ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
評価年月日:令和元年9月9日
評価責任者:国別開発協力第三課長 黒宮 貴義
1 案件概要
(1)供与国名
ケニア共和国(以下「ケニア」という。)
(2)案件名
モンバサ経済特区開発計画(第一期)
(3)目的・事業内容
モンバサ港南岸のドンゴクンドゥ地域において,経済特区の港湾並びに基幹道路及び電力供給施設等のインフラを整備することにより,経済特区の物流能力の向上及び電力供給の安定化を図り,もって同地域における投資環境の改善に寄与し,民間投資の促進とそれを通じた持続的経済成長の実現に貢献することを目的とする。
- ア 主要事業内容
- 土木工事(港湾の建設,経済特区内基幹道路の建設,電力供給施設の建設等)
- 資機材調達(荷役機械)
- コンサルティングサービス
- イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
370.90億円 | 年0.10% | 40(12)年 | 日本タイド(本邦技術活用条件(STEP)) |
(注)コンサルタント部分の金利は0.01%を適用。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- ア
- EIA(環境影響評価):本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上に掲げる送変電・配電セクター及び影響を及ぼしやすい特性に該当するため,カテゴリAに分類される。電力部分に係る環境社会影響評価(ESIA)報告書は,国家環境管理局により2019年6月に承認済み。港湾・道路部分のESIA報告書は,2019年10月に承認予定。工事中の大気汚染,騒音・振動等については,同国国内の排出基準及び環境基準を満たすよう,散水,運搬車両の速度規制,低騒音型車両の使用や夜間の工事制限等の対策が講じられる。港湾建設における浚渫工事にあたっては,濁度を抑制するための汚濁防止膜の設置等の措置がとられ,事業開始後の水質汚染については,定期的な荷役機械のメンテナンスによる油の漏洩防止等の対策が行われる。また,一部マングローブの伐採が生じるが,伐採面積を最小限にするレイアウトの採用,マングローブ植林の実施により,影響は最小化される見込み。
- イ
- 用地取得及び住民移転:約233ヘクタールの用地取得と683人の非自発的住民移転が発生するが,実施機関が中心となり,ケニア国内法制度及びJICAガイドラインに基づき策定された住民移転計画に沿って住民移転・補償手続きを進める。
- ウ
- 外部要因リスク:特になし。
2 資金協力案件の評価
(1)必要性
- ア
- 開発ニーズ
ケニア政府は,国家開発計画「Vision 2030」の3本柱の一つである経済開発において,「ドンゴクンドゥ地域の自由貿易港の建設」及び「経済特区開発」を優先事業として位置付けており,東アフリカ地域の玄関口として当該地域最大の国際貿易港を有し,ウガンダ共和国やルワンダ共和国等に続く東アフリカ北部回廊の起点であるモンバサに経済特区を設けることにより,外国企業の誘致,国内外の投資促進及び産業の多角化を行い,ひいては同地域を含むケニア全体の経済活性化を図ることとしている。
我が国は,モンバサ経済特区開発のためのコンセプトづくり及び必要なインフラの開発計画策定のために,技術協力を通じてモンバサ経済特区開発のためのマスタープランの策定支援を実施。同マスタープランでは,経済特区開発のために整備が必要なインフラとして,港湾,電力施設,経済特区内の基幹道路,給水施設,排水路等が特定された。なお,モンバサ経済特区は,三つのフェーズに分けて開発される予定であり,開発可能な約376ヘクタールのうち,フェーズ1では約112ヘクタールを対象としている。本計画は,これらインフラのうち,フェーズ1地域を対象とした港湾,経済特区内の基幹道路及び電力供給施設の整備を行うものであり,「Vision 2030」の実現に貢献するものとして位置付けられる。 - イ
- 我が国の基本政策との関係
対ケニア共和国国別援助方針において,重点分野の一つとして「経済インフラ整備」を掲げ,ソフト・ハード一体となった支援を実施することとしており,本計画は,右の方針に合致する。
また,我が国は2019年8月に横浜で開催した第7回アフリカ開発会議(TICAD7)において,「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を踏まえた質の高いインフラ投資の推進を表明しており,本計画は同表明を具体化するものとして,外交上の意義も大きい。
(2)効率性
本計画は,日本が策定支援したマスタープランに基づき,経済特区に必要なインフラの一部を整備するものである。加えて必要となる給水施設,排水路等の基礎的インフラは,無償資金協力「ドンゴクンドゥ地域モンバサ経済特区インフラ整備計画」により整備される予定である。また,円借款「モンバサ港周辺道路開発計画」により,モンバサ経済特区から対岸のモンバサ港及び東アフリカ北部回廊へ接続する道路を建設している他,円借款「モンバサゲートブリッジ建設計画」にて,モンバサ島とその南部に位置する経済特区側とを繋ぐ橋梁を建設予定。
本計画の実施においては,これらの既往案件との相乗効果が期待される。
(3)有効性
本計画により,モンバサ経済特区に必要なインフラ整備によるケニアの投資環境改善が期待される。完成2年後(2026年)に見込まれる定量的効果は以下のとおり。
- 経済特区内に新規に建設される港湾における取扱貨物量:(車両)60,000台/年,(コンテナ)15,000TEU/年)
- 経済特区内に新規に建設される道路における車両交通量:400台/日
- 経済特区内変電所送電端電力量:6.9ギガワット/年
また,ケニアは我が国の国連安保理常任理事国入りを支持するなど,国際社会において我が国と協力関係にあり,アフリカにおける安定した友好国である同国との間で二国間関係の強化を図ることは,国際社会やアフリカ地域における我が国の活動にも大きく寄与するものと期待される。
3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用
要請書,JICA環境社会配慮ガイドライン,その他JICAより提出された資料及びケニア国別評価(2014年度(平成26年度)第三者評価)報告書。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表
を参照。
なお,本計画に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。