアは、小島嶼国であり、気候変動や自然災害に対する脆弱性を抱えている(「環境的脆弱性」)ことに加え、国内市場が小さく、国際市場から地理的に遠いなど、経済的にも脆弱である(「経済的脆弱性」)。さらに、ミクロネシア政府のハイレベルから累次にわたり要請を受けていることから、本計画の実施は二国間関係の強化にも資する(「外交的視点」)。また、本計画は産業基盤強化に資するものであり、SDGsゴール8(包摂的で持続可能な経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ構築)に貢献すると考えられる。
     上記を踏まえ、無償資金協力として本計画を実施する意義は高い。

2-2 効率性

 ミクロネシア政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。グラブ付クレーンにより陸上から浚渫を行うことで浚渫船の回航費を削減する、事業サイトにある既存施設の撤去及び新埠頭におけるフェンスの設置等は先方負担とする等、増額抑制を図った。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2023年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 退避したまき網漁船の延べ隻数が、351隻/年から136隻/年となる。
    • イ 1隻以上のまき網漁船の退避が発生する日数の割合(注1)が、16%から8%となる。
    • ウ 寄港した運搬船のうち、混雑のため海上にてCIQ(注2)を実施した隻数の割合が、13%から5%となる。
    • 注1:まき網漁船の年間寄港日数を分母とする。
    • 注2:C(税関:Customs)、I(出入国管理事務所:Immigration Office)、Q(検疫所:Quarantine
  • (2)定性的効果
    • 入出港時及び退避時の安全性の向上。
    • 貨物船及び漁船の円滑な航行による海上物流の改善。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ミクロネシア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)太平洋島嶼国のODA案件に関わる日本の取組の評価(2015年度・第三者評価)
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