ODA(政府開発援助)

令和6年3月15日

評価年月日 令和6年2月21日
評価責任者 国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭

1 案件概要

(1)供与国名

 カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)

(2)案件名

 広域病院整備計画

(3)目的・事業内容

 本計画は、シェムリアップ州及びコンポンチャム州において、州病院を高度医療の提供が可能な広域病院に格上げするために必要な医療施設及び医療機材を整備することにより、地方における高度医療へのアクセス改善を図り、もって首都と地方の医療格差の是正及び地域住民の健康増進に寄与するもの。

主要事業内容
  • 医療施設整備(外来・入院病棟新設(計4棟))
  • 医療機材整備(MRI、CTスキャナー、血管造影装置、内視鏡等)
  • 病院情報患者管理システム整備
  • コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
211.04億円 TORF+0.3% 30(10)年 アンタイド
  • (注)金利は、優先条件(保健・医療分野)(変動・基準)を適用。TORF(Tokyo Term Risk Free Rate)はLIBORの公表停止に伴い採用された、変動金利を表す際に用いられる金利指標。変動金利の下限金利は0.1%。コンサルティング・サービス部分は金利0.2%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

本計画は、国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)上、環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため、カテゴリCに該当する。
外部要因リスク:特になし

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 カンボジアにおいて公的保健医療サービス提供体制は年々質・量ともに改善されており、首都プノンペンを中心に基本的保健医療サービスの提供体制が整いつつある。一方で、保健医療施設の病床数や医療従事者数は依然不足しており、特に、首都プノンペンと地方との格差は大きく、地方の医療サービスの質の改善及び医療サービスへの物理的アクセスを改善する必要がある。また、非感染性疾患の罹患・死亡の増加が深刻化しつつあるものの、首都プノンペンの一部国立病院を除いては、高度な診断・治療が求められる悪性腫瘍、脳神経疾患、心疾患等の非感染性疾患の診断・治療に対応できないため、地方の住民は診療のために首都や周辺国まで移動する必要がある。
 カンボジア政府は「第3次国家戦略開発計画2019-2023」の中で保健医療サービスの質改善を重要課題として掲げているほか、現在同国保健省がWHOの支援で策定中の「第4次保健戦略計画2023-2032」においても、保健インフラ・医療機材の整備、保健人材の質・量の確保が含まれ、地方との医療格差是正を優先施策として位置付ける見込みである。また、「非感染性疾患の予防とコントロール国家戦略計画2022-2030」においても、非感染性疾患に対応できる保健人材育成やデジタル・ICT等の新しい技術の活用が挙げられている。
 地方の医療サービスの質の改善及び医療サービスへの物理的アクセスの改善を図る本計画は、地方開発を重視する同国の国家開発計画においても優先度の高い事業として位置付けられるものであり、先方政府が引き続き重要視する分野において我が国支援を行うことは、両国の更なる関係強化に資するなど外交的意義が大きい。
我が国の基本政策との関係
 我が国は「対カンボジア王国国別開発協力方針」(2017年7月)における重点分野の一つである「生活の質向上」において保健医療を優先分野の一つと位置付けており、本計画はこの方針に合致する。また、日本政府の「グローバルヘルス戦略」(2022年5月)では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下、「UHC」という。)に向けた保健システム強化の一環として良質なサービスへのアクセス確保を重点としている。
 さらに、地方における高度医療へのアクセス改善、ひいては地域住民の健康増進に寄与する本計画は、UHC達成のための協力として「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のための新たなプランにおける「インド太平洋流の課題対処」に合致する。加えて、SDGsゴール3(全ての人に健康と福祉を))にも貢献すると考えられる。

(2)効率性

 技術協力「保健人材継続教育制度強化プロジェクト」(2021年~2026年)に合わせて看護人材の能力向上を推進することで、人材面からも本事業対象地域の医療サービス改善を図る。なお、同プロジェクトは、看護師を対象とした卒後研修制度の強化を図るもので、コンポンチャム州を対象州の一つとしている。さらに、2024年開始予定の技術協力「非感染性疾患対策プロジェクト」(2024年~2027年)は、同じくコンポンチャム州を対象地として、医療施設(州病院、郡病院)における非感染性疾患の診断・治療サービスの強化を目指すものであり、本事業で整備する広域病院と連携したリファラル・カウンターリファラル(下位・上位の医療施設間で患者を紹介・移送すること)強化により、地域の保健システム強化に貢献するものである。
 本計画の実施については、こうした事業との相乗効果が期待されることから、これらを通じて本計画の効率的な実施を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成2年後の2032年の目標値を比較すると、主に以下の成果が期待される。

定量的効果
  • (ア)年間外来患者数が、シェムリアップ州病院では90,883人から112,533人に、コンポンチャム州病院では29,857人から38,684人にそれぞれ増加する。
  • (イ)年間入院患者数が、シェムリアップ州病院では24,455人から31,333人に、コンポンチャム州病院では19,508人から23,469人にそれぞれ増加する。
  • (ウ)年間CT撮影件数が、シェムリアップ州病院では4,320件から5,389件に、コンポンチャム州病院では1,042件から1,312件にそれぞれ増加する。
定性的効果
 本計画の実施により、広域病院で提供される医療サービスの改善、質の高い保健人材の育成、地域住民の健康増進、患者の満足度向上、首都国立病院の混雑緩和・地方からの搬送患者の減少が期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、カンボジア国別評価報告書(2017年度・第三者評価)JICAガイドライン別ウィンドウで開く、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後に公表されるJICAのプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
 なお、本案件に関する事後評価は実施機関であるJICAが行う予定。

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