ODA(政府開発援助)
政策評価法に基づく事前評価書
平成28年5月19日
評価年月日:平成28年1月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治
1 案件名
(1)供与国名
スリランカ民主社会主義共和国
(2)案件名
ジャフナ大学農学部研究研修複合施設設立計画
(3)目的・事業内容
本計画は,ジャフナ大学農学部において研究棟,試験圃場等の建設及び機材の整備を実施することにより,北部乾燥地における農畜産分野の効率的・効果的な研究・人材育成を図り,もって同地域における農畜産分野の生産性向上に寄与するもの。
供与限度額は16億6,700万円。
(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点
建設予定地は内戦の主戦場となった地域に位置し,周辺地では不発弾が発見されていることから,本計画の実施においても不発弾等の埋設物の発見,それに伴う工事遅延等のリスクがある。
2 無償資金協力の必要性
(1)必要性
- ア 2009年の内戦終結後,スリランカ政府による復興事業に加え,ドナー各国やNGOによる紛争影響地域(北部州)への復興支援の実施により,北部州の復興は一定程度進展を見せている。しかし,コロンボ首都圏を含む西部州の1人当たりの国内総生産(GDP)が4,420米ドルであるのに対し,北部州の同指数は2,257米ドル(2012年)に留まり,2倍近い所得格差が依然存在している。北部州の人口の多くは少数派であるタミル人であることから,こうした大きな所得格差は民族対立を再燃させかねない不安定要素となっている。
- イ スリランカが再び紛争に陥ることなく国全体として堅調な発展を中長期的に達成するためには,内戦で破壊された北部州の速やかな復興と発展を実現する必要がある。しかしながら,北部州への支援が進んでいないのが現状である。
- ウ かかる状況から,スリランカ政府は我が国に対して,北部州での主要産業である農業分野を中心とした産業育成に貢献すると考えられるジャフナ大学農学部の再建に対する支援を要請したものである。なお,スリランカ政府により近々発表予定の「国家開発政策フレームワーク(2015~2020年)」には,農業分野において新品種の開発及び研究強化を図り,米の生産性向上や主要穀類の完全自給を達成することが開発目標のひとつとして掲げられる見通し。
- エ 本事業は,ジャフナ大学農学部において,施設(研究棟及び試験圃場等)の整備及び機材を供与することにより,北部州における乾燥農畜産等の研究及び技術普及に関する人材育成の中核を担う同学部の機能強化を図り,もって後発開発地域の開発に寄与するものであり,実施の必要性及び意義は大きい。
(2)効率性
- ア 施設・機材運用上のノウハウの不足については,本事業のソフトコンポーネントにて,教員及び機材管理を担当するラボ技官に対し,実験・実習の方法及び機材の使用・管理方法を指導し,施設・機材の効率性を高めることとした。
- イ 各学科のカリキュラム及び実験・実習シラバスの内容,研究内容,及び既存保有機材の状況などの確認に基づいて候補機材リストを作成し,その中から一般的な実験・実習・研究に必須で,汎用性/使用頻度の高い機器,及び汎用性/使用頻度は比較的限られるものの一般的な実験・実習や優先度の高い機材を本件の対象とすることとした。
(3)有効性
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
- ア ジャフナ大学農学部において講義及び研究を受ける学部生が年間280名(2014年)から480名(2021年:事業完成3年後)に,また,大学院生が年間14名(2014年)から30名(2021年)に増加する。
- イ ジャフナ大学農学部の教員数(名)が24名(2014年)から43名(2021年)に増加する。
- ウ スリランカ北部の乾燥地域農業の生産性向上に関する研究論文の数が年間12本(2014年)から24本(2021年)に増加する。
- エ ジャフナ大学農学部において実施される農業実習が年間0時間(2014年)から105時間(2021年)に増加する。
- オ 大学の外部に向けて実施される研修の回数が年間2回(2014年)から6回(2021年)に増加する。
- カ 学生の実践的な知識・技術の習得,教員の研究能力向上,並びに研修等を受けた農業関係機関の職員,農業普及員及び民間関係者の専門的な知識向上に寄与する。
3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
- (1)スリランカ政府からの要請書
- (2)スリランカ国別評価報告書
- (3)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)
- (4)対インドネシア円借款「ムラワルマル大学整備拡充計画」の事後評価(JICAを通じて入手可能)