ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和元年12月13日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎
1 案件概要
(1)供与国名
ウズベキスタン共和国(以下「ウズベキスタン」という。)
(2)案件名
園芸作物バリューチェーン強化計画
(3)目的・事業内容
本計画は,ウズベキスタンにおいて,園芸作物の生産・加工に従事する農家や関連企業へのツーステップローンの供与及び参加金融機関の能力向上支援,エンドユーザーへの営農支援等により,金融アクセスの改善及び園芸作物バリューチェーンの強化を図り,もって輸出力強化及び雇用促進を通じた農業セクターの発展に資するもの。
- ア 主要事業内容
- ツーステップローン:園芸作物の生産・加工に従事する農家や農業関連企業に対する中長期資金の供給。
- コンサルティング・サービス(参加金融機関の能力向上支援,エンドユーザー等への営農支援等)
- イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
230.23億円 | 1.00% | 25(7)年 | 一般アンタイド |
(注)金利は,一般条件(固定・オプション)を適用。
コンサルティング・サービス部分に係る金利は,0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)上,JICAの融資承諾前にサブ・プロジェクトを特定することができず,かつそのようなサブ・プロジェクトが環境への影響を持つことが想定されるため,カテゴリFIに該当する。なお,サブ・プロジェクトにカテゴリA案件は含まれない。
- イ
- 社会環境面:特になし。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ウズベキスタンの農業は,旧ソ連時代から綿花生産を中心に発展し,総就業人口の約3割,GDPの28.8%,全輸出の20%を占める主要産業である。他方,綿花に依存する農業は,国際市況価格の変動等に対し脆弱であり,同国政府は近年,野菜や果樹といった園芸作物の生産への転換や,生産から加工・流通を含めた関連産業(園芸作物バリューチェーン)の強化等により,農作物の多様化や輸出力強化を目指している。なお,園芸作物生産は年間を通じてそのバリューチェーンに関連する多岐に亘る雇用を生み出すことから,地方における雇用の受け皿としても貢献している。
他方,園芸作物バリューチェーン強化に向けては,生産,加工,流通の各段階での資金不足による関連設備の未整備が大きな阻害要因となっているが,通常の銀行融資は高金利かつ短期貸付が多い上,園芸作物バリューチェーン関連産業のキャッシュフローに合致する中長期資金貸付が不足していることに加え,銀行側の営農に係る知識・知見が十分ではないため,農業関連事業者向けの融資判断が困難であるといった課題を抱えている。このような状況から,同国においては,園芸作物バリューチェーン関連産業における旺盛な資金需要に対応しうる十分な融資の提供が急務となっている。
同国政府の「ウズベキスタン開発戦略2017-2021」においては,「雇用促進」や「農業の多角化強化」,さらに「生産性の高い農業機械の導入」や「農産物の保管・輸送・販売等のためのインフラ整備の促進」が優先課題として挙げられており,本計画は同国の政策において,優先度の高い事業として位置づけられている。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国の対ウズベキスタン国別開発協力方針(2017年3月)では重点分野として「社会セクターの再構築支援」が定められ,地方部の主要産業である農業分野への協力を行っている。また,対ウズベキスタンJICA国別分析ペーパー(2014年12月更新)においても,「農村部における所得向上及び保健医療・教育の充実」が重点分野であると分析しており,本計画はこれら方針・分析に合致する。さらに,SDGsゴール8(持続的,包摂的で持続可能な経済成長と,万人の生産的な雇用と働きがいのある仕事の促進)に貢献すると考えられることから,本計画の実施を支援する必要性は高い。
また,2014年7月に開催された「中央アジア+日本」対話・外相会合において,「中央アジア+日本」対話の枠組みで農業分野地域協力ロードマップが採択され,農業協力は優先的協力テーマの一つとなっていることから,本計画の実施を通じて二国間関係の強化に寄与することが外交的にも重要である。
(2)効率性
本計画では,サブローン規模・融資条件の設定は各参加金融機関の判断に委ねることで,参加金融機関にとって使い勝手の良い形とするとともに,農業の生産性向上,作物の多角化等に資する農業技術研修も合わせて実施し,エンドユーザーがサブローンをより有効活用できるよう工夫する。
(3)有効性
本計画により,ウズベキスタンにおける参加金融機関の能力向上(審査能力,リスク管理能力等),園芸作物の生産性・生産量の向上 ,輸出力強化,園芸作物バリューチェーンに関連する分野における雇用促進等を通じた農業セクターの発展が期待できる。
また,事業完成2年後に見込まれる定量的効果は以下のとおり。
- ウズベキスタンにおけるサブローン融資件数 300件
- エンドユーザーの園芸作物関連の売上高の増加率 10%
注:本事業は新事業であることから,事業完成2年後の新規サブローン数300件,融資を受けたエンドユーザーの売上高が融資を受ける前と比し10%増加することを見込む。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,JICAガイドライン,その他JICAより提出された資料。
本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。