ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和6年5月1日
評価年月日:令和5年10月17日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志
1 案件名
1-1 供与国名
ギニア共和国(以下、「ギニア」という。)
1-2 案件名
国道二号線ファラナ橋架け替え計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、首都コナクリと森林ギニア地方を結ぶ国道二号線のファラナ市において、アフリカ第三の河川であるニジェール川に架かる老朽化した一車線橋梁を二車線橋梁へ架け替えることにより、落橋を防ぎ交通の安全性を確保するとともに、国道二号線の輸送サービスの改善を図り、もってギニアの経済インフラ整備に寄与するもの。
供与限度額は、27.20億円。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)に掲げる道路・橋梁セクターのうち、大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ギニア(一人当たり国民総所得(GNI)1,180ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
- (2)ギニアは伝統的に親日国であり、2017年のアフリカ連合(AU)議長としてのコンデ大統領(当時)訪日に続き、2019年の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の機会には日・ギニア首脳会談が行われるなど、二国間関係は良好である。また、同国は、国際社会においても我が国と密接な協力関係にあることから、かかる良好な関係を更に強化していくことが重要である。現在、同国暫定政府は2025年までの民政移管を通じた社会安定化に注力しており、本事業の実施により我が国が同国暫定政府のかかる努力を支援することは、移行プロセスを促す観点からも意義が高い。本事業については、コンデ大統領(当時)から我が方駐ギニア大使及びJICAに対して直接実施の要請がなされており、過去に我が国が同国において実施した橋梁案件の実績を高く評価しているギニア側の期待は高い。
- (3)ギニアは豊富な雨量と肥沃な土壌を有し、農業や水産業の開発潜在力は高く、また、世界の埋蔵量の3分の1を占めるボーキサイトを始め、鉄、金及びダイヤモンド等の天然資源を豊富に有している。同国唯一の商業港は首都コナクリに位置するが、鉄道・航空輸送が存在せず、コナクリから地方部への生活用品の供給は道路輸送が担っているため、首都-地方間を繋ぐ道路ネットワークの強化は極めて重要である。さらに、同国は西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の6か国と国境を接しており、主要国道はECOWAS地域を繋ぐ国際回廊となっている。
- (4)道路輸送については、ゴム、カカオ、コーヒーなどの輸出農産品の国内最大の生産地域である最南東部の森林ギニア地方や同国最大の鉄鉱石埋蔵地であるシマンドゥ鉱山と首都を結ぶ国道二号線が重要な役割を果たしており、これら農産品等は国道二号線を使ってコナクリ港や隣国へ運ばれている。国道二号線は、隣国に繋がる重要な経済回廊でもあり、道路区間は全区間で二車線化され、一部の舗装状態の悪い区間においても、他ドナーの支援により補修工事が進められているが、同国道上に位置するファラナ橋は、1950年代に建設された一車線橋梁であるため、対向車の通過待ち、貨物車両等の重車両の低速走行並びにバイクの複数列走行による渋滞が発生している。また、ギニアでは通行車両の重量規制が行われておらず、老朽化した同橋梁は落橋の危険性にも晒されている。ファラナ橋は国道二号線上で最大の交通のボトルネックとなっていることから、本事業を実施することは、同国の安定的な発展だけでなく、我が国の資源外交にも資するものである。
- (5)ギニアは、「政権移行期中期計画(2022-2025)」の一環として農業品の輸出促進や農産品の輸送にも寄与する道路網整備に取り組んでいるが、全国の国道延長7,576キロメートルのうち良好な状態にあるのは16%に留まっており、橋梁を含む道路網の改善は喫緊の課題となっている。
- (6)我が国は、対ギニア国別開発協力方針(2017年10月)において、「経済インフラの整備」を重点分野の1つとして定めており、本計画は同方針に合致するとともに、SDGsゴール3「人々の健康」、ゴール9「強靭なインフラの構築」及びゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市」にも貢献するものである。また、我が国は、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえた質の高いインフラ投資の推進を支持するとともに、2022年8月に開催した第8回アフリカ開発会議(TICAD8)において、「連結性・質の高いインフラ投資」に取り組むことを表明しており、本計画はこうした我が国の重要政策を具体化するものである。
2-2 効率性
国道二号線ではアスファルト舗装が一般的であるが、本事業でアスファルト舗装を採用した場合、アスファルトプラントの搬入費用が増えるため、コンクリート舗装を採用することにより、工事費抑制に努めた。
2-3 有効性
本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。
- (1)定量的効果
- ア 平均交通量が8,000PCU(注)/日から11,803PCU/日に、旅客数が29,351人/日から42,761人/日に、貨物車両交通量が262台/日から417台/日に、貨物量が275万トン/年から438万トン/年に増加する。
- イ 整備区間(573メートル)の旅行速度が約2倍(17キロメートル毎時から30キロメートル毎時)に増加するとともに、移動時間が半減(122秒から69秒)する。
- ウ 滞留長が45メートルから0メートルに短縮する。
- エ 補修工事通行止めによる経済損失が半減(580,924米ドルから249,539米ドル)し、交通容量拡大による経済便益は増加(0米ドルから1,443,963米ドル)する。
- オ 対象交差点全体の時間短縮便益が、2.6億円/年に増加する。
- (2)定性的効果
物流の安定性向上、重要施設(病院や学校)へのアクセス性向上、歩行者の安全性向上が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ギニア政府からの要請書
- (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)