ODA(政府開発援助)

令和5年4月3日

評価年月日:令和5年3月20日
評価責任者:国別開発協力第二課長 時田 裕士

1 案件概要

(1)供与国名

 バングラデシュ人民共和国(以下、「バングラデシュ」という。)

(2)案件名

 マタバリ港開発計画(第二期)

(3)目的・事業内容

 本計画は、バングラデシュのチョットグラム管区コックスバザール県マタバリ地区において、コンテナ及び一般貨物等の多目的深海港の建設等を行うことにより、同国の貨物取扱容量の向上及び周辺国との物流促進を図り、もって同国の経済発展に寄与するもの。なお、今次借款は輪切り二期目として2025年12月までの資金需要に対応するもの。

主要事業内容
  • (ア)土木工事(コンテナ専用ターミナル建設、多目的ターミナル建設、泊地浚渫、アクセス道路建設等)
  • (イ)荷役機器等調達・据付
  • (ウ)港湾関連施設及び機材の整備
  • (エ)コンサルティング・サービス(詳細設計、入札補助、施工監理、環境社会配慮支援等)
供与条件
供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
1,053.62億円 1.20% 30(10)年 一般アンタイド
  • (注)金利は、一般条件(固定・基準)を適用。
    コンサルティング・サービス部分に係る金利は、0.01%を適用。

(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

環境影響評価(EIA)
 本計画は、「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月制定)(以下「JICAガイドライン」という。)に掲げる影響を及ぼしやすいセクターのうち、港湾セクターに該当するため、カテゴリAに分類される。本計画に係るEIA報告書は2018年11月(港湾)及び同年12月(道路)にバングラデシュ環境森林省環境局により承認済み。
用地取得  本計画では、港湾建設(土捨て場を除く。)及びアクセス道路建設によって、それぞれ約64ヘクタール、約188ヘクタールの用地取得及び176人、1,380人の非自発的住民移転を伴い、バングラデシュ国内手続及び住民移転計画に基づいた補償支払い等が進行中。また、多くの塩田やエビ養殖地が喪失することに伴い、生計回復支援を望む声が被影響住民から挙がっていることから、生計回復支援プログラムを実施予定。継続的に住民協議が実施され、被影響住民の要望を確認するとともに、苦情処理メカニズムも運用される。
外部要因リスク
 特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

開発ニーズ
 バングラデシュでは、過去10年以上にわたる年率平均6%強のGDP成長等に伴い、貨物の貿易額は過去10年間で年平均約8%の伸びを記録している。本計画の協力準備調査(2019年)において、同国のコンテナ取扱量は235万TEU(注)(2016年)から、1,030万TEU(2041年)に増加すると予測されている。
 同国のコンテナの98%、一般貨物の89%を扱うチョットグラム港では、旺盛な貨物需要を背景に、コンテナ取扱量が134万TEU(2010年)から259万TEU(2020年)、一般貨物取扱量は4,118万トン(2010年)から9,488万トン(2020年)に増加し、コンテナについては既に設計上の取扱容量(175万TEU)を超えている。また、同港の現在の水深は7.5メートル~9.5メートルであり、近年の世界的な船舶大型化の傾向と今後の貨物需要の増加を踏まえると、積載容量2,700TEU以上の中・大型船の受入が可能な水深を有した新たな港湾開発が急務となっている。
 (注:TEUとは20フィートの海上コンテナに換算した荷物量のこと。)
 こうした中、マタバリ港の開発は、同国の「第8次五か年計画」(2020/21~2024/25年度)及び同国の長期開発課題が定められた「ビジョン2041」の中で、経済の国際競争力を向上させ国内需要を支えるための重要事業の一つに位置付けられている。また、マタバリ港の開発は、我が国及び同国政府が掲げる「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の実現に貢献するものであり、同国政府はマタバリ港を中核とした工業団地等の開発を優先的に進めることとしている。
我が国の基本政策との関係
 バングラデシュでは、近年、高い経済成長を遂げているものの、人口の約2割が依然として貧困状態にあり、電力、運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足している。こうした開発ニーズを踏まえ、我が国は2018年2月に策定した「対バングラデシュ国別開発協力方針」において、今後の対バングラデシュODAの重点目標として、(ア)中所得国化に向けた、全国民が受益可能な経済成長の加速化(質の高い運輸・交通インフラの整備による人とモノの効率的移動の促進、発電所・送配電網整備等による電力・エネルギーの安定供給等)、(イ)社会脆弱性の克服(貧困削減、初等教育、母子保健、安全な飲料水の供給などのSDGsの達成への貢献)を掲げている。
 本計画は、同国の貨物取扱容量の向上及び周辺国との物流促進を図るものであることから、上記重点目標の(ア)に合致するとともに、SDGsゴール8(経済成長)及びゴール9(強靭なインフラ整備)にも貢献するものである。
 また、本計画は、2014年の日バングラデシュ首脳会談で合意された「日バングラデシュ包括的パートナーシップ」及び経済インフラの開発、投資環境の改善、連結性の向上を柱とする「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想の実現にも貢献するものであり、本計画を通じて、経済・社会開発を進める同国の取組を支援することは、日バングラデシュ関係の更なる強化につながる。

(2)効率性

 本計画では、国内他港との機能分担を踏まえ、各港の有機的な運用に向けた政策、計画の策定等がなされるよう、引き続き同国政府内の協議進捗やマタバリ港の後背地域開発状況をフォローする予定。また、技術協力「マタバリ港における運営・維持管理及び経営能力向上プロジェクト」を通して、実施機関であるチッタゴン港湾庁による新港運営の効率性確保等、新港の利用促進につながる港湾運営戦略の検討を支援中。さらに、本計画では多くの埋没土の発生が見込まれることから、埋没土量のモニタリング及び維持浚渫費用の予測を継続し、費用対効果を踏まえた対策を検討予定。

(3)有効性

 本計画により、バングラデシュにおける入港最大船舶サイズが2,700TEUクラスから4,700TEUクラスに引き上げられる予定。また、事業完成2年後(2029年)には、年間107隻のコンテナ船及び年間31隻の一般貨物船がマタバリ港に入港し、年間45万TEUのコンテナ貨物(現在の同国全体のコンテナ貨物取扱量の約17%に相当。)及び年間99万トンの一般貨物が同港で取り扱われる予定。
 また、アクセス道路の整備により、事業完成2年後(2029年)には、国道1号線からマタバリ港までの車での所要時間が62分から25分に短縮され、同アクセス道路を通行する車両数の年間平均は3,916台/日が見込まれている。
 これにより、チョットグラム港の港湾混雑緩和、周辺国との物流促進及びマタバリ港周辺における投資促進に寄与することが期待される。

3 事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用

 バングラデシュ政府からの要請書、JICAガイドライン、その他JICAから提出された資料。
 本計画に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び計画概要、借款契約締結後公表されるJICAのプレスリリース及び事業事前評価表を参照。
 なお、本計画に関する事後評価は、実施機関であるJICAが行う予定。

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