ODA(政府開発援助)

令和6年2月27日

評価年月日:令和6年2月19日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

 インド

(2)案件名

 北東州道路網連結性改善計画(フェーズ7)

(3)目的・事業内容

 インド北東部地域のメガラヤ州においてプルバリ(Phulbari)からゴエラグレ(Goeragre)までを結ぶ国道127B号線の整備を行うことにより、同地域内及び国内外の他地域との連結性向上を図り、もって同地域の経済発展の促進に寄与するもの。

主要事業内容
  • (ア)国道127B号線:メガラヤ州プルバリ~ゴエラグレ間の国道の整備(総延長約63キロメートル、うち既存道路(橋梁・排水路等含む)の改修・拡幅(現状の往復1、1.5車線から往復2車線に拡幅)約58キロメートル、及び新設道路約5キロメートルの建設)
  • (イ)コンサルティング・サービス(施工監理、環境社会配慮等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
155.61億円 1.80% 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.20%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げる影響を及ぼしやすい特性に該当するため、カテゴリAに該当する。本計画はインド国内法上、環境影響評価(EIA)報告書の作成が義務付けられていないが、JICA環境社会配慮ガイドラインに基づき、2022年6月にメガラヤ州公共事業局(MPWD)によりEIA報告書が作成され、2022年7月にMPWDにより承認された。
用地取得及び住民移転
 本計画では、約140ヘクタールの用地取得、107世帯(524人)の非自発的住民移転を伴い、当国国内手続き及びJICA環境社会配慮ガイドラインに沿って作成された用地取得・住民移転計画に基づき、取得や補償・支援が行われる予定。本計画対象地には、インド国憲法上少数民族に該当する指定部族(Scheduled Tribe)が居住しているが、この指定部族は世銀Operational Policy(OP)4.10で掲げる先住民族にかかる4つの特徴のうち、土地に対する集団的愛着や大きな依存、また、計画地における指定部族と指定部族以外の文化的、経済的、社会的、政治的な乖離等、複数の特徴が見られず、世銀OP4.10の先住民族の要件(全要件の合致が求められる)には該当しない。指定部族に対しては、住民協議及び住民移転・生計回復支援策等において配慮がなされている。なお、本計画にかかる住民協議では、計画実施に対する特段の反対意見は確認されていない。
外部要因リスク
 事業対象地域の治安状況が大幅に悪化しない。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 インドでは、国道開発計画が1998年から道路交通省により開始され、首都デリー、西部のムンバイ、東部のコルカタ、そして南東部のチェンナイを結ぶ「黄金の四角形」をはじめとする大都市間の道路整備が進められている。2018年には、1998年次計画の全計画(7,522キロメートル)の道路建設工事が終了する等、主要幹線道路の整備が進みつつある。
 一方、北東部地域の道路の舗装率は36.0%(全国平均:72.0%)、国道における2車線以上道路の比率は48.0%(同70.9%)、さらに土砂災害対策のための斜面対策や排水路整備が進んでいない地域も多くみられるなど、道路整備の遅れが課題となっている。このような道路整備の遅れは、同地域内及び国内外の他地域との安定した人流・物流を阻害し経済開発の遅れの一要因となっている。増加する交通需要への対応と域内外のより円滑な流通の促進による経済発展のため、北東部地域では経済活動の基盤となる道路や橋梁の整備をはじめとする道路網改善が急務となっている。特に、ブータン、インド、バングラデシュを縦貫するゲレフ・ダル回廊は政治的、経済的観点からもインド他地域または周辺国との連結性向上を進める上で不可欠であり、本計画は同回廊の一部を形成する。北東部地域内及び国内外の他地域との連結性向上の観点からも、本計画の実施は重要な位置付けにある。
我が国の基本政策との関係
 インドにおいて、依然として多くの貧困層を抱え、電力、運輸等の経済インフラが絶対的に不足していることなどの開発ニーズを踏まえて2016年3月に策定された「対インド国別援助方針」においては、今後の対インドODAの重点目標として、連結性の強化、産業競争力の強化及び持続的で包摂的な成長への支援を掲げている。
 「北東州道路網連結性改善計画(フェーズ7)」は、インド北東部地域のメガラヤ州においてプルバリ(Phulbari)からゴエラグレ(Goeragre)までを結ぶ国道127B号線の整備を行うことにより、同地域内及び国内外の他地域との連結性向上を図り、もって同地域の経済発展の促進に寄与することから上記重点目標に合致するものである。
 また、本計画はインドの開発課題・開発政策並びに我が国及びJICAの協力方針・分析と合致することに加え、SDGsのゴール3(すべての人々の健康的な生活を(道路交通事故による死傷者を半減))、SDGsのゴール8(持続的、包摂的で持続可能な経済成長と、万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進)、ゴール9(強靭なインフラ構築)およびゴール13(気候変動対策)に貢献すると考えられることから、本計画の実施を支援する必要性は高い。
 さらに、2023年3月の岸田総理の訪印時に両首脳は、「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ」としての両国関係を更に発展させることで一致するなど、両国の関係強化は着実に進んでいる中、円借款を始めとするODAを通じて、経済・社会開発を進める世界最大の民主主義国であるインドの発展を支援することは、こうした二国間関係の更なる強化につながり、外交政策上の意義も高い。

(2)効率性

 各機関の役割の明確化や予算支出・調達手続き等、計画実施が円滑に進められる体制について確認済。
 以上を通じて、本計画の効率的な実施を図る。

(3)有効性

 本計画の実施により、事業完成2年後(2028年)には、2022年比で以下のような成果が期待される。

定量的効果
  • (ア)対象区間の平均移動時間が146分から68分に短縮される(乗用車の場合)。
  • (イ)対象区間の平均移動コストがプルバリーセルセラ間で15.35ルピー/キロメートルから9.90ルピー/キロメートルに、セルセラーゴエラグレ間で18.13ルピー/キロメートルから10.55ルピー/キロメートルに抑制される(乗用車の場合)。
  • (ウ)対象区間の年間平均日交通量がプルバリーセルセラ間で4,500PCU/日から6,100PCU/日に、セルセラーゴエラグレ間で2,750PCU/日から3,700PCU/日に増加する。
  • (エ)対象区間の旅客数がプルバリーセルセラ間で5,615千人/年から7,516千人/年に、セルセラーゴエラグレ間で4,188千人/年から5,623千人/年となる。
  • (オ)対象区間の貨物量がプルバリーセルセラ間で79トン/年から109トン/年に、セルセラーゴエラグレ間で110トン/年から146トン/年となる。
定性的効果
 インド国外との連結性向上、本事業の周辺地域及び北東部地域の経済発展の促進。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 要請書、インド国別評価報告書(2017年度・第三者評価)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本案件に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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