ODA(政府開発援助)

令和5年12月26日

評価年月日:令和5年12月21日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

 バングラデシュ人民共和国(以下、「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

 ハズラット・シャージャラール国際空港拡張計画(第三期)

(3)目的・事業内容

 首都空港であるハズラット・シャージャラール国際空港において、国際線第3旅客ターミナル及び貨物ターミナルの整備等を行うことにより、急増する航空需要に対応し、空港の容量拡大、利便性及び安全性の向上を図り、もって中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化に寄与するもの。なお、今次借款は輪切り三期目として事業完了までの資金需要に対応するもの。

主要事業内容
  • 国際線第3旅客ターミナル及び貨物ターミナルの整備等
  • コンサルティング・サービス
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
766.35億円 1.30% 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)金利は、一般条件(固定・基準)を適用。
    コンサルティング・サービス部分に係る金利は、0.2%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下、「JICAガイドライン」という。)に掲げる空港セクターのうち大規模なものに該当せず、環境への望ましくない影響は重大ではないと判断され、かつ、同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため、カテゴリBに該当する。
用地取得及び住民移転
 本計画は、既存空港施設内の一般立入制限区域内で実施されるため、用地取得及び住民移転は発生しない。
留意点
 事業実施に当たっては、関係者間で緊密に情報共有を行い、必要な安全対策を講じる。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュでは、過去10年以上にわたる平均年率6%の高成長を背景に、首都ダッカのハズラット・シャージャラール国際空港における航空旅客数は、2010年から2019年で年平均約7%増加するなど、航空需要が急速に拡大している。同空港は、同国内で離発着する国内・国際線の約75%が利用しており、急成長する同国の社会経済活動を支えるインフラとして重要な役割を担っている。
 ハズラット・シャージャラール国際空港の国際線旅客数は、2022年には792万人と過去最高を記録し、既存の空港施設第1及び第2ターミナルで想定される年間旅客者数処理能力の上限である800万人に迫る勢いで増えてきており、今後も増え続けると予測されている。また、同空港で扱う航空貨物量も、2021年には33万トンに達し、既存貨物ターミナルビルの年間航空貨物取扱能力上限の域に近づいている。
 同国政府が策定した同空港拡張に係るマスタープラン(2015年)では、同空港の国際線第3旅客ターミナルの建設及び貨物ターミナルの拡張、立体駐車場新設、国道へのアプローチ道路を含む周辺インフラ等の整備、並びに空港保安機材設備の拡充等の必要性が指摘されている。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは、近年、高い経済成長を遂げているものの、人口の約2割が依然として貧困状態にあり、電力、運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足している。こうした開発ニーズを踏まえ、我が国は2018年2月に策定した「対バングラデシュ国別開発協力方針」において、「中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化」を重点目標の一つに掲げ、国際スタンダードに則った質の高い運輸・交通インフラを整備し、人とモノの効率的な移動を促進させ地域の連結性向上に貢献することとしている。本計画は、同方針に合致するものであり、SDGsゴール8(経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ構築)にも貢献するものである。
 また、2023年3月に岸田総理大臣が発表した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)のための新たなプランでは、取組の柱の一つとして「多層的な連結性」が掲げられ、地域全体の成長を促すためのベンガル湾・インド北東部の産業バリューチェーン構想を推進することが示されている。同方針は、同年4月の日・バングラデシュ首脳会談の「戦略的パートナーシップに関する日・バングラデシュ共同声明」においても示されており、バングラデシュにおいて、1)経済インフラ整備、2)投資環境改善、3)地域連結性の向上を継続していくこと、質の高いインフラの整備が地域連結性を高め、同国及び地域の発展に寄与することについて、両首脳間で認識が共有されている。
 本計画は、バングラデシュと周辺地域及び国際社会をつなぐ首都の国際空港において、旅客及び貨物取扱容量増大、利便性及び安全性の向上を図るものであり、FOIPの「多層的な連結性」向上に資するものである。さらに、上記首脳会談では、ハシナ首相から本計画に対する我が国の支援への謝意も示されており、本計画実施は、両国関係の更なる強化及び同国における我が国のプレゼンス向上にもつながることから、外交上の意義も大きい。

(2)効率性

 過去の類似案件から、既存空港を運用しながらの複雑な工程を伴う拡張事業では、運行に支障を与えぬように実施するため、工程計画や設計に特に留意する必要があり、また、航空機の安全運航の確保や利用客の利便性の確保に特に留意する必要があるとの教訓が得られている。
 本計画においても、既存の旅客ターミナルの運営を行いながら工事を行うため、工事中の安全を確保しつつ、飛行機の離着陸及び空港運営に支障を与えない形の施工計画を民間航空局(Civil Aviation Authority of Bangladesh)とコンサルタント、コントラクター間で作成して施工を進めており、既存ターミナルへの影響は確認されていない。

(3)有効性

 本計画によって、同国における航空需要の急増(2015年から事業完了2年後の2026年にかけて、同空港における国際線年間航空旅客数が557万人から1,184万人に、国際線年間貨物取扱量が25万8千トンから61万1千トンに増加すると見込まれている。)に対処するとともに、空港の容量拡大、利便性及び安全性の向上を図ることで、同国の経済成長促進に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府からの要請書、バングラデシュ国別評価報告書(第三者評価・2009年度)、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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