ODA(政府開発援助)

令和5年11月6日

評価年月日:令和5年9月12日
評価責任者:国別開発協力第三課長 井土 和志

1 案件名

1-1 供与国名

 コンゴ民主共和国(以下、「コンゴ(民)」という。)

1-2 案件名

 キンシャサ市モンアンバ地区における電力アクセス改善計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、キンシャサ市の経済開発地区であるモンアンバ地区において、既存のフナ変電所とリミンガ変電所の改修を行うことにより、同地区の電力供給の安定化を図り、もって同地区の経済活動活性化と住民の生活環境改善を通じたコンゴ(民)の経済開発に寄与する。
 供与限度額は、27.10億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2022年1月制定)におけるカテゴリCであり、環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)コンゴ(民)(一人当たり国民総所得(GNI)580ドル)は、OECD開発援助委員会(DAC)の援助受取国リスト上、後発開発途上国に分類されている。

  • (2)コンゴ(民)は、サブサハラ・アフリカ第1位の国土面積及び第3位の人口を擁する中部アフリカの主要国であり、コンゴ川流域の肥沃な土地は潜在的な農業生産能力が高い。豊かな水資源による水力発電ポテンシャル(約10万メガワット、世界第3位)や豊富な鉱物資源等を有する資源国である一方で、1990年代から2000年代初期にかけた国内紛争及びそれに続く混乱の時期の影響により、現在でも社会の復興に向けた様々な課題を抱えている。

  • (3)長年の政情不安や過去の内戦等に起因する低開発を背景に、コンゴ(民)の全国平均電化率は約20%にとどまっており、サブサハラ・アフリカ地域の平均43%と比べても極めて低い(2018年、世界銀行)。電力供給の不足は、発電量の絶対的不足のみならず、変電及び送配電設備の容量不足によるものも大きく、同国の安定的な電力供給のためには、発電容量の増強に加え、既存の変電及び送配電設備の増強・改修が喫緊の課題である。

  • (4)首都キンシャサ市東部のモンアンバ地区は、市人口の13%に当たる約220万人が居住しているのみならず、経済開発地区として重要な商業拠点と位置付けられているが、同地区の基幹変電所であるフナ変電所とリミンガ変電所では変圧器負荷率が非常に高く、この結果、1日平均12時間の計画停電が実施されており、不安定な電力供給により商業拠点の経済活動や、同地区にある20以上の入院施設がある病院での医療提供、給水施設の運転等、多方面に影響を及ぼしている。2030年には同地域の人口は約250万人に増加することが見込まれており、これらの電力不足による社会インフラへの悪影響が一層深刻な課題となっている。

  • (5)かかる状況から、コンゴ(民)政府は、国家開発戦略計画(2019-2023)において「電力供給のための電源開発及び電化率の向上」を重点分野として掲げており、同国電力公社は2021年に策定した送配電インフラ整備計画において、急増する電力需要への対応のため、同地区の中圧/低圧変電所の増設及び配電網の整備を行うことにより、既設の電力供給量の制限を解消し、電力供給量を増加させる方針を策定している。

  • (6)本計画は、特に変圧器負荷率の高いフナ変電所とリミンガ変電所の改修を通じて、モンアンバ地区における変電設備を整備することにより、同地区における電力供給能力及び信頼性・安定性の向上を図り、もって経済活動や住民生活環境の改善に寄与するものである。また、我が国の対コンゴ(民)国別開発協力方針(2017年9月)において、重点分野「経済開発」の下、「経済インフラ開発」を開発課題として定めているほか、2022年8月に開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)においても、自由で開かれた国際経済システムの強化に向けた質の高いインフラ投資への支援を行う旨表明しており、本計画は右表明を具体化するものとして、実施する必要性は高い。さらに、持続可能なエネルギーサービスの供給により電力の安定化に資するものであり、SDGsゴール7(安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保)にも貢献するものである。

2-2 効率性

 コンゴ(民)政府の要請を踏まえつつ、現地調査による支援対象の絞り込みを実施し、必要かつ適切な規模とするとともに、事業費の妥当性を検討した。また、同国電力公社による配電電圧の統一に係る長期方針を踏まえ、対象変電所を変更する等、より開発効果が高くかつコスト縮減が図れる形でコンポーネントの見直しを実施した。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2029年の目標値を比べて、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 最大設備利用率が、64%から80%に増加する。
    • イ 送電端電力量が、2,555ギガワット時/年から3,153ギガワット時/年に増加する。
    • ウ 中圧契約者(事業所)の電力費用が、年間2.96百万米ドル節減される。
    • エ 温室効果ガス排出量が、年間8,228トン-CO2削減される。
  • (2)定性的効果
     キンシャサ市モンアンバ地区における電力供給の安定化及び同地区の経済活動活性化と住民の生活環境が改善される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)コンゴ(民)政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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