ODA(政府開発援助)

平成28年4月7日

評価年月日:平成28年3月31日
評価責任者:国別開発協力第二課長 田中 秀治

1 案件概要

(1)供与国名

インド

(2)案件名

タミル・ナド州都市保健強化計画

(3)目的・事業内容

 タミル・ナド州において,非感染性疾患対策に向けた医療施設・機材の整備及び医療従事者の能力強化を行うことにより,都市保健医療システムの改善を図り,もって同州住民の健康増進を通じて貧困・環境問題の改善に寄与するものである。

  • ア 主要事業内容
    • (ア)医療施設・機材整備
    • (イ)医療従事者能力強化
    • (ウ)コンサルティング・サービス
  • イ 供与条件
    供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
    255.37億円 0.3% 40(10)年 一般アンタイド

    (注)コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。

  • (4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

    • ア EIA(環境影響評価)
       本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)に掲げるカテゴリBに該当する。本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は,国内法上は作成が義務付けられており,2016年7月までに州政府機関(State Environmental Impact Assessment Authority, Tamil Nadu)による承認を得る見込み。
    • イ 用地取得及び住民移転
       本計画は,既存施設内で実施され,必要な用地は全て州政府所有地を活用するため民有地の取得は行われず,住民移転も発生しない。
    • ウ 外部要因リスク:特になし。

    2 資金協力案件の評価

    (1)必要性

    • ア 開発ニーズ
       近年急速な経済成長を遂げるインドでは,2005年から保健医療分野において政府主導の「国家農村保健医療ミッション(NRHM)」が実施され,感染症の発生件数の減少等,保健指標に改善が見られる。一方で,ミレニアム開発目標(MDG)の中でも,5 歳未満児死亡率,乳児死亡率,妊産婦死亡率については2015 年目標値に達成しない見込みである。同国では,大多数の貧困層は,数の限られた公的医療サービスに依存せざるを得ない状況であり,インド政府は,第12 次5 か年計画(2012 年4 月-2017 年3 月)において,都市部のスラム住民を含む貧困層に対する公的医療サービスの拡大と強化を国家の優先事項として位置付けている。特に,経済発展に伴う都市部への人口流入に従い,増加する都市部貧困層に対する公的医療サービスの向上を喫緊の課題として掲げ,都市部の既存の医療施設の強化や医療従事者の能力強化などを主な戦略としている。
       本計画実施予定のタミル・ナド州はインドにおいて最も都市化が進んだ州であり,今後も農村部から都市部への人口流入による都市化の進行や貧困層の増加に伴うスラム街の人口増加が予想されている。特に都市部貧困層向けの公的医療サービスを提供する医療施設では,十分な公的医療サービスが都市部貧困層へ提供されていないため,公的医療サービスへのアクセス強化が重要な課題となっている。また,生活習慣の変化などにより,非感染性疾患が増加傾向にあり,病気の早期発見,早期治療などを含めた対策の必要性が高まっている。
       このため,本計画を実施することは,タミル・ナド州において,非感染性疾患対策に向けた医療施設・機材の整備及び医療従事者の能力強化を行うことにより,都市保健医療システムの改善を図り,もって同州住民の健康増進を通じて貧困・環境問題の改善に寄与するものであり,インドの開発政策とも高い整合性を有しており,本計画のニーズは大きい。
    • イ 我が国の基本政策との関係
       2006年5月に策定された「対インド国別援助計画」においては,対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進,(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大を掲げている。本計画は,保健・衛生の観点からインドの貧困問題の改善に資する案件として,上記(b)に合致するものである。

    (2)効率性

     本計画においては,多数の医療機関を対象とした機材整備等の支援を行うため,支援が有効活用されるよう,機材整備先医療機関の医療従事者の能力を適切に把握した上で,精度の高い診断への適用や,正しい運用・維持管理方法など必要な能力強化支援を予定している。

    (3)有効性

     本計画の実施により,タミル・ナド州において,非感染性疾患対策に向けた医療施設・機材の整備及び医療従事者の能力強化等を行うことにより,都市保健医療システムの改善を図り,もって同州住民の健康増進を通じて貧困・環境問題の改善に寄与することが期待される。運用・効果指標(いずれも事業完成3年後(2023年)見込み)として,カテーテル治療の手術数(マドゥライ医科大学病院:700件:2014年336件,キルポーク医科大学病院及びコインバトール医科大学病院:150件:2014年いずれも0件),ハイブリッド手術室での手術(マドゥライ医科大学病院:280件:2014年46件,キルポーク医科大学病院:200件:2014年0件,コインバトール医科大学病院:100件:2014年5件),血液透析治療数(全病院:600件)等を設定している。

    3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

     要請書,インド国別評価報告書国際協力機構環境社会配慮ガイドライン別ウィンドウで開く,その他国際協力機構から提出された資料。
     案件に関する情報は,交換公文締結後に公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース別ウィンドウで開く及び事業事前評価表別ウィンドウで開くを参照。
     なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。(了)

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