ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成30年6月20日
評価年月日:平成30年5月22日
評価責任者:国別開発協力第三課長 大場 雄一
1 案件名
1-1 供与国名
ジンバブエ共和国(以下「ジンバブエ」という。)
1-2 案件名
南北回廊北部区間道路改修計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,南北回廊北部山間部のチルンド—マクティ間において,登坂車線の建設及び急カーブを改修することで,同区間の交通・物流状況の改善を図り,もって南北回廊周辺における物流の促進及び経済活動の活性化に寄与する。供与限度額は22.88億円である。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)本計画は,「国際協力機構環境社会配慮」ガイドライン上大規模なものに該当せず,環境への望ましくない影響は重大でなく,影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当しないため,環境社会配慮カテゴリはBである。
- (2)ジンバブエ運輸・インフラ開発省道路局の監理のもと,施工業者が大気質,水質・騒音等の汚染対策や騒音対策についてモニタリングを実施すること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)ジンバブエ(一人あたり国民所得940ドル)はOECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上,低中所得国に分類されている。
- (2)同国政府は,国家経済回復計画である「ジンバブエ持続的な社会経済移行指針」(Zimbabwe Agenda for Socio-Economic Transformation。以下「Zim Asset」という。)の四本柱の一つとしてインフラ整備を揚げ,安全な道路の確保を喫緊の課題としている。
- (3)同国は総延長88,100キロメートルに及ぶ道路網を有するが,舗装道路は4分の1弱の17,400キロメートルに留まるなど,道路整備が遅れており,2009年以降の経済安定化に伴う交通量の増加(今後も年平均4.9%の伸びが予測されている)に対応しきれていない状況が続いている。特に,対象区間を含む南北回廊は,首都ハラレからザンビア国境のチルンドと南アフリカ国境のベイトブリッジを結んでおり,内陸国である同国の経済活動を支える幹線道路であるのみならず,南部アフリカ地域の物流の大動脈として同国を経由して周辺内陸国へと通ずる陸上輸送を担う重要な幹線道路でもある。本計画の対象区間である山間部は,登坂車線やカーブの道路幅の不足により,交通事故及び渋滞が頻発し,円滑な車両通行・輸送を確保する上での文字通り隘路になっており,早急な対策が必要となっている。
- (4)このような状況を解消し,安全で円滑な交通・物流の改善を図るため,我が国は,ジンバブエ政府から,南北回廊北部区間の登坂車線及び急カーブの改修に対する支援要請を受けた。
- (5)我が国の対ジンバブエ共和国国別援助方針(2016年3月)では,援助の基本方針を「Zim Assetに資する持続可能な開発」とし,重点分野「南部アフリカ地域経済への統合の円滑化」において域内の流通促進と広域インフラ整備を進めることとしている。
- (6)本計画は,ジンバブエ政府のZim Assetを具現化するものであり,本計画対象地域は南北回廊に位置し,TICAD VIにて示された総合広域開発による連結性強化に当たる。
- (7)我が国とジンバブエ政府は,2016年3月のムガベ大統領(当時)訪日時の共同声明において,両国関係を一層強化することで一致し,我が国は,本計画の協力準備調査を含むジンバブエに対する開発協力を引き続き実施していく旨を表明している。同国新政権も本計画を重視しており,2018年3月,ジンバブエのモハディ副大統領より河野外務大臣に対し,本計画の早期着工と完成への期待が表明された。
2-2 効率性
一般資材(アスファルト,セメント,骨材,木材等)及び盛土材に関してもジンバブエの他工事で使用されている既存の採土場から現地調達することにより,コスト縮減を図る。
2-3 有効性
- (1)本計画の実施により,対象区間において,以下の成果が期待される。
- ア チルンド—マクティ間において,交通事故件数が110件/年(2016年実績値(以下同じ))から20件/年(2023年目標値(以下同じ):事業完成3年後)に,対象区間の大型車両通行時間が26分(注:低速車によって渋滞が発生した際の平均通行時間)(2016年)から7分(注:低速車が登坂車線を通行し,標準速度の車両が走行車線を走行した場合の平均通行時間)(2023年:事業完成3年後)になる。
- イ 旅客数が51万人/年(2016年)から54万人/年(2023年)に増加する。
- ウ 貨物量が430万トン/年(2016年)から480万トン/年(2023年)に増加する。
- エ 安全で円滑な走行が確保される。
- (2)周辺の観光地へのアクセスが向上することにより,地域経済の活性化に寄与し,道路整備により,同国北部地域の発展が促進され,地域格差の是正に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)ジンバブエ共和国政府からの要請書
- (2)JICA協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)