ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
令和元年7月18日
評価年月日:平成30年6月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 寺田広紀
1 案件名
1-1 供与国名
キルギス共和国(以下「キルギス」という。)
1-2 案件名
タラスータラズ道路ウルマラル川橋梁架け替え計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,キルギスとカザフスタン共和国(以下「カザフスタン」という。)を結ぶ国際幹線道路であるタラスータラズ道路において,ウルマラル川に架かる橋梁を架け替え,また同橋梁への進入道路を整備することにより,運輸交通網の改善と物流の円滑化を図り,もって運輸インフラ維持管理と地域間格差の是正に寄与するもの。供与限度額は17.85億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)キルギス政府による電線等のユーティリティの移設が,施工入札公示までに完了する必要がある。
- (2)本計画は,JICA環境社会配慮ガイドラインにおいて,環境への望ましくない影響は重大でないと判断される。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)キルギス(一人あたり国民所得1,100ドル)は,OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類されている。
- (2)内陸国である同国は,旅客及び貨物輸送の約95%を道路交通に依存しており,さらに,同国の道路は,同国内のみでなく,中央アジア各国を結ぶ域内交通手段としても重要な役割(ハブ機能)を担っている。
- (3)同国内の道路網の大部分は,旧ソ連時代に完成したものであるが,1991年の独立以降の経済の低迷により,道路や橋梁の改修が十分に行われずに老朽化が進行している。そのため,国民の生活に必要な物資の輸送や周辺国との交易に支障をきたし,経済成長の阻害要因となっている。
- (4)同国は,「国家持続的開発戦略2013-2017(NSDS)」の重点分野の一つに「戦略的経済産業の開発」を掲げ,運輸・道路セクターの修復を優先項目とするとともに,その後策定された5か年計画「未来への40ステップ(2018-2023年)」にも運輸・交通インフラ整備が,重点施策の一つとして盛り込まれている。同国北西部と隣国カザフスタンを繋ぐタラスータラズ道路のタラズ側(カザフスタン側)から82キロメートルに位置するウルマラル川橋梁は,老朽化が著しく,同橋梁の掛け替えは,NSDSの最優先事業の一つに位置づけられている。
- (5)本計画は,ウルマラル川橋梁,及び同橋梁への進入道路を整備することで,運輸交通網の改善と物流の円滑化を図るものである。旧ソ連時代製の老朽化した橋梁を,維持管理の容易な近代的な橋梁に架け替え,さらに,橋梁への進入道路を事故発生予防等に配慮したものに整備することにより,本件幹線道路の維持管理に寄与することが期待される。また,運輸交通網の改善により,交通の遮断等が減少し,物流の円滑化が図られることにより,対象地域の農作物等の国外輸出が促進されることで,当該地域の国内産業の競争力が強化され,都市部と地方の地域間の格差是正が期待される。
- (6)本計画は,同国の開発課題・開発政策に合致するとともに,我が国の援助方針における重点分野「運輸インフラ維持管理と地域間格差の是正」にも合致する。さらに,持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット9(インフラ・産業化・イノベーション)に貢献する。
- (7)2015年10月の安倍総理の同国訪問時に発出した共同声明において,同国の運輸インフラ整備の重要性が確認されているほか,2017年5月に開催された「中央アジア+日本」対話・第6回外相会合においても,運輸物流分野の協力推進が主要テーマの一つに挙げられた。本計画は,こうしたハイレベル対話の成果を具体化するものである。
2-2 効率性
- (1)橋梁の架構形式は,「構造性・施工性・工期・維持管理性・経済性」の5つの観点から選定を行った。
- (2)JICA技術協力プロジェクト「橋梁・トンネル維持管理能力向上プロジェクト」(2013年~2016年)を通じて開発した,橋梁維持管理データベース及び点検マニュアルの活用が可能である。
2-3 有効性
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)ウルマラル川橋梁を通過する交通量が3,600(台/日)(2017年実績値)から,4,600(台/日)(2024年:事業完成から3年後)に増加する。
- (2)ウルマラル川橋梁を通過する旅客数が約343万(人/年)(2017年実績値)から,438万(人/年)(2024年:事業完成から3年後)に増加する。
- (3)ウルマラル川橋梁を通過する貨物量が約70万(トン/年)(2017年実績値)から,90万(トン/年)(2024年:事業完成から3年後)に増加する。
- (4)歩行者等の安全確保,道路線形改良により,交通が円滑化し,安全性が向上する等。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)キルギス政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (3)2011年度中央アジア3か国に対する市場経済化支援の評価