ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和2年1月6日
評価年月日:令和元年12月13日
評価責任者:国別開発協力第二課長 江碕 智三郎
1 案件概要
(1)供与国名
ウズベキスタン共和国(以下「ウズベキスタン」という。)
(2)案件名
ナボイ火力発電所近代化計画(フェーズ2)
(3)目的・事業内容
本計画は,ナボイ火力発電所内に発電効率の高いガスタービン・コンバインドサイクル火力発電設備及び関連設備を整備することにより,電力供給の増強及び燃料消費量の削減を図り,もって同国の電力供給の安定化及びエネルギー効率化に寄与し,ひいては同国の経済発展の基盤作りに貢献するもの。
- ア 主要事業内容
- ガスタービン・コンバインドサイクル火力発電設備,送電線,変電施設
- スペアパーツ供給・技術指導サービス
- コンサルティング・サービス(基本設計,入札補助,施工管理)
- イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
1,282.46億円 | 0.50% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(注)金利は,一般条件(固定・基準)を適用。
コンサルティング・サービス部分に係る金利は,0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる火力発電セクターに該当するため,カテゴリAに該当する。本計画に係る環境社会配慮報告書(EIA)は,発電所は2019年5月,送電線並びに変電所は2019年7月にウズベキスタン国家自然保護委員会により承認済。
- イ
- 社会環境面:本計画は,53.44ヘクタールの用地取得を伴い,36軒の住居(別荘),2軒の店舗,24軒の農家に影響が生じる。ウズベキスタン国内法及びJICAガイドラインに沿って作成された住民移転計画に沿って取得が進められる予定。なお,本計画に係る住民協議において,本計画の実施に対する特段の反対意見は出ていない。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ウズベキスタンは豊富に産出される天然ガス・石炭を背景に,天然ガスによる火力発電が同国における電力総供給の75%を担っている。また,同国の電力需要は安定した経済成長に伴い年々増加しており,今後も電力需要は着実に増加する見込みである。
しかしながら,同国の火力発電所の大半は,旧ソ連時代から稼働しているもので老朽化が進み,熱効率も非常に低く,同国の温室効果ガスの排出量は世界で最も高いレベルにある。これらのことから,再生可能エネルギーの導入や省エネルギー政策の推進とともに,同国における主な電力供給源である天然ガス焚き火力発電所の発電効率の向上が喫緊の課題となっている。
また,「ウズベキスタン開発戦略2017-2021」においては,既存発電所の近代化及び発電所の新設を通じた電力アクセスの改善に取り組むことが優先課題の一つとされ,さらに,発電効率の向上による天然ガス等の燃料消費量の削減も目標にされていることから,本計画は同国の政策に合致し,優先度の高い事業に位置づけられる。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
我が国の対ウズベキスタン国別開発協力方針(2017年3月)では,重点分野として「経済インフラの更新・整備(運輸・エネルギー)」が定められている。また,SDGsゴール7(エネルギー)・9(強靭なインフラ)に貢献することからも本計画の実施を支援する意義は大きい。
さらに,2015年10月に発表された日・ウズベキスタン共同声明においても,「双方は,電力セクター・プロジェクト・ローンの実施を歓迎するとともに,この分野における協力を継続していくことを確認した。」としており,電力分野の協力を推進する本計画は,二国間関係の強化や外交政策上大きな重要性を有する。
(2)効率性
本計画では,これまでに実施した円借款附帯プロジェクトや電力セクター能力強化計画等の成果を踏まえ,本計画のスコープに6年間のスペアパーツ供給・技術指導サービスを含めることで,運営・維持管理能力の向上を図る予定。
(3)有効性
本計画の実施により,発電効率の高いガスタービン・コンバインドサイクル火力発電設備が整備され,電力供給の増強及び燃料消費量の削減が見込まれ,もってウズベキスタンの電力供給の安定化及びエネルギー効率化に寄与することが期待される。
事業完成2年後に見込まれる定量的効果は以下のとおり。
- 最大出力 600メガワット
- 間運転時間 7,500時間
- 総合熱効率(発電+熱供給) 60%
- 年間熱出力 1,000,000ギガカロリー
注:本事業は火力発電所敷地内に新規に発電設備を建設するものであり,定量的効果として上記の増加分が見込まれている。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,JICAガイドライン,その他JICAより提出された資料。
本計画に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
なお,本計画に関する事後評価は,実施機関であるJICAが行う予定。