ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和6年4月8日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志
1 案件概要
(1)供与国名
トルコ共和国(以下、「トルコ」という。)
(2)案件名
緊急震災復興計画
(3)目的・事業内容
トルコ南東部を震源とする地震により被害を受けた上下水道等の公共インフラ、救急ステーション(救急車の配備を含む)、住宅等の修復・新設を行い、同地域の震災からの復旧・復興を支援する(セクターローン)。
- ア
- 主要事業内容
- (ア)公共インフラの修復・新設
- (イ)救急ステーションの修復・新設及び救急車の整備
- (ウ)住宅等の修復・新設
- (エ)コンサルティングサービス
- イ
- 供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件 600億円 0.2% 40(10)年 一般アンタイド
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- 環境社会配慮
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)上、融資承諾前にサブ・プロジェクトが特定できず、かつ、そのようなサブ・プロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるためカテゴリFIに該当する。また、同ガイドライン及びトルコ国内法に基づき、サブ・プロジェクト毎にカテゴリ分類を行い、該当するカテゴリに必要な対応策をとる予定。なお、サブ・プロジェクトのうち「公共インフラの修復・新設」については、カテゴリAに該当する案件は含まれない。また、「救急ステーションの修復・新設及び救急車の整備」及び「住宅等の修復・新設」については、カテゴリA及びB案件は含まれない。 - イ
- 外部要因リスク
特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
2023年2月6日、午前4時17分(日本時間午前10時17分)頃、トルコ南東部においてマグニチュード7.8の地震が発生し、国内で5万人以上が死亡、11万5,000人以上が負傷した(トルコ政府発表)。 今般の地震の被災地域(アダナ県、ハタイ県、カフラマンマラシュ県、ガジアンテップ県、アドゥヤマン県、シャンルウルファ県、ディヤバルク県、エラズー県、マラティヤ県、キリス県、オスマニエ県等)のうち、特に被害が甚大だった5県では50万以上の公共インフラや施設等に被害が生じ、同地域の住宅約52万戸が全壊し、330万人が他地域に避難し、約200万人が被災地でテントや仮設住宅での生活を余儀なくされている。 さらに、上下水道等の基盤インフラ被害に対する修復・新設等に約34.5億ドル、医療サービスへのアクセス確保に重要な救急車や救急ステーションの復旧等に約67億ドル、住宅セクターにおける被害額は、約569億ドルと試算されている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国は、対トルコ国別開発協力方針(2018年9月策定)において、重点分野「経済を支える強靱な社会基盤づくりへの支援」の中で、「トルコが依然として直面する課題である都市環境の改善や科学技術分野の高度化、産業人材育成、地域間格差の是正、防災・災害対策のための支援を行う」としており、本計画は当該方針に合致するとともに、SDGsゴール3(保健)、ゴール6(持続可能な水・衛生管理)、ゴール9(強靱なインフラの構築)、ゴール10(不平等の是正)、ゴール11(持続可能な都市づくり)及びゴール16(平和で包括的な社会の実現)に貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
また、我が国は、2023年3月にブリュッセルで開催されたEU及びスウェーデン主催のドナー会合において、東日本大震災の経験も踏まえつつ、トルコへの国際緊急援助隊の派遣や緊急援助物資の供与のほか、今後同国への更なる資金協力を具現化していくとともに、日本の有する優れた防災・復興技術や知見を活かして貢献していく旨を宣言しており、本計画は、同国の開発ニーズ及び我が国の支援方針に合致するとともに、本計画の実施は良好な二国間関係の維持・強化に資することから、外交上の意義も大きい。
(2)効率性
過去の自然災害に対する復旧支援事業から、事業実施に当たっては、ア 先方関係機関で構成する進捗管理委員会の立ち上げと定期的な開催、イ 復旧・復興需要に伴う物価の高騰、ウ 新たな災害リスクを踏まえた復興支援等に配慮する必要があるとの教訓が得られている。これらを踏まえ、本計画では、ア 円滑な事業実施のための実施・モニタリング体制の構築、イ 資材・人件費の高騰を考慮した予備費の確保及びサブ・プロジェクトの決定、ウ 現在のトルコ耐震基準を遵守した「より良い復興(Build Back Better)」のコンセプトに基づき、今後の災害リスクを考慮した上での復興支援を検討する。
(3)有効性
本計画の実施により、事業完了2年後の2033年には、被災地域の住民の生活及び社会の安定、安定的な上水の供給、衛生的な下水処理サービスの提供、健康の維持・向上等が期待される。なお、定量的効果を把握するための各指標に係る基準値及び目標値については、サブ・プロジェクトが確定した際に設定する予定。
また、救急ステーション及び救急車整備により、2033年度には、対象地域において、トルコ国内基準(救急ステーション:1施設/人口2.5万人、救急車両:1台/人口1.6万人)を満たすことが期待される(被災地11県の平均値。目標値は他ドナー及びトルコ政府独自予算による整備も含み、被災地域全体で効果を測定)。
3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
トルコ政府からの要請書、JICA環境社会配慮ガイドライン、その他JICAより提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
トルコ国別評価報告書(令和4年度(2022年度)・第三者評価)
なお、本計画に関する事後評価は、JICAが行う予定。