ODA(政府開発援助)

令和6年1月25日

評価年月日:令和5年10月31日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件名

1-1 供与国名

 ジブチ共和国(以下、「ジブチ」という)

1-2 案件名

 パルマレ道路橋梁建設計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、ジブチ市内のアンボリ川を渡河するパルマレ道路において、橋梁建設及び道路改良等を実施することにより、交通容量の拡大及び洪水発生時の安定的な交通手段の確保を通じてジブチ市の都市交通機能の強化及び「アフリカの角」地域全体の物流円滑化を図り、もってジブチにおける持続可能な経済成長に資する経済社会基盤強化に寄与するもの。
 供与限度額は、59.44億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)におけるカテゴリBであり、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ジブチ(一人当たり国民総所得(GNI)3,180米ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。
  • (2)ジブチは、紅海の入り口であるアデン湾に面し、エチオピア等内陸国と海を繋ぐ、アフリカ大陸の玄関口としての役割を担う地政学上重要な国である。2011年には日本国外における我が国唯一の自衛隊拠点が設置され、治安が不安定なアフリカの角地域及び中東地域における邦人保護の拠点にもなっている。また、ジブチの港湾は人口1億人を超える隣国エチオピアの輸出入品の90%を取り扱っている。同時に、ジブチの食料の総輸入重量の約1/3以上をエチオピアからの輸入品が占めており、それらは全て陸上経由で運搬されているため、ジブチ・エチオピア回廊において物流の円滑化を図ることは、両国の食料確保及び経済発展、さらにはアフリカの角地域の経済統合のために欠かせない。
  • (3)ジブチ市は南北に流れるアンボリ川により、西岸居住区と東岸中心部に分断されており、東西を結ぶ主な道路はパルマレ道路とイタリア橋の2本しかない。さらに、イタリア橋は損傷があり大型車の通行が禁止されているため、パルマレ道路は大型車が通行できる唯一の道路であり、対エチオピア輸出入を担う貨物車両の約5割が同道路を利用していると推定され、パルマレ道路は国際物流道路としての機能も有している。加えて、パルマレ道路は、ジブチ市の東西を結ぶ都市道路としても重要な機能を担っており、東西地区間の往来にはパルマレ道路に交通が集中し、ジブチ市内で最も交通量が多い道路であることもあり、朝晩の交通渋滞が深刻化している。
  • (4)アンボリ川は年間の多くの期間が涸れ川であることからパルマレ道路のアンボリ川渡河部分には橋がなく、川が増水すると道路上を水が流れる構造(洗い越し)となっている。近年、地球温暖化による多雨化の傾向が見られ、サイクロンや大雨によって年1~3回程度アンボリ川が増水、その都度1~5日程度道路が冠水して渡河できなくなるため、ジブチ市民の日常生活や、物流サービス業を中心とするジブチの国家経済に多大な影響を与えている。国際物流の恒常性確保及び、アンボリ川西岸居住区と東側中心部を結ぶ市内道路交通の円滑化と信頼性向上のため、洪水発生時にも安全に通行可能な橋梁の建設及び交通容量拡大を目的とした道路改良が喫緊の課題となっている。
  • (5)我が国の対ジブチ国別開発協力方針(2019年9月)では、「持続可能な経済成長に資する経済社会基盤強化」を重点分野とし、「産業インフラ整備」及び「生活環境整備」を支援すると定めている。また、我が国がTICAD 8で表明した「自由で開かれた国際経済システム強化」に含まれる質の高いインフラ投資の推進に貢献し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現のための経済的繁栄の追求にも寄与するものであることから、本計画を実施することは我が国の外交政策上も重要である。なお、本計画は、ジブチ港を発着とする物流の輸送力・信頼性及び都市交通の強化を通じ、同国の経済発展と都市活動の促進に資するものであり、SDGsゴール9「強靭なインフラの構築、包摂的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成」及びゴール11「包摂的、安全、強靭で、持続可能な都市と人間住居の構築」にも貢献すると考えられる。
  • (6)なお、ジブチの国土は狭小であり、酷暑を含め自然環境も厳しく、加えて港湾・物流等のサービス業以外に経済を牽引する産業はなく、経済社会基盤は脆弱である。また、同国は、IMFの債務持続性分析(DSA)においても【ハイリスク】に分類されており、我が国も同国の債務状況等に鑑みてこれまで有償資金協力を実施したことがない状況である。かかる債務状況に加えて、上記(5)のとおり外交的観点からの意義も大きいことから、無償資金協力での支援実施が適切と判断される。

2-2 効率性

  • (1)ジブチ政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。また、先方政府にて対処・負担可能な部分は先方政府負担と整理し、支援の効率化を図っている。
  • (2)ジブチに対してはこれまで、「道路管理機材運用整備能力向上アドバイザー」(2019年6月~2022年2月)の派遣により、道路管理機材の点検整備に関する能力強化を支援した他、現在は「道路点検・維持管理能力向上アドバイザー」(2023年1月~2024年6月)を派遣し、道路点検・補修・データ記録に関する支援を行い、道路アセットマネジメントの導入及び道路管理機材による補修実施能力の向上のための協力を実施中であり、本計画との相乗効果が期待される。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値と比較すると、主に以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア パルマレ道路を通行する全車両の交通量が、36,743台/日から49,600台/日に増加する。
    • イ パルマレ道路を通行する貨物車両の貨物輸送量が、19,634千トン/年から27,337千トン/年に増加する。
    • ウ 朝のピーク時のパルマレ道路通過時間につき、本計画を実施しない場合、142秒から368秒に増加する見込みであるが、本計画を実施した場合には142秒から82秒への削減が見込まれる。
    • エ アンボリ川増水時の交通遮断時間が、79時間/年から10時間/年に削減される。
  • (2)定性的効果
     国際回廊としての機能強化、市民生活や活動を支える基盤整備、公共交通輸送路としての機能強化、南スーダン等内陸部への緊急支援物資の輸送路の確保等が期待できる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ジブチ政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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