ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和6年3月12日
評価年月日:令和5年7月5日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西野修一
1 案件名
1-1 供与国名
ジンバブエ共和国(以下、「ジンバブエ」という。)
1-2 案件名
第二次南北回廊北部区間道路改修計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、南北回廊の北部山間部(7.8キロメートル)において、登坂車線の建設及び急カーブ地点の拡幅を行うことにより、交通事故の減少、渋滞の緩和及び通行時間の短縮を図り、もって南北回廊の利用促進及び安全かつ円滑な物流に寄与するもの。
供与限度額は23.89億円
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。なお、前提・外部条件としては、南北回廊の南部区間であるジンバブエ-南アフリカ国境の通関システムの不具合等が発生した場合、通行車両が南アフリカ-ボツワナ-ザンビアルートを使用することとなり、事業効果に影響を与える恐れがある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ジンバブエ(一人当たり国民総所得(GNI)1,400ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、低中所得国に分類される。
ジンバブエ政府は、2030年までに高中所得社会になることを目標としており、同目標達成のための5か年計画である国家開発戦略1(2021-2025)において、14の優先分野を掲げている。14の優先分野のうちの1つであるインフラ開発においては、国内外の交易促進のため、主要な交通回廊の整備・維持管理の重要性が挙げられている。 - (2)南北回廊は、南アフリカのダーバン港から、ジンバブエ及びボツワナを通過し、ザンビア、コンゴ民主共和国へと続く回廊である。同回廊は、鉱物輸出と必需品輸入を中心に年間輸送量が600万トン弱であり、域内最大である。アフリカ連合(AU)の予測では、その輸送量は、2040年には年間5,000万トンを超え、アフリカ最大の回廊になるとされている。
- (3)南北回廊のカロイ以北の山間部区間(約140キロメートル)は、設計・施工の難易度が高く、ジンバブエ政府による改修が進められていないため交通事故が多発し、大型トラックの走行速度が時速15キロメートルに制限されるなど、通行上の大きな障害となっている。そのような中、改修・拡幅が喫緊の課題となっている。我が国は、2018年より実施した無償資金協力「南北回廊北部区間道路改修計画」(「第一次計画」)により、チルンド国境に近い山岳区間(6.5キロメートル)を対象に、登坂車線整備と急カーブ地点の拡幅を支援したが、第一次計画部分に連続する区間(7.8キロメートル)は、依然としてカーブや傾斜がきつく交通事故が多発しているため、同区間でも登坂車線整備と急カーブ地点の拡幅を行い、交通事故の減少と通行時間短縮を図る必要がある。
- (4)本事業は、南北回廊の安全かつ円滑な物流の促進を通じて、ジンバブエのみならず、南部アフリカ地域の経済開発に広く貢献するものであり、対ジンバブエ国別開発協力方針(2020年12月)の重点分野の1つである南部アフリカ地域経済への円滑な統合を具現化するものである。また、日・ジンバブエ二国間関係の強化にとどまらず、南部アフリカ地域全体の物流改善を通じて、我が国支援の認知度向上に寄与することが期待される。さらに、第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)で表明された「連結性強化・質の高いインフラ投資」に合致するものであり、外交的な意義が高く、SDGs(持続可能な開発目標)ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」にも貢献することから、その実施の意義は大きい。
2-2 効率性
本事業の詳細設計(2022年12月~2023年6月)では、現場状況を確認し、より安全で耐久性に優れた設計として、道路線形、道路付帯施設の設計を精緻化し、信頼性の高い事業費を算出した。また、設計研修や施工実習を行うことで、実施機関の道路改修・改良方法への理解を深め、維持管理能力を向上させた。
以上により、より効率的な事業の実施が期待される。
2-3 有効性
本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2028年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
- (1)対象区間(7.8キロメートル)の年間交通事故件数が、61件から10件に減少する。
- (2)対象区間(7.8キロメートル)の車両通行時間が、17分から8分に短縮する。
- (3)当該区間を通行する年間旅客数が増加する(53万人から56万人)とともに、年間取扱貨物量が増加する(445万トンから501万トン)。
- (4)通行時間の短縮による輸送コストの低減、交通の安全性及び円滑性の向上が期待される。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ジンバブエ政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)同回廊の輸送量の2023年4月時点のデータ
以下現地コンサルタントより入手
TLC (Transport Logistics Consultants)/FESARTA (Federation of East and Southern African Road Transport Associations)/ the Crickmay LMS (Logistics Monitoring System)