ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年6月9日
評価年月日:平成28年2月10日
評価責任者:国別開発協力第三課長 今福 孝男
1 案件名
1-1 供与国名
モーリタニア・イスラム共和国
1-2 案件名
国立ヌアクショット公衆衛生学校拡張・機材整備計画
1-3 目的・事業内容
本計画は,国立ヌアクショット公衆衛生学校新校舎を建築し,機材を供与することにより,同校の教育環境の改善と共に保健人材の育成を図り,もって都市部における貧困削減に寄与するもの。供与限度額11.82億円。
1-4 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
- (1)モーリタニア政府による工事準備,工事中の電力,水道等の整備,陸揚げ港における資機材の免税措置等が確実に実施されること。
- (2)施設及び調達された機材の効果的な運用並びに維持管理を図るための予算措置等が確実に実施されること。
2 無償資金協力の必要性
2-1 必要性
- (1)モーリタニアは,(ア)5歳未満児の死亡率が90/1,000出生,(イ)妊産婦死亡率が320/10万出産(2015年 WHO)と,サブサハラアフリカ平均を下回っているものの依然として高い水準にある。かかる状況下,モーリタニアは「貧困削減戦略文書」(2011年~2015年)に基づき,「国家保健開発計画」(2012年~2020年)を策定し,保健サービスの提供と並び,保健人材開発に取り組むこととしている。さらに「保健人材開発戦略計画」(2006年~2015年)を策定し,医師・看護師等の各職種における保健人材の確保,保健人材能力の改善,各保健施設における保健人材配置率の増加等に関する具体的な目標を掲げている。
- (2)現在,モーリタリアにおける保健人材開発は,1966年に開設された国立ヌアクショット公衆衛生学校(以下「ENSP」という。)に加えて,2009年以降に地方都市に開設された4校を合わせ,全5校の公衆衛生学校が担っている。特に,ENSPは,首都ヌアクショットに位置することもあり,モーリタニアでも比較的高度な医療機関に近接している。そのため,全国で唯一,麻酔,臨床検査及びX線撮影等を行う上級保健技師の養成コースを備える等,同国の公衆衛生学校の中で中心的な役割を担う。
- (3)しかしながら,ENSPでは,保健人材輩出数が増加する一方,フランスの援助による1983年の校舎の整備以降,本格的な施設の拡張工事等は行われておらず,約370名を定員として計画された学校施設に対して,2015年には定員の約2.3倍の約850名が在学している状況にあり,学習環境が悪化している。これらに加えて,機材等の不足も深刻であり,現在はカリキュラムに対応した授業の実施に支障をきたしている。かかる状況から,モーリタニア政府は我が国に対して,ENSPの施設拡張及び機材整備を通じた教育環境改善に対する支援を要請した。
- (4)モーリタニアと我が国は主に水産分野の協力を通じ,良好な関係を築いており,本案件はそうした両国関係も更に進展させるものである。また,我が国はTICAD Vにおいて,「保健分野における500億円の支援及び12万人の人材育成」を行うことを約束しており,本件協力はこれを具体化するものとなる。
- (5)以上の背景から,我が国無償資金協力による支援実施が妥当と判断し,国立ヌアクショット公衆衛生学校新校舎を建築し,機材を供与することにより,同校の教育環境の改善と共に保健人材の育成を図り,もって都市部における貧困削減に寄与するために本計画を実施する。
2-2 効率性
必要性,施工効率を勘案し,先方政府とも調整の上,整備内容及び規模の絞り込みを行った。
2-3 有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- (1)全校生徒数が861人(2013年の全校生徒数)から1,223人(2020年:事業完成3年後)に増加する。
- (2)生徒一人当たりが在学中に受講する実習時間について,施設・機材の容量不足のために,ENSP通常運営時間内に実施される時間数が制限されていたところ,本計画の実施により(実施前:2013年実績値。実施後:2020年(事業完成3年後)),
- ア 看護師コースにおいては実施前1,564時間でから実施後1,956時間に,
- イ 医療社会看護師コースにおいては実施前963時間から実施後1,376時間に,
- ウ 上級保健技師コースにおいては実施前0時間から実施後1,463時間に,
- (1)モーリタニア政府からの要請書
- (2)保健関連ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた日本の取組の評価(平成26年度外務省ODA評価)
- (3)JICAの協力準備調査報告書