ODA(政府開発援助)

令和5年12月19日

作成年月日:令和5年12月14日
評価責任者:国別開発協力第一課長 鴨志田 尚昭

1 案件名

1-1 供与国名

 インドネシア共和国(以下、「インドネシア」という。)

1-2 案件名

 海上保安能力向上計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、インドネシアの海上保安機構(以下、「BAKAMLA」という。)に対し、大型巡視船1隻を供与することにより、海上法執行能力の強化を図り、もって同国の海上安全の向上を通じたアジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に寄与するもの。
 供与限度額は、90.53億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、JICA環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)インドネシア(一人当たり国民総所得(GNI)4,580米ドル(2022年))は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、中高所得国に分類されている。
  • (2)インドネシアは、東西5,100キロメートルに及び、1,766の有人島を有する群島国家であり、これを囲む排他的経済水域(以下、「EEZ」という。)の面積は世界第3位と広大な海域を有している。これらの海域は、マラッカ・シンガポール海峡やスンダ海峡等、原油や天然ガスを運ぶ大型タンカー等が多数航行し、日本に輸入される原油の約9割が通るなど、国際物流の観点からも極めて重要な海上交通路である。また、豊かな漁業資源に加え、石油や天然ガス等の海底資源の埋蔵量も多く、海運のみならず、水産業やエネルギー関連の経済活動が活発に行われている。
  • (3)同時に、同国海域は、違法漁業、密航・密輸、テロ、海賊、人身売買、自然災害等が多発する海域でもある。加えて、国内外の漁船による違法な乱獲も行われ、同国の持続可能な水産資源に損失が生じている。一方で、同国は、広大な海域を既存の巡視船等で十分にカバーできるほどの能力を質的・量的に有しているとは言い難く、巡視船等の装備増強を始め、海上保安関係機関の能力強化が喫緊の課題である。2014年に発足した第一期ジョコ政権では、「海洋国家構想」を政策の柱に掲げ、同年12月にBAKAMLAを発足させた。BAKAMLAの前身である海上保安調整機構(BAKORKAMLA)は国内海上保安関係機関の調整業務のみを担ってきたが、改組によりBAKAMLAは自らが海上保安業務を行うこととなり、更には2022年3月の大統領令により、法執行に関し、国内海上保安関係機関に対する調整・監督権限が明確化され体制強化を進めている。
  • (4)BAKAMLAは組織発足以来、大型巡視船の建造に取り組み、2017年には110メートル級巡視船1隻、2019年には80メートル級巡視船3隻を就役させ、海上保安機関に対する監督調整能力向上のための装備・体制強化を進めているが、現在沖合航行が可能な巡視船は上述の大型船4隻に加え、48メートル級6隻の計10隻にとどまっており、頻発する事案に十分に対処できる体制が整っていない。
  • (5)我が国は、対インドネシア国別開発協力方針(2017年9月)における重点分野の一つとして、「アジア地域及び国際社会の課題への対応能力向上に向けた支援」を掲げており、その中で、海上安全やテロ対策等への対応能力を支援することとしており、本件協力は同方針に合致する。
  • (6)さらに、本計画は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のための新たなプランの4つの柱のうち、第一の柱「平和の原則と繁栄のルール」及び第四の柱「『海』から『空』へ広がる安全保障・安全利用の取組」に資するものであり外交的意義が大きい。また、海上保安分野の協力は、SDGsゴール9「強靱なインフラの構築、包摂的で持続可能な工業化の促進とイノベーションの育成」、ゴール14「持続可能な開発のための海洋と海洋資源の保全と持続可能な利用」及びゴール16「平和と公正の実現」にも貢献することから、本計画を実施する必要性は高い。
  • (7)なお、インドネシア海域はマラッカ・シンガポール海峡を始めとするエネルギーや鉱物資源の関連船舶が航行するシーレーンに位置し、日本の経済安全保障にも極めて重要な海上交通路である(広域性)。インドネシアの海上保安能力を向上させ、法執行を効果的に行うことにより、その海域において法の支配に基づく秩序を維持することは、日本やインドネシアを含む国際社会全体の平和と繁栄に不可欠であり(外交的観点)、インドネシア側の要請に応えて、無償資金協力により実施することが適当である。

2-2 効率性

 我が国は、インドネシア海洋水産省に対し、水産庁所属の漁業監視船を供与しており、同計画における同国建造の巡視船の課題や海象条件等の調査結果が本計画にも活かされた。また、実施中の技術協力「インドネシア海上保安機構能力開発プロジェクト」にて、人材育成制度の確立、組織間調整能力の強化等を行い、業務遂行に必要な知識・技能を有した職員の育成も図ることから、本計画にも活かされることが期待され、効率性は高い。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2022年実績値を基準値として、事業完成3年後の2030年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア BAKAMLAの年間の海上活動日数(重点海域への年間配備日数)が、現状の240日から360日に増加する。
    • イ 1航行当たりの最大連続哨戒可能日数が、現在の10日から15日に増加する。
  • (2)定性的効果
     巡視計画の改善等、海上の安全のための業務を遂行するためのBAKAMLAの業務改善、同国海域における沿岸監視とインシデント対応の強化が期待される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)インドネシア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)インドネシア国別評価報告書(2018年度・第三者評価)
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