ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和6年3月12日
評価年月日:令和6年2月7日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志
1 案件名
1-1 供与国名
モザンビーク共和国(以下、「モザンビーク」という。)
1-2 案件名
ナカラ緊急発電所整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は、モザンビーク北部のナカラ市において、ナカラ緊急発電所整備のための機材(発電設備、変圧器、燃料タンク等)を供与することにより、ナカラ回廊地域一帯に安定的な電力供給を図り、もって同国の回廊開発を含む地域経済活性化に寄与する。供与限度額40.84億円として令和元年10月15日に事前評価を実施した本計画に対し、資機材費及び施工費等28.66億円を追加贈与するもの(増額後の供与限度額:69.5億円)。
1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり、火力発電セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響が重大でないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しない。
- (2)事業実施の前提条件として、事業実施機関が発電に必要な燃料調達予算を確保する必要がある。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)モザンビーク(一人あたり国民総所得(GNI)500ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
- (2)同国政府は「政府5か年計画(Government’s Five-Year Program)2015~2019」において、国家優先課題の一つに「経済インフラ整備」を掲げている。さらに、その中で第一の戦略目標として「電力アクセス向上」を位置付けており、火力及び水力等の発電所建設を促進することとしている。
- (3)同国の電化率は2016年時点で26%にとどまっており、同国政府は2030年までに100%の達成を目標に掲げているが、同国の二つの電力系統のうち、中・北部系統では2023年には1,194メガワットの設備容量が必要になると想定されているものの、現時点では580メガワットにとどまっており、その増強が不可欠となっている。我が国が作成を支援した「電力マスタープラン(2018~2043)」及び「ナカラ回廊経済開発戦略マスタープラン」においても、中・北部地域の電力需要増大に対応する電源開発の実施は喫緊の課題に位置付けられている。
- (4)特に、北部のナカラ回廊地域は、TICAD VI以降、インフラ投資推進の三重点地域の一つとして位置付けられており、また、天然資源が豊富で今後大きな成長のポテンシャルが見込まれる地域である。一方で、電力供給は北西部に位置するカオラバッサ水力発電所と長距離送電線に依存しているが、2015年に洪水で同送電線が切断され、1か月間停電する事態が発生するなど脆弱な体制にあり、安定的な電源確保が喫緊の課題となっている。
- (5)このような状況の中、同国の電力行政を所掌する鉱物資源エネルギー省及び事業の実施機関であるモザンビーク電力公社(EDM)は、ナカラ回廊地域の電力需給の早期のギャップ解消及び電力供給安定化のため、短期間での発電所整備を我が国政府に対して要請してきた。
- (6)上記モザンビーク政府からの要請に基づき、無償資金協力「ナカラ緊急発電所整備計画」(供与限度額40.84億円、2019年12月12日E/N署名・交換)を決定し、支援を実施していたが、ロシアによるウクライナ侵略を受けた世界情勢の悪化、急激な円安、機材費や輸送費等の価格高騰、モザンビーク国内の労務単価の上昇等により、機材調達費が追加的に必要となった。
- (7)本計画は、我が国がTICAD VIで表明し、2019年8月に開催されたTICAD7でも引き続き言及しているインフラ投資三重点地域の一つであるナカラ回廊の開発に資するものである。また、我が国の対モザンビーク国別開発協力方針においても、ナカラ回廊開発のための電力整備を支援することを定めており、本計画はそれらに合致するものである。さらに、本計画は、ナカラ回廊一帯に安定した電力を共有し、地域一帯の経済発展に貢献するものであり、インド洋地域とアフリカ内陸部への連結性の強化に寄与し、ひいては「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に資するとともに、発電所整備を通じてSDGsゴール7(エネルギーへのアクセス確保)にも貢献すると考えられる。
- (8)2017年3月の日・モザンビーク首脳会談の際に発出された共同声明において、両首脳は電力分野における両国間の継続的な協力の重要性を確認するとともに、ニュシ大統領が本計画に対して我が国が関心を示すことを歓迎する旨述べるなど、本計画に対する同国政府からの期待は高く、これに応えることは二国間関係強化の観点から外交的意義も高い。
2-2 効率性
我が国は既に技術協力「電力マスタープラン策定プロジェクト」で、全国レベルの電力マスタープランの策定を支援しており、2018年10月に同プランへのモザンビーク政府の閣議承認が得られたところ、本計画は同プランに基づいて実施される。
2-3 有効性
本計画の実施により、2018年の実績値を基準値として事業完成3年後の2030年の目標値と比較すると、主に以下の成果が期待される。
- (1)国内向けに使用可能な中・北部電力系統への電力供給が、580メガワットから610メガワットに増加する。また、新規に年間発電量54,750メガワットアワーが供給される。
- (2)ナカラ市住民約22万人に対して、安定した電力供給が可能となる。
- (3)ナカラ回廊地域における地域住民の生活改善及び経済・社会開発の促進に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)モザンビーク政府からの要請書
- (2)協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)