ODA(政府開発援助)

平成28年6月10日

評価年月日:平成27年11月9日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男

1 案件名

1-1 供与国名

ガーナ共和国

1-2 案件名

野口記念医学研究所先端感染症研究センター建設計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は,野口記念医学研究所(以下,「野口研」という。)の実験棟(先端感染症研究センター)の新設及び研究機材の供与を行うことにより,研究機関及び教育機関としての活動範囲の拡大を図り,もってガーナ及び西アフリカ全体の感染症対応能力強化に寄与するもの。供与限度額22.85億円。

1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)ガーナ政府による準備工事,陸揚げ港における資機材の免税措置,建設された施設及び調達された機材の効果的な運用並びに維持管理を図るための予算措置等が確実に実施されること。
  • (2)野口研が実施する各研究プロジェクトによる収入が継続的にあること。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)ガーナにおいては,マラリア,HIV/エイズ,感染性の下痢症,気管支炎等が主要疾病の7割以上を占めており,感染症対策が重要な医療政策の一つとなっている。現状ではMDG6(HIV/エイズ,マラリア,その他の疾病の蔓延防止)の2015年目標値の達成が困難であり,15~29歳におけるHIV/エイズの罹患率は3.2%(2006年)のピーク時から2.0%(2010年)まで下がったものの,その後停滞しており,引き続きの対策が必要とされている。また,同国の国家開発計画である「Ghana Shared Growth and Development Agenda II: 2014-2017」では,マラリアやHIV/エイズ・性感染症等の感染率削減に向けた研究の強化に取り組むとしている。
  • (2)こうした課題への対応拠点である野口研は,ガーナ及び西アフリカ地域の主要疾病研究を実施する等,西アフリカ地域をはじめとする国際的な感染症対策課題に対して広く貢献してきた。最近では,2014年に発生したエボラ出血熱対応でも近隣国の疑い事例の検査を実施するなど,西アフリカ地域の感染症対策における中心的な役割を果たす機関としても,国際機関や近隣諸国からも注目されている。こうした中,委託研究や検査,他機関との共同研究が増加していくことが予想されていることに加え,今後ガーナ大学からの研修生やインターンシップを受け入れることとしており,教育機関との連携による若手研究者の育成にも貢献することが期待されている。
  • (3)しかしながら,現在の施設は手狭で老朽化が進んでいるため,感染症対策の追加実験室等を含む研究センターの建設が必要とされている。かかる状況から,ガーナ政府は我が国に対して,野口研の機能を拡充するための新たな実験棟の建設に対する支援を要請した。
  • (4)こうした中,本計画の必要性及び妥当性は上記のとおりであるところ,野口研の研究機関及び教育機関としての活動範囲の拡大を図り,もってガーナ及び西アフリカ全体の感染症対応能力強化に寄与するために本計画を実施するもの。

2-2 効率性

 必要性,施工効率を勘案し,先方政府とも調整の上,整備内容及び規模の絞り込みを行った。

2-3 有効性

 本件の実施により,以下のような成果が期待される。

  • (1)ウイルス学・細菌学・免疫学の3部門について,現在の施設から,本計画により建設する新たな研究センターに移転することで,十分なスペースの確保が可能となり,研究件数が31件(基準値:2014年実績値)から36件(目標値:2021年(事業完成3年後))に増加する。
  • (2)ウイルス学・細菌学・免疫学の3部門について,現在の施設から,本計画により建設する新たな研究センターに移転することで,十分なスペースの確保が可能となり,インターン受入人数が年間103人(基準値:2012~2014年平均)から135人(目標値:2021年(事業完成3年後))に増加する。
  • (3)エボラウイルスをはじめとした危険性の高い細菌・ウイルスを扱うことができるBSL-3実験室について,安全性及び効率性を十分に配慮した設計とし,新たな研究センターに設置することで,利用者数が年間1,005人(基準値:2014年実績値)から1,307人(目標値:2021年(事業完成3年後))に増加する。
  • (4)現在の施設における混雑状況が解消されることで,当該施設を引き続き使用する分野(疫学,栄養学,寄生虫学等)の研究活動の安全性が向上するとともに,野口研全体で実験の効率化と研究制度の向上が図られる。また,既設のBSL-3実験室は技能習得のための実習等に活用されることで,教育活動等の効率化が図られる。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)ガーナ政府からの要請書
  • (2)JICAの協力準備調査報告書
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