ODA(政府開発援助)

令和6年2月27日

評価年月日:令和6年2月19日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

 インド

(2)案件名

 ハリヤナ州における持続可能な園芸農業推進計画(第一期)

(3)目的・事業内容

 ハリヤナ州における果樹や野菜等の園芸作物への作物多様化支援、バリューチェーン振興のための施設整備・能力強化等を行うことにより、持続可能な農業の推進及び園芸作物の販売促進による対象農家の所得向上を図り、もって同州の社会経済発展に寄与するもの。今次借款は2027年までの資金需要に対応する。

主要事業内容
  • (ア)園芸作物への作物多様化支援(生産者団体及び農家グループの能力強化(事業計画策定支援、共同出荷体制構築支援等)、節水園芸農業の推進(小規模灌漑施設整備等)、農家の生産体制強化(営農計画策定研修等))
  • (イ)バリューチェーン構築支援(パックハウス整備、データ連携基盤の整備(Eマーケットプレイス・在庫管理システム等)、民間企業連携促進(民間企業と生産者団体間のマッチング等のパイロット事業実施)等)
  • (ウ)州政府の組織体制強化(事業管理ユニット(PMU: Project Management Unit))機能強化(研修、機材供与等)、営農普及体制強化(研修等)、マーケティング戦略策定及び実施(同戦略策定支援)等)
  • (エ)コンサルティング・サービス(詳細設計支援、入札補助、施工監理、組織体制強化支援、市場調査等各種調査の実施、民間連携促進支援、データ基盤整備戦略策定支援、環境社会配慮支援等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
162.15億円 1.45% 20(6)年 一般アンタイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.20%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月公布)上、JICAの融資承諾前にサブプロジェクトが特定できず、且つそのようなサブプロジェクトが環境への影響をもつことが想定されるため、カテゴリFIに該当する。
用地取得及び住民移転
 特になし。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドは穀物を中心に、世界的に見て主要な食糧生産・輸出国である。一方、近年コメを中心とした穀物生産における過剰揚水を背景に、ハリヤナ州は約6割の地域で地下水枯渇のリスクが非常に高いとされ、持続可能な農業の実現のため、節水農業の導入や比較的水使用量が少ない野菜や果樹等の園芸作物への作物多様化の推進の必要性が高まっている。
 ハリヤナ州は、園芸作物の栽培にも適する気候等の栽培条件を有しており、デリー首都圏の近郊に位置し、市場への生産物の輸送が容易であることから、マーケティングの観点でも大きな比較優位を有するなど、都市及びその近郊の市場に焦点を当てた園芸農業の発展ポテンシャルが大きい。しかし、ポテンシャルを活かすための施設の整備、マーケティング能力の強化等が十分になされていない。
我が国の基本政策との関係
 インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力、運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、連結性の強化、産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。本計画は、ハリヤナ州において、果樹や野菜等の園芸作物への作物多様化支援、バリューチェーン振興のための施設整備・能力強化等を行うことにより、持続可能な農業の推進及び園芸作物の販売促進による対象農家の所得向上を図り、もって同州の社会経済発展に寄与することから、上記重点目標のうち、持続的で包摂的な成長に合致する。
 また、本計画は、インドの開発課題・開発政策並びに我が国及びJICAの協力方針・分析に合致する。また、持続可能な農業の推進及び対象農家の所得向上に寄与し、SDGsのゴール1(貧困をなくそう)、ゴール2(飢餓をゼロに、持続可能な農業の促進)、ゴール8(経済成長・雇用)及びゴール13(気候変動対策)にも資するものである。
 さらに、2023年3月の岸田総理の訪印時には、両首脳は、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」としての両国関係を更に発展させることで一致するなど、両国の関係強化は着実に進んでいる中、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める世界最大の民主主義国であるインドの発展を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化につながり、外交政策上の意義も高い。

(2)効率性

 本計画では、効果的・効率的な園芸作物の生産管理や市場情報の一元化等を目的として、インド政府主導で進められる農業情報を統合管理するデータ・プラットフォーム(Agristack)や既存の市場とのデータ連携を推進する予定。また、本計画では、データ駆動型の園芸農業の推進による園芸作物の品質向上及び生産性向上を目的として、作物の育成に関する環境データや州全体にわたる農産物の個々の出荷に関するデータなど、ハリヤナ州園芸局(DoH)やその他関係者の有する関連情報をリアルタイムで一元的に集約するデータ連携基盤を構築する。同基盤を活用し、データ駆動型の園芸農業の普及のため、学術連携を推進する。
 以上を通じて、本計画の効率的な実施を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2035年)には、2021年比で以下のような成果が期待される。

定量的効果
  • (ア)事業対象地域の地下水使用量が141,750千立方メートルから43,785千立方メートルに減少。
  • (イ)収穫後から市場に出荷する間に生じる食品ロス率は、野菜が9.3%から3.7%に、果物が11.6%から4.6%に低下。
  • (ウ)女性向け生産者団体の割合が10%となる。(2021年実績値なし)
定性的効果
 地下水の枯渇の緩和、女性の社会的・経済的地位の向上、園芸作物の輸送効率化等

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本案件に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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