ODA(政府開発援助)

令和6年1月26日

評価年月日:令和5年10月25日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件名

1-1 供与国名

 ザンビア共和国(以下、「ザンビア」という。)

1-2 案件名

 STEM(科学、技術、工学及び数学)教育強化計画

1-3 目的・事業内容

 本計画では、ザンビア政府が選定したSTEM(科学・技術・工学・数学)教育の実践の拠点となる既存のSTEM中等学校において、STEMカリキュラムの実践に必要な施設の建設及び関連機材の整備等を行うことにより、STEM教育の実践環境の改善及び授業の質の向上を図り、もって同国の教育・人材育成の向上に寄与するもの。
 供与限度額は、16.44億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 環境社会配慮について、本事業は、「国際協力機構環境配慮ガイドライン」(2010年4月制定)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため、カテゴリBに分類される。また、ザンビア環境管理庁も本事業の計画内容を評価し、環境への影響が少なく環境影響調査は不要であることを書面で認めている。
 外部条件としては、2026年8月に予定される大統領選挙により、同年5月から行政機関の意思決定や対応の遅れなどが見込まれる。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ザンビア(一人当たり国民総所得(GNI)1,170米ドル:2022年:世銀)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類される。
  • (2)ザンビア経済は、独立以来、銅の生産に依存するモノカルチャー経済であるが、銅の国際価格の変動が同国経済に大きな影響を与えるため、農業や観光を中心とした経済の多角化による産業構造改革が課題となっている。
  • (3)ザンビアでは、義務教育を修了した生徒の多くは基礎学力を習得しておらず、産業界が特に求める製造業に従事できる理数科分野の人材が育成されていない。学力調査では、最低限必要な知識レベルを習得している15歳の生徒の割合は、算数で2.3%、理科5.8%(OECD他、2018年)で、東南部アフリカ地域学力比較調査(SACMEQ、2021年)では、小学校6年生の算数で参加14カ国中最下位となっている。更に、中等教育におけるGender Parity Indexは0.90(UNICEF、2019)、中等教育における女子中退率も顕著であり(男子児童0.7%、女子児童1.8%、同上2016年)、女子児童に必要な学習環境が整った学校数を増やすことが喫緊の課題となっている(ザンビア共和国教育・技術セクター計画2016年)。
  • (4)こうした中、ザンビア政府は産業多角化のための民間セクター活性化に向けて、産業界が特に求める製造業に従事できる理数科分野の人材育成に注力している。基礎的な理数科学力に加え、課題解決力の育成が必要と捉え、政策文書「Strategic Note on STEM Education in Zambia」(2019年)のもと、実験等の実践的で生徒主体の授業を通じ、科学・技術・工学及び数学を横断的に学ぶSTEM教育の導入を図っている。STEM教育特化校として普通中等学校等から選定され、STEMカリキュラムの導入が進められているが、STEM中等学校は、STEMカリキュラムに基づいた授業の実施に必要な特別教室と機材が整備されておらず、カリキュラムを十分に実施できる環境にない。
  • (5)我が国の対ザンビア国別開発協力方針(2018年6月)においても、重点分野「経済活動を支えるインフラ整備・社会サービス(教育・人材育成)の向上」が掲げられている。また、本事業はSDGsゴール4(質の高い教育)に貢献するとともに、我が国がSDGs実現に向けた取組としてTICAD8で表明した「STEM教育を含む質の高い教育」の提供にも資するものであることから、本計画を実施することは我が国の外交政策上も重要である。

2-2 効率性

 ウクライナ情勢や国際経済などを受けた為替変動、資機材の物価や燃料を含む輸送費の高騰等、案件開始までに想定される事業費上振れリスクに対応するため、事業費縮減を図った。(縮減内容:(1)対象校数の縮減(施設1校減、機材2校減)、(2)実験棟のスペックの必要最低限への抑え込み(施設と機材ともに最低限必要な種類・スペック・数量に絞り込み))

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 施設整備対象STEM校(3校)での当該施設利用生徒数が、0人/年から2,330人/年へ増加する。
    • イ 機材整備対象STEM校(7校)での機材利用生徒数が、0人/年から7,455人/年へ増加する。
    • ウ 供与機材を通じてSTEM教育研修を受ける教員数が、0人/年から3,000人/年へ増加する。
  • (2)定性的効果
     STEM中等学校での授業の質の向上、生徒の学習効果の向上、女子就学環境の改善が期待される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ザンビア政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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