ODA(政府開発援助)

令和5年9月19日

評価年月日:令和5年7月19日
評価責任者:国別開発協力第三課長 氏名 西野 修一

1 案件名

1-1 供与国名

 南スーダン共和国(以下、「南スーダン」という。)

1-2 案件名

 ジュバ河川港整備計画

1-3 目的・事業内容

 本計画は、ジュバ河川港において接岸施設等の整備及び関連機材の供与を行うことにより、同港における貨物取扱能力の向上を図り、もって南スーダンの社会・経済基盤の整備に寄与するもの。
 供与限度額は、29.30億円。

1-4 環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

  • (1)本計画は、「国際協力機構(JICA)環境社会配慮ガイドライン(2022年1月制定)」におけるカテゴリBであり、環境への影響は重大でないと判断される。
  • (2)南スーダンの治安状況が急激に悪化しないこと、武装勢力等が同国の河川水運を妨害しないこと、船舶の運航に支障が出るほどに河川の堆砂が進行しないことを前提条件・外部条件とする。

2 無償資金協力の必要性

2-1 必要性

  • (1)南スーダンでは、2005年の包括合意締結後、復興に向けた国づくり、経済活動の活性化が進展し、首都中心部に位置するジュバ河川港は、首都の物流拠点として重要な役割を果たしてきた。一方で、2012年以降のスーダンとの河川貿易停止、2013年及び2016年に生じた国内の騒擾により、同港の取扱貨物量は一旦大幅に減少した。加えて、同港の港湾施設及び荷役機材の老朽化によって人力による長時間荷役を余儀なくされており、貨物の取扱能力、荷役効率・安全性が総じて低下している。その後、2017年より各派による国民対話への取組が進捗し、2018年には暫定政府の体制への合意が成立、「再活性化された衝突解決合意(R-ARCSS)」が署名されるなど、和平プロセス及び内戦と騒擾からの復興が進捗しつつある。
  • (2)南スーダンでは、道路網の大部分が未舗装、かつ雨季には冠水により道路交通が機能していない。また、北部中央に位置する広大なスッド湿原(国土の約20%)が道路開発の妨げとなっているため、ジュバから北部への物流手段として河川水運の必要性及び経済性は極めて高い。さらに、2022年4月にはスーダンとの河川貿易も再開し、中長期的には南北スーダン間の河川水運を利用した国際貨物量の取り扱いが増加することが見込まれ、南北間の円滑な物流による和平促進への寄与も期待される。こうした背景下、同国政府は「南スーダン共和国開発戦略(2021-2024)」を策定し、同戦略において河川水運の開発を引き続き優先分野としている。
  • (3)我が国は、2022年8月の第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)においてアフリカの平和と安定の定着への支援を重点分野として打ち出しており、この観点から、人・物資の移動の円滑化を通じて南スーダンの和平プロセスを推進する本件支援の意義は高い。また、我が国の対南スーダン国別開発協力方針(2021年9月)においては、重点分野として「社会・経済基盤の整備」を定め、経済発展のための基盤強化及び貿易・投資促進に向けて同国の潜在的なビジネス環境を整備することとしており、本事業は同方針に合致するものである。
  • (4)我が国が南スーダンの国づくりを支援することは、同国の平和の定着に資するのみならず、アフリカ全体の安定に大きく寄与するとともに、原油を中心とした豊富な天然資源を有する同国との二国間関係を強化することにも寄与する。また、本事業は、ジュバ河川港の整備を通じて、ジュバ市を含む同国全土の経済活性化に資するものであり、SDGsゴール9(産業と技術革新の基盤づくり)及びゴール13(気候変動への具体的対策)にも貢献するものであることから、本事業の実施を支援する必要性は高い。
  • (5)なお、2022年9月にジュバ河川港の拡充を支援する計画を中止した経緯はあるが、その後も南スーダン政府から同港に対する支援実施の要望がなされたため、新たにニーズを確認した上で、本計画を実施することにしたものである。

2-2 効率性

 支援ニーズの調査を行った結果、当初想定していた支援内容から桟橋延長の縮小、接岸斜路の削除、倉庫・事務所・野外照明の簡略化、油水分離槽・一部配水施設の削除、舗装面積の縮減等を行ったことによって、コスト縮減を図った。また、技術協力「南部スーダン内水輸送運営管理能力強化プロジェクト」(2011~2015年)を通じ、港湾管理能力の強化及び荷役機械の活用を図り、同港の効率的な運営・維持管理に貢献する。

2-3 有効性

 本計画の実施により、2021年の実績値を基準値として、事業完成3年後の2028年の目標値と比較すると、以下のような成果が期待される。

  • (1)定量的効果
    • ア 年間取扱貨物量が、12,348トンから86,000トンに増加する。
    • イ 機械化荷役による年間取扱貨物量が、0トンから45,000トンに増加する。
    • ウ 同時接岸可能な船舶数が、1隻から3隻に増加する。
  • (2)定性的効果
     接岸施設及び大型荷役機械による貨物の荷揚・荷積の効率化、接岸料・クレーン使用料等の徴収による港湾運営能力の向上、特殊労働(操船・荷役作業等)時の事故抑制による労働環境の改善、工事現場の女性労働者の労働環境改善を通じた女性の就労推進が期待される。

3 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

  • (1)南スーダン政府からの要請書
  • (2)JICAの調査報告書(JICAを通じて入手可能)
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