ODA(政府開発援助)

令和元年10月11日

評価年月日:令和元年8月21日
評価責任者:国別開発協力第一課長 岡野 結城子

1 案件名

1-1 供与国名

カンボジア王国(以下「カンボジア」という。)

1-2 案件名

プノンペンにおける下水道整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,プノンペンのチュングエック湖処理区において,下水道施設を整備することにより,チュングエック湖流域への汚濁負荷の削減を図り,もって当該地域の水・衛生環境の保全及び改善を通じた同国の生活の質向上に寄与する。供与限度額は27.77億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)におけるカテゴリBであり,環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
  • (2)下水処理施設の建設予定地に係る用地取得及び湖の埋め立て許可手続きが,本計画の開始までにカンボジア政府により完了されること。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)カンボジア(一人あたり国民所得1,230ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,後発開発途上国(LDC)に分類されている。
  • (2)地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る国としてカンボジアは重要。我が国は,カンボジア内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来,国際場裏での協力(KR裁判)等を通じ,同国との関係を強化してきた。近年は,二国間の経済関係も緊密化しており,我が国からカンボジアへの民間投資が増大。2013年12月には,両国関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされ,地域・国際場裏の課題に関しても一層緊密に連携・協力していくことで一致している。
  • (3)我が国は,内戦終了直後の1993年より首都プノンペンの上水道支援を開始し,北九州市など地方自治体と連携した協力によって,2006年には給水率90%,24時間給水の実現等を達成し,"プノンペンの奇跡”と呼ばれるなど,大きく貢献。現在もプノンペンの成果を地方都市にも横展開するため,技術協力と資金協力を組み合わせ,上水道施設の運転技術向上・経営改善と施設拡張に継続的に取り組んでおり,水分野に対する我が国からの支援への期待は大きい。一方で,首都プノンペンでは急速な人口増加と都市化により汚水量が増大しているが,下水道施設は未整備の状況であり,同国は国家戦略開発計画(2014-2018年)において,プノンペンを含む大都市の下水・排水施設の整備と維持を重点項目としている。同国は整備する下水処理方式として本邦技術である前ろ過散水ろ床法の採用を決定しており,我が国の質の高いインフラ輸出にも資する。上記を踏まえ,上水道分野に続き,下水道分野でも我が国の地方自治体と連携した協力を行うことは二国間関係の一層の強化に資すると考えられる。なお,都市生活環境整備に資する下水道分野における取組は,我が国の対カンボジア王国国別開発協力方針(2017)において,重点分野「生活の質向上」の中で取り組む具体策の一つと位置づけられている。
  • (4)本計画は,我が国及びJICAの援助方針・分析並びに同国政府の開発政策に合致し,下水処理施設,及び下水管網の整備により汚水を適切に処理し,住民の水・衛生環境の改善に資するものであり,SDGsゴール3(健康)及び6(水・衛生)に貢献すると考えられる。また,同国は,貧困層及び貧困層に近い層(一日の収入が3米ドル以下の国民は約72%(出典:世界銀行(2011年))が依然多く,人間の安全保障の観点から本計画を通じて,貧困,感染症など個人の生命,生活に対する脅威への対応が必要であり,生活環境の改善に寄与する本計画の実施を無償資金協力にて支援する必要性は高い。
  • (5)また,本年5月に開催された日カンボジア首脳会談においても,プノンペンの都市開発や都市機能強化について首脳間で認識が一致した他,同国は北朝鮮や南シナ海を始め地域・国際社会における喫緊の課題についても連携していくことで一致している。以上のことから,カンボジアの開発ニーズ及び我が国の支援方針に合致し,メコン地域の連結性にも資する本計画を実施することは,良好な二国間関係の維持・強化に資する。

2-2 効率性

 技術協力プロジェクト「プノンペン都庁及び公共事業・運輸省下水管理能力強化プロジェクト」(2019-23年)により,本計画の供用前までに下水道施設の維持管理等にかかる制度,組織体制の強化等を実施予定であり,本計画ソフトコンポーネントにおいて下水道施設の運営・維持管理技術に係る協力を実施する予定であることから,実施体制面,技術面についての特段の懸念はない。また,財務面に関しては協力準備調査において,本計画の施設の年間運営・維持管理費を算出し,それを裨益住民(1.9万人)から下水道料金を徴収する場合の下水道サービスに対する支払可能額あるいは近年のプノンペン都の下水・排水関連の支出額と比較した場合いずれの場合においても年間運営・維持管理費を十分捻出できることを確認している。

2-3 有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果:2027年(事業完成3年後)に汚水処理人口が基準年(2018年)実績値である0人から19,000人に増加,1日あたりの汚水処理量が0立方メートル/日から5,000 立方メートル/日に増加する。
  • (2)定性的効果:公共用水域(チュングエック湖)の水環境の改善及び対象地域の住民の生活環境の向上。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)カンボジア政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
  • (3)カンボジア国別評価(2017年度/第三者評価)
  • (4)南部回廊を中心としたメコン地域の連結性の評価(2017年度/第三者評価)
  • (5)メコン地域のODA案件に関わる日本の取組の評価(2014年度/第三者評価)
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